道場における作法

武道は礼に始まり礼に終わる、と言われますが、日々の稽古において、稽古開始時と終了時に必ず座礼をします。

必ず、です。今まで5000回以上稽古してきましたが、座礼は決して欠かしません。

また、組手では必ずお互いに礼をしてから始めます。

必ず、です。礼をせず、相手に敬意を持たずに行う組手はケンカと同レベルです。礼をすることによってお互いに高め合う準備をします。

また、道場に出入りする際も礼をします。

他にもいろいろと「作法」がありますが、道場によって異なります。

武術・武道を指導する立場になり、私が道場生に求めた作法は稽古後の掃除です。

公共施設を使わせていただく中で稽古後の掃除は義務ではありませんでしたが、私と道場生みんなで毎回掃除をするようにしてきました。日本人の感覚からすれば当たり前のことでしょう。

鹿児島に戻り常設道場で稽古するようになりましたが、そこで驚いたのが道場生のお母様の作法でした。

稽古終了後に道場床のモップ掛けを子どもたちにさせているのですが(子どもたちにとってはちょっとした遊びになっています)、ある道場生のお母様(親子で道場生)が毎回トイレ掃除をしてくださるのです。

私から頼んではいませんし、トイレ掃除までしなくてもよいのですが、稽古に参加されたその日から自発的にしてくださっています。

先日はその方の旦那さんもトイレ掃除をしてくださいました。そういうご家庭なのですね。

私は鹿児島生まれ鹿児島育ちですが、しばらく東京に住んでいました。

以前、鹿児島の子どもたちが横断歩道を渡った後、待ってくれた車に一礼するのを見て大変驚きました。東京では見ない光景です。

鹿児島は少し特殊なのかもしれませんが、徐々に薄れてきてはいるものの、旧薩摩藩の教育理念が子どもたちの教育に残っているのかもしれません。

道場で見る道場生によるトイレ掃除が鹿児島では当たり前で東京では当たり前ではないのかは分かりません。

(土地柄の違いというより、武術・武道を学ぶために道場に通う人は掃除や礼を重んじる傾向があるのかもしれない)

この作法が道場で受け継がれていくことを期待しています(自分でトイレ掃除したくないわけではありません笑)。

Tamura et al. (2023). Dietary carbohydrate and fat intakes and risk of mortality in the Japanese population: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study

糖質制限食の健康効果について侃侃諤諤の議論が始まり久しいですが、糖質制限した方が長生きするのかそれとも糖質制限しない方が長生きするのかはまだ明らかではありません。

糖尿病患者さんの治療において、血糖値を適正な値に下げ、合併症の進行を防ぎ、天寿を全うすることが大目標なので、血糖値を上げない糖質制限食の長生き効果はとても気になるところです。

過ぎたるは猶及ばざるが如し、と昔から言われるように、糖質制限もほどほどが良いのではないかというのが私の考えですが、糖質制限食と死亡の関係について一石を投じる研究が日本から発表されました。

以下にAbstractをChatGPT先生に訳してもらい私が修正したものを載せます。コメントはその下に書きます。

背景
過去のコホート研究では、食事中の炭水化物・脂質摂取量と死亡リスクとの関連について、相反する結果が見られる。

目的
炭水化物と脂質摂取量と死亡率との長期的な関連を調べた。

方法
このコホート研究では、34,893人の男性と46,440人の女性(年齢35〜69歳、平均BMIはそれぞれ23.7および22.2 kg/m2)が、2004年から2014年にかけて行われたベースラインの調査から2017年または2018年の終わりまで追跡された。炭水化物、脂質、および総エネルギー摂取量は、食事頻度調査票(FFQ)を使用して推定された。炭水化物と脂質のエネルギー摂取量に基づいて、死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が推定された。

