Ma et al. (2023). Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes: prospective cohort study.

砂糖は皆さん大好きですが、摂りすぎると毒になります。

この論文は、砂糖入り飲料が2型糖尿病患者さんの死亡率上昇に関連するというコホート研究の結果を報告したものです。

砂糖入り飲料は糖尿病や肥満症以外にがんのリスクとも関連していますので、くれぐれも飲みすぎないようにしましょう。

砂糖が体に良くないことは皆さん分かっているのですが、なかなか制限は難しいですね。人工甘味料も無害ではありませんから、砂糖の摂取を減らすためには”甘いもの”が少ない/多くない環境を作るしかなさそうです。

一方、コーヒーや緑茶など苦いものは概して体に良いようです。

以下、Abstractの日本語訳です。

目的:成人の2型糖尿病患者における死亡率および心血管疾患(CVD)の転帰に関連する飲み物の摂取量を調査すること。

研究デザイン:前向きコホート研究。

セッティング:米国の医療従事者。

被験者:ベースライン時およびフォローアップ時に2型糖尿病と診断された男女15,486名(Nurses’ Health Study:1980-2018年、およびHealth Professionals Follow-Up Study:1986-2018年). 飲み物の消費量は食品頻度質問票を用いて評価し、2~4年ごとに更新した。

主要評価項目: 主要評価項目は全死因死亡率。副次的評価項目はCVD発症率と死亡率。

結果:平均18.5年の追跡期間中に、3,447人(22.3%)のCVD発症者と7,638人(49.3%)の死亡が記録された。多変量調整後、飲み物の摂取量が最も少ないカテゴリーと最も多いカテゴリーを比較すると、全死因死亡のハザード比は、砂糖入り飲料で1.20(95%信頼区間 1.04-1.37)、0.96(0.86-1.07)、人工甘味料入り飲料(ASB)0.98(0.90-1.06)、コーヒー 0.74(0.63-0.86)、お茶 0.79(0.71-0.89)、普通の水 0.77(0.70-0.85 )、低脂肪乳 0.88(0.80-0.96 )、完全脂肪乳 1.20(0.99-1.44 )であった。各飲み物とCVD発症率および死亡率の間には、同様の関連が認められた。特に、砂糖入り飲料の摂取は、CVDの発症リスク(ハザード比1.25, 1.03-1.51)およびCVD死亡率(1.29, 1.02-1.63)と関連していたが、コーヒーと低脂肪乳の摂取とCVD発症の間には有意な逆相関が見られた(コーヒーと低脂肪乳の摂取は心血管疾患のリスク低下と関連する)。さらに、糖尿病診断後にコーヒーの摂取量を変えなかった人と比較して、コーヒーの摂取量を増やした人では、全死因死亡率の低下が観察された。また、紅茶や低脂肪乳についても、全死因死亡率の低下が観察された。砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置き換えることは、全死因死亡率およびCVD死亡率の低下と有意に関連し、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、フルーツジュース、全脂肪乳をコーヒー、紅茶、または普通の水に置き換えることは、全死因死亡率の低下と関連していた。

結論:各飲み物は、2型糖尿病患者における全死因死亡率およびCVDの転帰と様々な関連を示した。砂糖入り飲料の摂取量が多いほど、全死因死亡率およびCVD発症率・死亡率が高くなるのに対し、コーヒー、紅茶、水、低脂肪乳の摂取量は全死因死亡率と逆相関していた。これらの知見は、2型糖尿病患者におけるCVDと早期死亡のリスクを管理する上で、健康的な飲み物を選ぶことが重要であることを示唆している。

(えっと…普通の水、すごくないですか?)

観察研究なので因果関係を証明するものではありません。

ですが、砂糖入り飲料を適量のコーヒーやお茶に変えれば健康に長生きできるかもしれません。

Montes-Ibarra et al. (2023). Prevalence and clinical implications of abnormal body composition phenotypes in patients with COVID-19: a systematic review

体組成(筋肉・脂肪・水分量など)の異常とCOVID-19による死亡や入院との関連を調べた興味深い研究(システマティックレビュー)です。

フェーズアングルとは細胞膜の生理的な安定性を表す指標で、健康な人やアスリートでは高く、高齢者やがん患者などでは低くなります。

筋肉内の脂肪量が高く、フェーズアングルが低いほどCOVID-19による死亡が多いという結果でした。

背景:体組成の異常が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトカムに及ぼす影響はまだ明らかにされていない。

