PLOS ONEの取り組みについて考える

Liu et al. (2023). Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study

UK biobankという巨大なバイオバンクに登録されたデータを解析した研究です。

欧州の449,210人を解析対象に、片頭痛と食習慣の関係を調べています。

Mendel randomization analysisという、”対立形質が無作為に遺伝するという仮定に基づく分子疫学的解析法”を用いて、観察研究ですが因果関係を推測できる方法を使っています。

Mendel randomization analysisでは機能が分かっている遺伝子多型が特定の疾患や因子とどのように関係しているかを調べます。

Genetically predicted dietary habitsが変数になっているので、遺伝子解析で食習慣との関連が明らかとなっている遺伝子多型と片頭痛の関連を調べた、ということのようです。

・遺伝的に予測された片頭痛リスク低下と関連する食物は、コーヒー、チーズ、脂の多い魚、お酒(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー(シリアル食品)、全粒粉/全粒パンであった。

・オッズ比はそれぞれ、コーヒー:0.71、チーズ:0.78、脂の多い魚:0.73、赤ワイン:0.65、生野菜:0.72、ミューズリー:0.65、全粒粉/全粒パン:0.76であり、22%-35%のリスク低下が見られた。

・片頭痛リスク上昇と関連する食物は、白パン、コーンフレーク/フロスティ、鶏肉であった。

・白パン、全粒粉/全粒パン、ミューズリー、お酒(赤ワイン)、チーズ、脂の多い魚の摂取に関する遺伝子多型は、不眠症および/またはうつ病のリスク上昇と関連しており、これらの食習慣が片頭痛発症のメディエーターである可能性が示唆された(白パン以外は片頭痛発症リスク低下と関連しているのでどのようにメディエイトしているのか疑問?)。

・片頭痛の発症はアルコール摂取量の減少やお茶の摂取量の増加とも関連していた。

赤ワインやチョコレートやチーズは片頭痛を悪化させるというのが通説?(チラミンが血管を拡げて頭痛を誘発する)だったと思うのでこの結果は意外ですが、遺伝的に予測されるリスクとはまた別なのかもしれません。

興味深い内容だったのでご紹介しました。論文は下のリンクから全文読めます。

Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study

Fajzel et al. (2023). The global human day

地球上に住む約80億人の人間が1日をどのように過ごしているか?

世界銀行、ユニセフ、OECDなどの統計データを使って見積もりました。

Human Chronome Projectというプロジェクトの一つみたいです。

私とChatGPT先生の協同作業で結果を要約すると…。

睡眠と安静の時間は9.1 ± 0.4時間であり、1日の中で最も長い時間でした。

睡眠と安静以外の人間の生活、約15時間は次の3つのグループに要約できました。

一つ目は、外見を整える、身体の清潔さと健康を保つ、食事、学び、宗教活動などが含まれる活動で9.4時間に当たりました。そのうち、約6時間半が受動的・対話的・社会的な活動で、読書、テレビを見ること、ゲームをすること、散歩に行くこと、社交活動、何もせずに座っていることなどを含み、社会的な活動は平均して4.6 ± 0.3時間、起きている時間の約31%を占めていました。

二つ目は、自然環境からの材料収集やエネルギーの生産、食料の生産、インフラの整備、住居の清掃など外部環境に関する活動で、3.4時間を占めていました。

三つ目は、法律や政治システム、金融、警察、ショッピングなどに関する活動で2.1時間を占めていました。

仕事や家の中で行う報酬のない労働を含む経済活動は、1日あたり約2.6時間(158分)を占め、睡眠時間を除いた人生の6分の1でした。これは15歳から64歳までの人々における週41時間の労働時間に相当します。

世界の経済活動において、3分の1が食料の生産と収集(44 ± 3分)に関わるものでした。

また、4分の1(37 ± 2分)は小売業、卸売業、不動産、保険、金融、法律、政治などに関連していました。

製造業(車両、機械、電子機器、家庭用電化製品など、およびそれらの部品)が経済活動の7分の1を占めていました(22 ± 2分)。経済活動における残りの時間は、建築業、輸送業、食品加工、学校教育と研究などに割り当てられていました。