結果
平均8.9年の追跡期間中に、2,783人(男性1,838人、女性945人)が死亡した。炭水化物によるエネルギー摂取の占める割合が50%から55%の男性と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が<40%の男性は全死亡のリスクが有意に高かった(HR:1.59、95%CI:1.19〜2.12、P-trend = 0.002)。追跡期間が5年以上の女性の中では、炭水化物摂取量が多い女性は全死亡のリスクが高かった。炭水化物によるエネルギー摂取が50%から<55%と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が≥65%の場合、HR(95%CI)は1.71(0.93〜3.13)であった(P-trend = 0.005)。脂質摂取量が高い男性はがんによる死亡のリスクが高かった。脂質によるエネルギー摂取が20%から<25%と比較すると、脂質によるエネルギー摂取が≥35%の場合、HR(95%CI)は1.79(1.11〜2.90)であり、(P-trend = 0.054および0.058)。脂質摂取量は女性において全死亡およびがん死亡のリスクと逆相関する傾向がみられた(P-trend = 0.054および0.058)。

結論
男性の低炭水化物摂取と女性の高炭水化物摂取は、死亡と関連することが示された。炭水化物摂取量が比較的高い日本の成人女性の間では、脂質摂取量が高いと死亡リスクが低い可能性がある。

著者らも研究の限界で述べているように、FFQでの食事調査はベースラインのみで追跡期間中には再評価されていません。例えば、途中で糖尿病など生活習慣病を発症したり、仕事が変わったり、家族が亡くなって食生活が変わることだってあるわけです。これは大きなlimitationでしょう。

また、FFQは妥当性の高い質問紙票とは言え、主観的データですしバイアスが入るのはどうしようもありません。人間の食事摂取を正しく評価するのは難しく、このような研究の本質的な問題ですが、AIなんかによって何とかならないでしょうか?

私が疑問に思ったのは、なぜ炭水化物と脂質だけ評価して三大栄養素のもう一つタンパク質は評価しなかったのか?という点ですね。

最近、高齢者はもっとタンパク質を摂った方が良いなどと議論されていますし、タンパク質摂取量も調べて三大栄養素バランスを見て検証するべきだと思います。

炭水化物摂取量と死亡との関係で男女差があるのは謎ですね…。

多くの被験者を比較的長い期間追跡して調べた興味深い研究だと思います。

日本の大切なデータとして紹介させていただきました。

今だけ、金だけ、自分だけ

ネットやソーシャルメディアでしばしば目にするのですが、世の中が刹那的で利己的で、拝金主義が蔓延していることを嘆く、東京大学鈴木宣弘教授のお言葉のようです。

(鈴木先生のことはよく存じませんが、日本の食糧自給率を向上させるように訴えていらっしゃるようです。この記事は鈴木先生の主義主張とは全く関係ありません)

言い得て妙だな、と思います。

この言葉は人間の発達段階に当てはめて考えると、共感力が発達していない3歳児くらいのレベルを思い起こさせます。

今が楽しくて、食べたいものだけをお腹いっぱい食べて、自分の望みだけ叶ったら、幸せ

現代社会は幼稚である、と言われているような気がします。

ティール組織の組織モデルの進化段階になぞらえば、完全に「レッド」(衝動型)です。

現代社会は実は原始的である、ということかもしれません。

3つの中で”今だけ”と”自分だけ”はある意味仕方がないことかな、とも思います。

人間は進化してきた生命体とは言え、三次元の生き物であることに変わりはないので、今という時間と自分の個体を最も大切にするのは生き残るために必要な戦略です。

しかし、”金だけ”はなんというか、個人の価値観の問題とは言え、合理性もない気がします。

そもそも、お金はそれだけでは価値を持ちません。

とはいえ、お金がなければ生活できないですし、お金が人生を豊かにしてくれる手段であることも間違いありません。私もお金を増やしたいと思いますし(なぜ増やしたいのかよく考えるとよく分からなくなるけど)、将来のことを考えてお金の心配をします。

ある意味お金に捉われています。

資本主義経済の世界に生きる上ではお金に依存するのは仕方がないことですが、これからの時代、資本主義に代わるイデオロギーというかシステムが果たして生まれるでしょうか?