目的:COVID-19患者における体組成の異常と臨床アウトカム(死亡・入院)との関連についてのエビデンスをまとめること。

方法:2022年9月26日までに発表された体組成測定に関する観察研究を対象とした。骨格筋量、筋肉の密度(放射線検査またはエコー強度により測定)、脂肪組織(AT)、およびフェーズアングル(PhA)を測定したCOVID-19患者を対象に系統的な検索を実施した。研究の質はニューカッスル・オタワ尺度を用いて評価された。メタ分析を行わずに、体組成の異常の有無と臨床アウトカムとの関連をまとめた。

結果:12人から1,138人の被験者を含む62の研究(69.4%がバイアスリスクが低い研究)最大490,301人の結果を分析した。CT検査の結果を解析したところ、筋肉量低下の割合は約22-90%、筋肉の放射線密度の低下の割合は12-85%、内臓脂肪高値の割合は16-70%であった。生体電気インピーダンス分析(BIA)を用いた脂肪量高値の割合は51%、PhA低下の割合は22-88%であった。死亡率は、PhAと筋肉内脂肪、筋肉エコー強度、およびBIAによる脂肪量と正の相関があった。ICUへの入院は、内臓脂肪および総脂肪量と正の関連があった。病気の重症度と入院については、筋肉内脂肪と正の関連があった。他の体組成測定と入院の間には一貫性のある関連は見られなかった。

結論:COVID-19患者において体組成の異常が認められた。特定の体組成の異常と臨床的なアウトカムの間には相反する関係が見られたが、筋肉エコー強度(筋肉脂肪変性を反映する)の増加とPhAの低下は一貫して、死亡リスクと関連していた。同様に、高い筋肉内脂肪と内臓脂肪はそれぞれ死亡率とICU入院と関連していた。

Thanarajah et al. (2023). Habitual daily intake of a sweet and fatty snack modulates reward processing in humans

健康な人49名を対象とした無作為化比較試験です。

高糖質・高脂肪食を食べると、もっと高糖質・高脂肪食を食べたくなる一方、低糖質・低脂肪食を食べた人と比べて体重は変わらなかったという結果。

要旨:脂肪と糖分が多い西洋式の食生活は、過剰なカロリー摂取や体重増加を促進するが、その基本的なメカニズムは不明である。肥満と脳ドーパミン機能の変化の関連については多くの報告があるが、これらの変化が(1) 肥満にもともと存在し体重増加への感受性を高めるのか、(2) 肥満の副次的な結果であるのか、または、(3) 西洋式の食生活を続けることで直接引き起こされるのか、はっきり分かっていない。

このメカニズムを調べるため、正常体重の健康な被験者を対象に、通常の食生活に加えて、高糖質・高脂肪のスナックか低糖質・低脂肪のスナックを8週間食べてもらい、体重や低糖質・低脂肪あるいは高糖質・高脂肪の飲み物に対する欲求がどのように変化するか無作為化比較試験(NCT05574660)を実施した。

高脂肪・高糖質の食事は、低脂肪食品への欲求を減らし、食べ物の学習に関連する脳の反応を増加させた。これらの変化は体重や代謝パラメーターの変化とは独立していたため、高糖質・高脂肪の食事を繰り返し摂ることが食欲増進や体重増加のリスクを高める脳の反応に直接影響を与えることを示している。

ファストフードやソフトドリンクを摂るとまた摂りたくなるということです。

低糖質・低脂肪食を食べると高糖質・高脂肪食に対する食欲が減るわけではなさそうなので、健康に良い低糖質・低脂肪食を推奨するというよりも、いかに高糖質・高脂肪食を繰り返し食べないようにするかが重要のようです。

仮にすでに肥満の人や糖尿病患者さんが高糖質・高脂肪食を食べたら、どんどん太って病状が悪化しまうでしょう。

健康な人は代謝の働きが良いのですぐに太ることはなさそうですが、ファストフードやソフトドリンクはごくたまに、にした方が良さそうですね(きっとその方が美味しく感じます)。

Mekić et al. (2023). Younger facial looks are associate with a lower likelihood of several age-related morbidities in the middle-aged to elderly

顔の若さと加齢に関係する慢性疾患との関連を調べた面白い研究です。

オランダのコホート研究の被験者50-80代の男女2679名の横断分析で、顔写真から推測される年齢と実際の年齢の差と病気のリスクの関連性を調べました。

ちなみに、顔写真から年齢を推測したのは人間でAIではありません。AIにやってもらったらどんな結果になったか知りたいところです。

実際の年齢よりも5歳若く見えることは、骨粗鬆症(オッズ比0.76、95%信頼区間(CI)0.62-0.93)、慢性閉塞性肺疾患(オッズ比 0.85、95%CI 0.77-0.95)、白内障(オッズ比 0.84、95%CI 0.73-0.97)の発症リスク低下と関連しており、老人性難聴や認知機能障害も少なかったようです。