食料の生産と収集にかかる時間が低所得国では大きい(>1.0時間)が、高所得国では非常に小さい(<5分)ことが分かりました。

一方、食事の準備(0.9 ± 0.1時間)、人間の移動・輸送(0.9 ± 0.2時間)、衛生と身だしなみ(1.1 ± 0.2時間)、食事(1.6 ± 0.2時間)にかける時間は、国民一人当たりGDPの違いと関連がありませんでした。これらの所得・経済レベルに依存しない活動は、起きている時間の4.5 ± 0.4時間、30%を占めていました。

特に人間の移動・輸送に費やされる時間は国によらず比較的一定であり、人口レベルでは旅行時間に対して物質的な貧富がほとんど影響を与えないことが示されました。

睡眠時間が9時間以上とやたら長いのは子どもの睡眠時間や眠らずにただ安静にしている時間も含まれているからのようです。

睡眠時間とほぼ同じくらいの時間を自分の身だしなみや学びなど社会活動に使っているというのはちょっと意外でした。これも子どもから老人まで様々な年齢層をひとまとめにして評価しているからかな、と思いましたが、本文中に

“We assessed the full human lifespan by weighting population-specific time use estimates using age-structured demographic data.”

とあり、Methodsで年齢によるデータ不足や年齢によって行う活動の違いを考慮したと書かれているので、調整されているようです。

仕事をしている時間が1日のうち2.6時間とかなり短い印象ですが、休日や休憩もすべて含めて平均化するとこんなものなのでしょうか。労働人口では週41時間ということなので日本の平均労働時間とほぼ一緒ですね。

高所得国と低所得国とで分けて論じられているように、国によってどのような経済活動に時間が割かれているかだいぶ異なりますが、人間は経済活動時間の3分の1を食料生産に割いています。

食べなければ生きていけないので当然ですが、農業がいかに大切か分かります。

総じて、人間は睡眠と(労働以外の)社会活動に多くの時間を使っているようです。

当たり前といえば当たり前の結果ですが、”世界の今”を横断的に調べた点が面白いですね(論文は以下のリンクから読めます)。

The global human day

Rosano et al. (2023). Increase in skeletal muscular adiposity and cognitive decline in a biracial cohort of older men and women.

異所性脂肪という言葉を聞いたことがありますか?

脂肪肝という言葉は耳にされたことがあると思います。肝臓や筋肉などに蓄積した脂肪のことを異所性脂肪といいます。

今回は筋肉の異所性脂肪が認知機能低下と関係しているという研究をご紹介します。

69歳から79歳の男女1634人を対象に行われた研究で、大腿部の筋肉間脂肪をCTで評価しました。認知機能は研究開始から1、3、5、8、10年目に評価されました。

大腿部の筋肉間脂肪面積は研究開始から6年目で4.85 cm2増加し、認知機能スコアは6年目から10年目までに3.20点下がっていました。この筋肉内の異常な脂肪蓄積は認知機能スコア3.60点の低下に相当していました。人種や性別による相互作用は見られませんでした。

筋肉内の脂肪組織の増加は、体全体の脂肪量や筋肉の質・量とは独立して認知機能の低下を予測できるようです。糖尿病や高血圧があってもこの関係は変わりませんでした。

高齢者全員にCT検査を行って筋肉内の脂肪量を評価するのは現実的ではありませんが、脂肪肝も含めて異所性脂肪と健康の関係は最近注目されている分野です。

内臓脂肪と同じように糖尿病、動脈硬化、心血管病(脳卒中や心臓病)のリスクであることが明らかになってきていて、体重やBMIだけでは分からないことが分かるようになってきました。

痩せている人でも隠れ脂肪肝が結構多いように感じます。

外見で分かるのは皮下脂肪ですが、皮下脂肪と内臓脂肪は別物で、それぞれ働きが異なります。

筋肉内に脂肪が蓄積すると筋肉の働き・質が悪くなります。

日ごろからよく体を動かして筋肉を使い、筋肉に脂肪がつかないようにしましょう。皮下脂肪は運動でなかなか減りませんが、内臓脂肪は運動で効果的に減らすことができます

この研究では太ももの筋肉を評価していましたが、足をよく使うことです。

やはり、スクワットと歩くことが王道なのです。


Bevel et al. (2023). Association of Food Deserts and Food Swamps With Obesity-Related Cancer Mortality in the US