それは人間社会最高のイノベーションになるかもしれません。

「時」も「お金」も「自分」も”だけ”では世の中成り立ちません。確かに今だけ、金だけ、自分だけの人がいる一方、誰かが世の中を支えています。

21世紀に入りすでに20年以上経ちましたが、人間のコミュニティは実生活とネット上に無数に存在するようになりました。

今だけ、金だけ、自分だけ、は旧世紀的思考なのかもしれません。若い人たちはきっとそんな風には考えていないでしょう(そう信じています)。彼らにとって老害になりうる私たち以上の世代がお金や自分の利益だけに囚われてしまっているのではないか。

時代は動いている気がしています。

マインドフルネスの効果

現代社会を生き抜くために、マインドフルネスが有効であると言われて久しいですが、マインドフルネスが心だけでなく体に良い効果がないかはまじめに研究されています。

まず、ChatGPT先生にマインドフルネスの定義について聞いてみました。

マインドフルネス(mindfulness)は、仏教の教えや瞑想の実践に基づいているが、現代の心理学やストレス管理の分野でも注目されている概念です。マインドフルネスとは、意識的な注意のあり方や心の状態を表す言葉であり、現在の瞬間に対して開かれた、受け入れの姿勢を持つことを指します。

具体的には、マインドフルネスとは以下のような要素を含んでいます:

現在の瞬間への意識:マインドフルネスでは、現在の瞬間に集中し、過去や未来の思考にとらわれることなく、現在の経験に意識を向けます

非判断的な受容:マインドフルネスでは、心の中に湧き上がる感情や思考を受け入れる姿勢を持ちます。過去の経験や将来の期待に基づいて判断するのではなく、現在の状況を受け入れることが重要です。

非反応性:マインドフルネスでは、感情や思考に対して執着や反応を抑えることを目指します。思考が浮かび上がっても、それに固執せず、客観的な視点から観察することが求められます。

集中力と自己観察:マインドフルネスの実践では、瞑想や特定の活動に集中することによって、自己観察を深めます。自分の感覚や感情、思考を客観的に観察し、自己の内面の状態を理解することを目指します。

マインドフルネスは、ストレス軽減や感情の調整、集中力の向上、自己認識の促進など、さまざまな効果が期待されています。瞑想や特定の運動、日常生活の中での意識的な行動などを通じて、マインドフルネスを実践することができます。

ものすごく簡単に言うと、マインドフルネスとは現在の自分に集中していろいろな物事に囚われずありのままの自分を受け入れること、です。

瞑想と似通った点もあり、ストレスや不安障害・うつ病に対する効果が過去の研究で報告されています。

実は糖尿病にも良いようで、HbA1cを下げる効果が複数のシステマティックレビューで報告されています。

生物学的な作用として、インターロイキンなどの炎症を起こすサイトカインを減らす、自律神経バランスを整えて血糖コントロールを安定させる、ストレスに対する下垂体-副腎系の反応を調節する、などが考えられていて、今後のさらなる研究も期待されています。

メインは心理療法・認知行動療法としての作用ですので、マインドフルネスが病気を治すわけではありません

しかし、糖尿病などライフスタイルに関連した病気は自己管理が必要とされるので、マインドフルネスは治療に役立つのです。

瞑想でご紹介した腹式呼吸と合わせて、初めは自己流でもよいので、一日のうち数分間、現在の自分に集中して物事に囚われない時間を作ってみましょう。

私にとってそれは稽古の時間ですが、ある人にとっては料理の時間だったり読書の時間だったりするわけです。

本当のマインドフルネスは特別なセッティング(例えば、大人数でヨガをやるような広いスペースや自然豊かな森の中)を必要としません。

どんな環境であってもちょっとした時間でマインドフルネスは実践できます。ぜひ。

学生メール誤送信事件

数十~数百名規模のメーリングリストに返信してしまい、登録者全員に個人的なメールを誤送信してしまった経験ありますか?