見た目が健康を決めるわけではありませんが、健康状態は顔の見た目や肌・髪の毛の状態に現れるのでしょう。人間は他人の顔を見て”健康的”=”若い”と認識するようにできているのかもしれません。

表情の問題もあるでしょう。

生き生きとした生活ができている人は健康状態が良く、顔の表情も明るくなり、若く見るのかもしれません。

Riddell et al. (2023). Examining the Acute Glycemic Effects of Different Types of Structured Exercise Sessions in Type 1 Diabetes in a Real-World Setting: The Type 1 Diabetes and Exercise Initiative (T1DEXI)

1型糖尿病患者さんの血糖コントロールにおける有酸素運動、インターバルトレーニング、筋力トレーニングの効果を調べたRCTです。

同様の研究と比べてn = 497とかなり被験者数の大きな研究です。

以下にAbstractを日本語訳します。

目的
1型糖尿病患者にとって、運動中および運動後の血糖コントロールは、依然として大きな課題である。運動に対する血糖応答は運動の種類(有酸素運動、インターバルトレーニング、筋力トレーニング)によって異なる可能性があり、運動の種類が運動後の血糖コントロールに及ぼす影響については依然として不明である。

研究デザインおよび方法
Type 1 Diabetes Exercise Initiative(T1DEXI)試験は、家での運動に関する実地調査である。被験者は、4週間にわたり6回の有酸素運動、インターバルトレーニング、筋力トレーニングのセッションを行った。運動量、食事量、インスリン投与量、インスリンポンプのデータ、心拍数、連続グルコースモニタリングのデータをスマートフォンアプリを使用して報告した。

結果
有酸素運動(n = 162)、インターバルトレーニング(n = 165)、または筋力トレーニング(n = 170)グループに割り付けられた1型糖尿病患者(平均年齢 37±14歳、平均HbA1c 6.6±0.8%)計497名の分析が行われた。運動中の血糖値の変化は,有酸素,インターバル,筋トレでそれぞれ-18±39,-14±32,-9±36 mg/dL(P<0.001 )で、インスリン治療の方法(ポンプや頻回注射)に関わらず同様であった。血糖値が70~180 mg/dLの範囲にある時間は、運動しない日と比較して、運動後の24時間において高かった(平均 76±20% vs. 70±23%,P<0.001)。

結論
1型糖尿病患者は、インスリン投与方法に関わらず、有酸素運動で最も血糖値が低下し、次いでインターバルトレーニング、筋力トレーニングの順に有効であった。1型糖尿病のコントロールが良好な患者においても、運動を行った日は血糖値が至適範囲内にある時間が有意に改善されたが、血糖値が範囲外となる時間はわずかに増加するかもしれない。

Feng et al. (2023). Associations of timing of physical activity with all-cause and cause-specific mortality in a prospective cohort study.

運動に関する興味深い研究が発表されました。

糖尿病の患者さんから、「運動はいつやれば一番効果的ですか?」としばしば質問されますが、はっきりとした回答はできていませんでした。

今後、この研究のような“時間運動生理学”(私の造語)の研究が進めば、患者さんの様々な特性(年齢・性別・体格・治療状況など)を加味したうえで、その人に最適な運動の時間をアドバイスできるかもしれません。

最近、健康を向上させるため、日常行動のタイミングの役割についての関心が高まっていますが、健康上の利益を最大化するための適切な運動のタイミングについてはあまり分かっていません。

筆者らは、UKバイオバンク参加者92,139人のデータ(活動量を測定する加速度計のデータ、全死亡率および特定の疾患による死亡率)を用いてコホート研究を行い、中央値7年にわたる追跡期間(638,825人年)において運動と健康上のアウトカムとの関係について調べました。

中程度から高強度の運動(MVPA=健康に良い効果があるとされる強度の運動)は、どの時間帯においても、全死亡、心血管疾患、がんによる死亡のリスクが低いことが示されました。さらに、朝だけ運動を行うグループ(5:00-11:00に毎日のMVPAの50%以上を行う)と比較して、昼から夕方に運動を行うグループ(11:00-17:00)と午前と午後両方に運動を行うグループは、全死亡と心血管疾患死亡のリスクが低くなりましたが、夕方から夜に運動を行うグループ(17:00-24:00)においてはそのような良い効果が見られませんでした。