米国では、野菜などの生鮮食品が入手困難な地域は“Food Desert”(食の砂漠)と呼ばれ、ファストフード店が多く生鮮食品を取り扱う店が少ない地域は“Food Swamp”(食の沼)と呼ばれているそうです。

そのような地域特性と肥満に関連したがんによる死亡との関係を調べた研究です。

肥満に関連したがんは、子宮内膜がん、食道腺がん、胃噴門部がん、肝臓がん、腎がん、多発性骨髄腫、髄膜腫、膵臓がん、大腸がん、胆嚢がん、乳がん、卵巣がん、甲状腺がんの13種類です。

Food Swampの指標として、食料品店や野菜などの直売所の数に対するファストフードやコンビニの店舗数の比率をスコア化し、Food SwampとFood Desertのスコアが高ければ(20.0~58.0)、その地域は健康的な食料品が少ないと判定されました。

以下、結果の要点です。

肥満関連のがん死亡率が高い地域は、死亡率が低い地域と比較して、貧困率が高く、肥満率が高く、糖尿病が多かった

Food DesertとFood Swampの両スコアが肥満に関連するがんの死亡率と正の相関関係があり、Food Swampスコアが高い地域では、肥満に関連するがんによる死亡のオッズが77%増加した

妥当でよく分かる結果ですが、注目すべきは貧困と健康的でない食生活の関係が示されている点(論文では黒人住民が多い点も言及されています)です。

肥満や糖尿病のリスクを上げる健康的でない食料品は、比較的安く簡単に手に入るものです(例えばカップラーメンや菓子パンなど)。

一方、健康的な食料品は概して高く、一部はプレミアムもついて、誰もが簡単に手に入れらるものではありません。

食事は健康の基本です。患者さんには体に良い食事を摂りましょうといつもお話し続けています。

しかし、貧困という大きな社会問題を何とかしなければ、食と健康の問題もまた解決されずに残り続けるわけです。

貧困問題はそう簡単には解決しません。

健康的な食料品の価格を下げる方が見込みがありそうですが、果たして実現可能でしょうか?

今後、食糧難の時代がやって来るとも言われていますが、その時、食生活が関連する病気は減るのでしょうか、それとも増えるのでしょうか?

Tamura et al. (2023). Dietary carbohydrate and fat intakes and risk of mortality in the Japanese population: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study

糖質制限食の健康効果について侃侃諤諤の議論が始まり久しいですが、糖質制限した方が長生きするのかそれとも糖質制限しない方が長生きするのかはまだ明らかではありません。

糖尿病患者さんの治療において、血糖値を適正な値に下げ、合併症の進行を防ぎ、天寿を全うすることが大目標なので、血糖値を上げない糖質制限食の長生き効果はとても気になるところです。

過ぎたるは猶及ばざるが如し、と昔から言われるように、糖質制限もほどほどが良いのではないかというのが私の考えですが、糖質制限食と死亡の関係について一石を投じる研究が日本から発表されました。

以下にAbstractをChatGPT先生に訳してもらい私が修正したものを載せます。コメントはその下に書きます。

背景
過去のコホート研究では、食事中の炭水化物・脂質摂取量と死亡リスクとの関連について、相反する結果が見られる。

目的
炭水化物と脂質摂取量と死亡率との長期的な関連を調べた。

方法
このコホート研究では、34,893人の男性と46,440人の女性(年齢35〜69歳、平均BMIはそれぞれ23.7および22.2 kg/m2)が、2004年から2014年にかけて行われたベースラインの調査から2017年または2018年の終わりまで追跡された。炭水化物、脂質、および総エネルギー摂取量は、食事頻度調査票(FFQ)を使用して推定された。炭水化物と脂質のエネルギー摂取量に基づいて、死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が推定された。