幸い、私はありませんが、つい先日、UoMの学生(中国人)のメール誤送信事件がありました。

それに対する他の学生のリアクションが面白くもあり残念でもありました。

彼女のメールはこうです。

「ご担当者様へ お元気のことと思います。私は4月に最後の学位論文を提出したのですが、いつ成績が分かりますか?たぶん電子版でいただけるのではないかと存じます。現在就職活動中で成績の提出が必要です。よろしくお願い致します。」

至って普通のメールです。きちんと担当者に送られていれば。

どういうわけか、彼女はこのメールをFaculty of Biology, Medicine and Health, University of Manchesterの全員が登録しているメーリングリストに送信したのです。

(誰に送ればいいかわからなかったのでとりあえず全員にという発想だったのか?)

さらに、メールを送信した時間が問題でした。

JSTで13:20となっているので、英国では午前4:20頃です。彼女は中国に住んでいて(オンライン大学院の学生かもしれません)中国時間で何気なくメールを送ったのかもしれませんが、英国で学ぶ学生たちはまだ寝ている時間です。しかも日曜日で試験・レポート提出期間の真っただ中でした。

どうやら、スマホで大学からのメールにアラーム設定をしていた学生が大勢いたようで、彼女に次々と返信が届きました。

「朝5時にこんなメールを送るなんてどうかしている」

「あなたは他の人の生活なんてどうでもいいの?」

「ここは学生のメーリングリストだから聞く場所を間違っていると思うよ」と優しく諭すものもありましたが。

事態を悪化させたのが、他の中国人たちのリアクションです。

(たぶん)同じ中国在住のオンライン大学院の学生と思われる人たちがアドバイスやら注意やら中国語で次々と返信しまくったのです。

これでアラーム設定をしていた英国在住あるいは欧州の学生たちが(たぶん)激怒し、「あなたたちのせいで完全に目が覚めてしまった」と非難のメールを送りました。

本当はメール誤送信した学生がすぐに謝るべきで、そうすれば事態はここまで悪化しなかったと思うのですが、その後彼女は謝るどころかこの事態から姿を消してしまったのです。

怒る欧州の学生たちに対して、中国の学生が「まあまあ、funnyなことなんだからそう怒らずに冷静になろうよ」と全く空気の読めないメールを送ってしまい、(たぶん)欧州の学生たちは完全にキレてしまい、何十名もの学生たちが、

Please remove me from this mailing list!

と送信。

英国・欧州の学生たちは日曜日の朝から大変なことになったようです。

私は参戦せず横目で眺めているだけでしたが、中国 vs 英国・欧州の学生闘争を垣間見ました。

国によって文化は異なり、グローバルな正しさってよく分かりませんが、とりあえず一言謝ればよかったのに、と。

大学院は自分一人で学ぶ場ではありません。仲良く学ぶ上で、礼儀正しさを身につけることも大切ですね。

Pan et al. (2023). The Comparative Effectiveness and Safety of Insomnia Drugs: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of 153 Randomized Trials

夜ぐっすり眠れない人は多いですが、簡単に睡眠薬を飲むことはお勧めできません。

特に、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性が高く、翌日の眠気やふらつき、筋力低下や転倒、さらには認知機能の低下といった多くの副作用を起こすリスクがあるためできるだけ使用しないようにしています。

睡眠薬に関する153ものRCTをシステマティックレビュー・メタ解析した論文が発表されました。

プラセボと比べて睡眠時間を有意に改善したのは、非ベンゾジアゼピン系、抗うつ薬、オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ🄬/ベルソムラ🄬)でした。

今回はAbstractではなく、Discussionの冒頭にある結論部分を日本語訳します。※🄬は日本における先発医薬品の販売名です。

46,412人の参加者を登録した153の臨床試験を解析し、エビデンスの確実性が中くらいから高いものを報告した。

非ベンゾジアゼピン系薬が客観的な眠るまでの所要時間(=SOL)(エスゾピクロン(ルネスタ🄬)で-16.64分、ゾピクロン(アモバン🄬)で-16.26分)、主観的なSOL(ゾピクロンで-40.87分)、客観的な中途覚醒(=WASO)(ゾルピデム(マイスリー🄬)で-15.40分)、主観的なWASO(プロポフォール(ディプリバン🄬)で-50.35分)の短縮において最も効果的な薬物の一つであることが示された。