この関係は、高齢者、男性、運動不足の参加者、または既存の心血管疾患のある参加者においてより顕著でした。本研究の結果は、運動を行うタイミングが公衆衛生上有益な効果をもたらす可能性を示しています。

主に朝に運動をするグループと比較した結果のようですが、端的にまとめると運動を行うタイミングは「昼~夕>朝>夜」の順に健康効果があるということでしょうか。

一つの観察研究に過ぎませんが、参考になるデータだと思います。

日中は仕事をしていて運動をできない患者さんも多いですが、仕事中に体を動かす習慣をつけること、そのような環境を企業・会社が提供することを期待しています。

みんなが健康になるためには社会の変化が不可欠です。

Pilla et al. (2023). A National Physician Survey of Deintensifying Diabetes Medications for Older Adults With Type 2 Diabetes.

75歳以上の高齢患者さんが10種類以上のお薬を内服されていることがあります。

いわゆるポリファーマシーは極めて深刻な問題で、高齢者の健康被害の一因になっているのですが、状況はなかなか改善しません。

糖尿病薬に関しても例外ではなく、薬の飲みすぎによる低血糖発作が問題となっています。

糖尿病学術誌の王様、Diabetes Careに興味深い論文が掲載されていました。

この研究では、2型糖尿病の高齢者に対する低血糖を引き起こす薬の減量または切り替えに対する医師のアプローチを調べるために、アメリカの一般医学、老年医学、内分泌学の医師を対象に調査を実施しました。

医師たちは、健康状態によって異なるHbA1c値を持つ3つのシナリオ(HbA1c 6.3%, 7.3%, 7.7%)において、低血糖を引き起こす薬の変更について報告しました。

医師たちは、健康な患者に対して48%、複雑な健康状態の患者には4%、健康状態の悪い患者には20%の医師が低血糖を引き起こす薬の減量を行いました。全体として、17%の医師が患者の健康状態によらず薬を切り替えました。

この研究では、半数の医師が複雑なまたは健康状態の悪い高齢患者さんに対して、ガイドラインの推奨を下回る厳しいHbA1c目標を選択したことも示しました。つまり、”過剰医療”です。筆者らはガイドラインよりも低いHbA1c値を目標へとしないことで適切な減薬が出来るだろうと述べています。

私は基本的に”可能な限り薬を減らす”方針の医者ですが、他の医師からすでに複数の強力な薬を処方されて私の外来を受診される患者さんの調整には苦労します。

糖尿病など生活習慣病は一番最初に受診した医師の方針・指導がその後の治療経過を決定すると言っても過言ではありません。

食事と運動、自分らしく健康的なライフスタイルを築くことが治療の基本であり、最も効果的です。

すぐに薬を使うことなく患者さんとお話しながら、待つことも大切なのです。

Aljumaah et al. (2022). The gut microbiome, mild cognitive impairment, and probiotics: A randomized clinical trial in middle-aged and older adults

腸内細菌叢と認知機能障害の関連について調べたRCTです.

例によってAbstractの日本語訳です。

背景:加齢により、腸内細菌叢が変化し認知機能が低下する。サイコバイオティクスは、精神的健康に寄与し、老化した脳を保護することができる腸内細菌叢をターゲットとした介入方法である。

本研究では、軽度認知機能障害(MCI)の基準を満たした中高年者の腸内細菌叢と予測される腸内細菌の機能的経路を、健康な人と比較し、Lactobacillus rhamnosus GG(LGG)によるプロバイオティクスの影響を、プラセボ対照の二重盲検無作為化比較臨床試験で検討した。

地域在住の中年(52~59歳)および高齢者(60~75歳)計169人が3カ月間の介入を受け、プロバイオティクス群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。参加者は認知機能が正常なグループと軽度認知機能障害のあるグループに分けられ、ベースラインとプロバイオティクス後のサンプルが収集された。

結果:マイクロバイオーム解析により、Prevotella ruminicola、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides xylanisolvensがMCIと関連する菌群として同定された。MCIのある被験者では認知機能が正常の被験者と比較して、Prevotellaが有意に多く存在することが確認された(ALDEx2 P = 0.0017, ANCOM-BC P = 0.0004).MCI群におけるLGG補給に伴うPrevotellaおよびDehalobacterium属の減少は、認知機能スコアの改善と相関していた。