また、非ベンゾジアゼピン系薬は客観的な総睡眠時間(=TST)の延長(ゾルピデムで28.42分)、主観的なTSTの延長(プロポフォールで102.42分)、および睡眠の質の改善(エスゾピクロン)においても最も効果的であることが示された。

エビデンスの確実性はやや劣るが、抗うつ薬も客観的なTSTの増加(ドキセピン(日本では未発売)で23.97分、ミルタザピン(リフレックス🄬)で47.20分)、主観的なTSTの増加(パロキセチン(パキシル🄬)で170分)、および睡眠の質の改善(ミルタザピンとトリミプラミン(スルモンチール🄬))において有効で、主観的なWASOの短縮(ミルタザピンで-17.70分)とSOLの短縮(パロキセチンで-41.00分)も認められた。

一方、オレキシン受容体拮抗薬は客観的なWASOの短縮(スボレキサント(ベルソムラ🄬)で-25.17分)、客観的なTSTの延長(レムボレキサント(デエビゴ🄬)で58.15分)、および主観的なTSTの延長(スボレキサントで22.92分)と関連していました。

メラトニン受容体作動薬は主観的および客観的なSOLの短縮(ラメルテオン(ロゼレム🄬)で-12.88分)と関連していました。

ベンゾジアゼピン系薬の使用は主観的なSOLを短縮させなかった(4.46分)。

(略語が多く読みにくくてすみません)

非ベンゾジアゼピン系よりベンゾジアゼピン系の方が効果は強い印象があったのですが、このメタ解析の結果を見るとそうでもないようです。

そうすると、ベンゾジアゼピン系は患者さんにとって不利益が多く大して有効でもない睡眠薬という位置づけになります。

やはり、使うべきではない薬の一つですね。

Riddell et al. (2023). Is There an Optimal Time of Day for Exercise? A Commentary on When to Exercise for People Living With Type 1 or Type 2 Diabetes

今回は研究論文ではありませんが、糖尿病患者さんの運動のタイミングについてまとめられたものがあったので紹介したいと思います。

私の注目する「時間運動生理学」と深く関連する分野です。

1. 朝か夜か

““Chronotype” is a term used to describe individuals’ preference for being a “morning person” or an “evening person” with respect to sleep patterns, physical activity patterns, work preferences, eating patterns, and energy levels. In general, individuals who are early chronotypes tend to do more physical activity in the morning and have greater overall daily energy expenditure than those who are late chronotypes. Early chronotypes also have less risk for cardiometabolic disease over their lifetime. In type 2 diabetes, having a late chronotype is associated with greater caloric intake at dinner, later bedtimes, later wakeup times, and higher A1C levels.”

「クロノタイプ」は、睡眠や身体活動、働き方、食事時間などが「朝型」か「夜型」かといった個人の特性を表していますが、概して「朝型」の人は「夜型」の人より活発でエネルギー消費が多いようです。

また、2型糖尿病患者さんにおいて、「夜型」の人は夜食べ過ぎて寝るのが遅くなる傾向があり、血糖コントロールも悪いことが分かっています。

1型糖尿病患者さんにおいても、夜運動をすると寝ている間に低血糖を起こすリスクが上がるため、どちらかというと午前中の運動が良いのでは?と書かれていました。

2. 食前か食後か?

“However, a recent systemic review suggests that postmeal mild to moderate activity may be the more favorable approach for limiting postprandial glucose excursions, at least in individuals with prediabetes or type 2 diabetes. Postmeal exercise has an acute glucose-lowering effect, as muscle contractions enhance skeletal muscle glucose uptake. Because of the acute nature of this mechanism, completing activity after each meal is likely more beneficial than only completing activity after one meal in people with prediabetes or type 2 diabetes.”

最近のシステマティックレビューによると、2型糖尿病患者さんは食後に、さらに食事を摂ったら毎回運動することで筋肉による糖取り込みが増え血糖値が下がることが分かっています。

グルコーススパイク―食後高血糖が隠れている前糖尿病段階の人ほど食後の運動効果が高いのかもしれません。

食事ごとにインスリン注射が必須の1型糖尿病患者さんの場合、高強度インターバルトレーニング(HIIT)や筋力トレーニング以外の有酸素運動であれば、食前に運動した方が運動後の低血糖リスクが減り良いのではないか?ということでした。

以下Summaryの日本語訳です。

日中の運動時間と糖尿病患者の健康状態や血糖値との関係に影響を与える潜在的なファクターの数の多さを考えると、現在の研究結果が常に一貫していないことは驚くことではありません。しかし、現在のエビデンスにはいくつか共通点があり、将来、研究の焦点となるべきものが示されています。

まず、運動は一般的に、いつ行われるかやその強度に関係なく、糖尿病患者の全体的な健康状態と血糖値を改善します。したがって、実践的な観点から見れば、糖尿病患者にとって最適な結論は、自分ができる運動ルーティンをつくることです。いつでも運動するのが最適であり、自分の生活リズムを考慮して、最適なの運動プログラムを作成することが重要です。

一部のエビデンスによれば、1型糖尿病の患者は、午前中に軽度から中強度のトレーニングを継続することで、健康になり低血糖症のリスクが下がる可能性があります。一方、午後に運動する1型糖尿病の患者は、有酸素運動(持久力トレーニング)よりもHIITや筋力トレーニングの方が血糖変動の管理により有益であるかもしれません。

もう一つの共通点は、食前の運動がインスリン感受性を向上させる一方、食後の運動が糖尿病予備群や2型糖尿病患者の血糖値を最も低下させるということです。食後の運動”exercise snack”または”burst”(つまり、各食後の短時間の運動や階段の上り下り)が、一日を通じて血糖値を管理するために効果的な方法となる可能性があります。

1型糖尿病の患者において、血糖値に影響を与えるファクターはやや複雑です。食後の有酸素運動は血糖値低下に有効ですが、低血糖のリスクが高まることを考慮する必要があります。したがって、有酸素運動の時間と強度は1型糖尿病の状態に合わせて調整されるべきです。低血糖発作が懸念される場合、食前の有酸素運動やHIIT、または食前・食後の筋力トレーニングが1型糖尿病の患者にとって有益かもしれません。運動のタイミングに関わらず、1型糖尿病の患者にはCGM(持続的な血糖モニタリング)と血糖トレンドに基づいた炭水化物の摂取が推奨されます。

糖尿病など病気をお持ちでない人の最適な運動のタイミングは分かりませんが、血糖値に関して言えば、一日の早い時間帯(午前中、遅くても夕食前まで)に運動をする方が良さそうです。

そして、夕食は少なめにすることです。

英国における教職員のストライキ

4月末、UoMから次のようなメールが送られてきました。

Dear FBMH students,

You are probably aware that the University and College Union (UCU) have now announced their Action Short of a Strike (ASOS) will include a marking and assessment boycott (MAB), which began on 20 April 2023.

To understand what this means, UCU defines a marking and assessment boycott as stopping
“all marking and assessment processes that contribute to summative assessment decisions for students/learners, whether final (such as graduation/completion) or interim (such as progression decisions).”

While we expect that the majority of staff will continue to work as usual, we also acknowledge that some will be exercising their legal right to take industrial action. We anticipate that most of our students will experience little, if any, disruption, and our focus is on minimising the disruption to your studies where it does occur.

As a result of the UCU announcement you may be unsure of what this means for you, or be concerned about how it may affect your progression or graduation. We want to assure you that we fully understand these concerns and are actively working to minimise the disruption you may experience. We are prioritising activities to support final year students and to ensure students can progress to their next year of study as expected. We are also working closely with the professional bodies to ensure that your degrees retain full accreditation.

Please continue to engage fully with your studies and all assessment opportunities, including returning and submitting all coursework, practical work and preparation for exams unless you hear otherwise from your Programme team. Information and support for students preparing for exams and assessments is available online. There is no need to submit a request for consideration of mitigation circumstances specifically in relation to strike action. We have mitigation plans in place to ensure your assessments will be marked.