結論:中高年者における認知パフォーマンスと関連する腸内細菌群を特定した。この結果に再現性があれば、これらの細菌群はMCIの重要な初期指標として用いられるだろう。プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスによって腸内細菌叢を修正できる可能性があり、加齢による認知機能障害の進行を和らげることができるかもしれない。

いわゆる、”腸脳相関”に関するエビデンスです。

昨年「ヤクルト1000」が売れましたが、ストレスを減らし睡眠を改善させるという謳い文句も、この”腸脳相関”が根拠になっています。

人体はひとつの”生態系”であり、各器官・組織が相互に作用しバランスを取っているという考えは古くからありますが、最近になって科学的に証明されるようになりました。

腸内細菌の研究は今後も楽しみですね。

Corrêa et al. (2022). A systematic review and meta-analysis demonstrating Klotho as an emerging exerkine.

日本人研究者が発見したアンチエイジング遺伝子Klotho。

Klothoタンパク質は運動によって分泌されるexerkineのひとつであるというメタ解析論文です。

以下、Abstractの日本語訳です。

Klotho は、骨格筋や腎臓などの様々な臓器の病態生理において、いくつかの治療的役割を担うアンチエイジングタンパク質である。運動によってKlotho値が上昇することが示唆されており、このアンチエイジングタンパク質は新しいexerkineと言える。

様々なトレーニングプロトコルが血液中を循環しているKlotho(S-Klotho)値に及ぼす影響を検証するために、システマティックレビューを行った。運動のS-Klotho値への影響を調査した無作為化および準無作為化対照試験、年齢30歳から65歳までの621名の被験者からなる12の研究を解析対象とした。

長期的な運動(最低12週間)により、S-Klothoレベルは有意に増加した(Hedge’ g [95%CI] 1.3 [0.69-1.90]; P < 0.0001)。さらに、運動は個人の健康状態やトレーニング法の違いに関係なくS-Klotho値を増加させたが、有酸素運動+筋力トレーニングでは増加が見られなかった。サブグループ解析によって、トレーニング期間と運動量がS-Klotho値に影響を与えることが分かった。

血液中のS-Klothoタンパク質は、長期的な運動後に変化するため、Klothoはexerkineと言えるかもしれなし。しかし、この効果は、運動の期間・量・強度などの違いによって影響を受ける可能性がある。

アンチエイジングは多くの人々の関心を集めてやまない分野ですが、運動にアンチエイジング効果があることはほぼ定説となっています。

Klothoを含め運動の効果がより深く解明されれば、ちょっとした若返りも夢ではないかもしれませんね。

Nikkhah et al. (2022). The critical role of gut microbiota dysbiosis in skeletal muscle wasting: a systematic review

最近大注目されている腸内細菌叢と健康をテーマとした興味深い研究の一つです。

Abstractを日本語訳してみました。

【目的】骨格筋の減少は、炎症、免疫系の異常、タンパク質同化抵抗性など複数の経路を介した腸内細菌叢の異常により影響を受ける。サルコペニアと悪液質のヒトおよび動物における腸内細菌叢の組成を調査した研究を系統的にレビューすることを目的とした。

【方法】PubMed, Web of Science, Scopusのデータベースで関連キーワードを用いた包括的な系統的検索を実施した。2021年7月までに発表されたヒトの観察研究および動物実験の原著論文(英語)が選択された。

【結果】7件のヒトの研究と5件の動物試験が含まれた。ヒトの研究は3件がケースコントロール研究で、他の4件は加齢によるサルコペニア、肝硬変、がん性悪液質を含む3つの異なる状態を調査した横断的研究であった。加齢によるサルコペニアと肝硬変によるサルコペニアでは、短鎖脂肪酸(SCFAs)産生菌の減少が主要な変化であった。Lachnospira、Fusicatenibacter、Roseburia、LachnoclostridiumからなるLachnospiraceaeファミリーは、加齢によるサルコペニアで有意に減少し、肝硬変によるサルコペニアでは腸内細菌叢のα多様性は対照群に比べ減少していた。さらに、炎症誘発作用を持つEnterobacteriaceaeが筋肉の減少した衰弱動物で増加していた。

【結論】加齢によるサルコペニア、腎不全、がん性悪液質を含む様々な病態の結果として、腸内細菌叢の変化と骨格筋の低下との有意な関連性が示された。

ヒトに対して腸内細菌叢を乱す処置を施すことは倫理的に許されませんので、臨床研究の王道である無作為化比較試験はできない分野です。

因果関係が証明されたわけではありませんが、どうやら腸内細菌叢の乱れは筋肉に良くなさそうなことが明らかとなりました。