Our priority is to ensure you are treated fairly, that you are not disadvantaged and that we retain the academic integrity of our programmes and awards. Programmes will provide examination boards with information of any disruption and this will be taken into account when reviewing marks.

If your programme is impacted by the action, we will be in contact to keep you informed as soon as possible, as the marking and assessment boycott develops.

Best wishes,

幸い私が受けているコースの教員はストライキに参加せずきちんと採点をしてくれましたが、日本の大学院ではありえないこの事態、どうやら英国では常習化しているようです。

大学職員の給与、労働条件、年金削減に対するストだったようですが、Semester 1とSemester 2の間だったので、Examやassignmentの評価が宙ぶらりんになってしまった学生がいたようです。

どうやら、COVID-19パンデミック以降労働争議が増え続けており、インフレにも関わらず賃金が上がらず、生活が苦しいことが原因のようです。大学職員以外に看護師、救急隊員、鉄道、郵便などいわゆるエッセンシャルワーカーの人々も含まれます。

興味深いのは国民の約60%が労働者のストを支持している点で、労使関係について日本とはだいぶ姿勢が違うように思います。

労働者の権利は守られなければなりませんが、ストにより不利益を受ける人々がいるのは間違いないので、どこで矛を収めるか妥結点を考えていて欲しいものです。

それから、大学のexamやassignmentの評価はスト中もきちんと行うなど、権利を主張するだけでなく自分の果たすべき義務は全うして欲しいものです。

今回はパンデミックが引き金となりましたが、経済状況が悪くなり社会に余裕がなくなると人々の心がすさみ、世の中が嫌な雰囲気に包まれます。

これから私たちが世の中を再生していかなければならないわけですが、労働者たちがストを起こさないで済むような良き世にしたいものです。

Boehme et al. (2023). The gut microbiota is an emerging target for improving brain health during ageing

腸内細菌叢のバランスは人間の身体に大きな影響を与えます。

糖尿病や肥満症などエネルギー代謝に関わる病気、免疫力、うつ病や不安神経症など精神の働き、さらには認知機能など、身体全体と深いかかわりを持っていることが分かってきました。

この総説は脳の老化と腸内細菌叢の関係についてまとめたものです。

腸内細菌叢はこの世に生まれてからダイナミックに変化し、免疫系の発達、離乳食の開始、青年期に生活習慣が確立することで、徐々に安定していきます。ここでも生活習慣が重要な役割を演じます。

老化は、腸内細菌叢の中心となる菌種の減少、個々の人間独自の腸内細菌の増加、多様性の変化、腸内細菌叢の機能の変化を起こしますが、健全な腸内細菌叢を保つことが脳の健康にとっても重要です。

以下、Abstractの日本語訳です。

腸内細菌叢は、加齢に伴う脳機能への影響や行動制御を含め、生涯を通じて宿主の健康と恒常性の維持に重要な役割を担っています。

神経変性疾患の発症など、年齢が同じくらいであるにもかかわらず、老化の速度に差があることが示されており、老化における健康状態の決定において環境因子が重要な役割を果たす可能性が示唆されています。

近年、腸内細菌叢が脳の老化症状を改善し、腸内細菌叢をターゲットに健康的な認知機能を促進する治療の可能性が示されてきています。

本総説では、腸内細菌叢が持つ加齢に伴う神経変性疾患(アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、多発性硬化症)への影響を含め、腸内細菌叢と脳の老化との関係に関する現在の知見をまとめます。さらに、腸内細菌叢を介した治療戦略について評価します。

Abstractを読んだだけでは何を言いたいのかよく分かりませんが…。

  1. 腸内細菌叢が”健康的”だと認知機能が改善し、脳の炎症が下がり、ミクログリア(脳の免疫細胞)の働きが良くなる。
  2. 人間には脳腸相関が存在し、腸内細菌叢が脳機能に影響を与える。
  3. “健康的な”腸内細菌叢を保つためには良きライフスタイル:運動、プロバイオティクス/プレバイオティクス、地中海食、絶食などを取り入れることが必要である。

こんな感じで覚えておいていただければよいかと思います。

Ma et al. (2023). Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes: prospective cohort study.

砂糖は皆さん大好きですが、摂りすぎると毒になります。

この論文は、砂糖入り飲料が2型糖尿病患者さんの死亡率上昇に関連するというコホート研究の結果を報告したものです。

砂糖入り飲料は糖尿病や肥満症以外にがんのリスクとも関連していますので、くれぐれも飲みすぎないようにしましょう。

砂糖が体に良くないことは皆さん分かっているのですが、なかなか制限は難しいですね。人工甘味料も無害ではありませんから、砂糖の摂取を減らすためには”甘いもの”が少ない/多くない環境を作るしかなさそうです。

一方、コーヒーや緑茶など苦いものは概して体に良いようです。

以下、Abstractの日本語訳です。

目的:成人の2型糖尿病患者における死亡率および心血管疾患(CVD)の転帰に関連する飲み物の摂取量を調査すること。

研究デザイン:前向きコホート研究。

セッティング:米国の医療従事者。

被験者:ベースライン時およびフォローアップ時に2型糖尿病と診断された男女15,486名(Nurses’ Health Study:1980-2018年、およびHealth Professionals Follow-Up Study:1986-2018年). 飲み物の消費量は食品頻度質問票を用いて評価し、2~4年ごとに更新した。

主要評価項目: 主要評価項目は全死因死亡率。副次的評価項目はCVD発症率と死亡率。

結果:平均18.5年の追跡期間中に、3,447人(22.3%)のCVD発症者と7,638人(49.3%)の死亡が記録された。多変量調整後、飲み物の摂取量が最も少ないカテゴリーと最も多いカテゴリーを比較すると、全死因死亡のハザード比は、砂糖入り飲料で1.20(95%信頼区間 1.04-1.37)、0.96(0.86-1.07)、人工甘味料入り飲料(ASB)0.98(0.90-1.06)、コーヒー 0.74(0.63-0.86)、お茶 0.79(0.71-0.89)、普通の水 0.77(0.70-0.85 )、低脂肪乳 0.88(0.80-0.96 )、完全脂肪乳 1.20(0.99-1.44 )であった。各飲み物とCVD発症率および死亡率の間には、同様の関連が認められた。特に、砂糖入り飲料の摂取は、CVDの発症リスク(ハザード比1.25, 1.03-1.51)およびCVD死亡率(1.29, 1.02-1.63)と関連していたが、コーヒーと低脂肪乳の摂取とCVD発症の間には有意な逆相関が見られた(コーヒーと低脂肪乳の摂取は心血管疾患のリスク低下と関連する)。さらに、糖尿病診断後にコーヒーの摂取量を変えなかった人と比較して、コーヒーの摂取量を増やした人では、全死因死亡率の低下が観察された。また、紅茶や低脂肪乳についても、全死因死亡率の低下が観察された。砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置き換えることは、全死因死亡率およびCVD死亡率の低下と有意に関連し、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、フルーツジュース、全脂肪乳をコーヒー、紅茶、または普通の水に置き換えることは、全死因死亡率の低下と関連していた。

結論:各飲み物は、2型糖尿病患者における全死因死亡率およびCVDの転帰と様々な関連を示した。砂糖入り飲料の摂取量が多いほど、全死因死亡率およびCVD発症率・死亡率が高くなるのに対し、コーヒー、紅茶、水、低脂肪乳の摂取量は全死因死亡率と逆相関していた。これらの知見は、2型糖尿病患者におけるCVDと早期死亡のリスクを管理する上で、健康的な飲み物を選ぶことが重要であることを示唆している。

(えっと…普通の水、すごくないですか?)

観察研究なので因果関係を証明するものではありません。

ですが、砂糖入り飲料を適量のコーヒーやお茶に変えれば健康に長生きできるかもしれません。