結果
平均8.9年の追跡期間中に、2,783人(男性1,838人、女性945人)が死亡した。炭水化物によるエネルギー摂取の占める割合が50%から55%の男性と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が<40%の男性は全死亡のリスクが有意に高かった(HR:1.59、95%CI:1.19〜2.12、P-trend = 0.002)。追跡期間が5年以上の女性の中では、炭水化物摂取量が多い女性は全死亡のリスクが高かった。炭水化物によるエネルギー摂取が50%から<55%と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が≥65%の場合、HR(95%CI)は1.71(0.93〜3.13)であった(P-trend = 0.005)。脂質摂取量が高い男性はがんによる死亡のリスクが高かった。脂質によるエネルギー摂取が20%から<25%と比較すると、脂質によるエネルギー摂取が≥35%の場合、HR(95%CI)は1.79(1.11〜2.90)であり、(P-trend = 0.054および0.058)。脂質摂取量は女性において全死亡およびがん死亡のリスクと逆相関する傾向がみられた(P-trend = 0.054および0.058)。

結論
男性の低炭水化物摂取と女性の高炭水化物摂取は、死亡と関連することが示された。炭水化物摂取量が比較的高い日本の成人女性の間では、脂質摂取量が高いと死亡リスクが低い可能性がある。

著者らも研究の限界で述べているように、FFQでの食事調査はベースラインのみで追跡期間中には再評価されていません。例えば、途中で糖尿病など生活習慣病を発症したり、仕事が変わったり、家族が亡くなって食生活が変わることだってあるわけです。これは大きなlimitationでしょう。

また、FFQは妥当性の高い質問紙票とは言え、主観的データですしバイアスが入るのはどうしようもありません。人間の食事摂取を正しく評価するのは難しく、このような研究の本質的な問題ですが、AIなんかによって何とかならないでしょうか?

私が疑問に思ったのは、なぜ炭水化物と脂質だけ評価して三大栄養素のもう一つタンパク質は評価しなかったのか?という点ですね。

最近、高齢者はもっとタンパク質を摂った方が良いなどと議論されていますし、タンパク質摂取量も調べて三大栄養素バランスを見て検証するべきだと思います。

炭水化物摂取量と死亡との関係で男女差があるのは謎ですね…。

多くの被験者を比較的長い期間追跡して調べた興味深い研究だと思います。

日本の大切なデータとして紹介させていただきました。

マインドフルネスの効果

現代社会を生き抜くために、マインドフルネスが有効であると言われて久しいですが、マインドフルネスが心だけでなく体に良い効果がないかはまじめに研究されています。

まず、ChatGPT先生にマインドフルネスの定義について聞いてみました。

マインドフルネス(mindfulness)は、仏教の教えや瞑想の実践に基づいているが、現代の心理学やストレス管理の分野でも注目されている概念です。マインドフルネスとは、意識的な注意のあり方や心の状態を表す言葉であり、現在の瞬間に対して開かれた、受け入れの姿勢を持つことを指します。

具体的には、マインドフルネスとは以下のような要素を含んでいます:

現在の瞬間への意識:マインドフルネスでは、現在の瞬間に集中し、過去や未来の思考にとらわれることなく、現在の経験に意識を向けます

非判断的な受容:マインドフルネスでは、心の中に湧き上がる感情や思考を受け入れる姿勢を持ちます。過去の経験や将来の期待に基づいて判断するのではなく、現在の状況を受け入れることが重要です。

非反応性:マインドフルネスでは、感情や思考に対して執着や反応を抑えることを目指します。思考が浮かび上がっても、それに固執せず、客観的な視点から観察することが求められます。

集中力と自己観察:マインドフルネスの実践では、瞑想や特定の活動に集中することによって、自己観察を深めます。自分の感覚や感情、思考を客観的に観察し、自己の内面の状態を理解することを目指します。

マインドフルネスは、ストレス軽減や感情の調整、集中力の向上、自己認識の促進など、さまざまな効果が期待されています。瞑想や特定の運動、日常生活の中での意識的な行動などを通じて、マインドフルネスを実践することができます。

ものすごく簡単に言うと、マインドフルネスとは現在の自分に集中していろいろな物事に囚われずありのままの自分を受け入れること、です。

瞑想と似通った点もあり、ストレスや不安障害・うつ病に対する効果が過去の研究で報告されています。

実は糖尿病にも良いようで、HbA1cを下げる効果が複数のシステマティックレビューで報告されています。

生物学的な作用として、インターロイキンなどの炎症を起こすサイトカインを減らす、自律神経バランスを整えて血糖コントロールを安定させる、ストレスに対する下垂体-副腎系の反応を調節する、などが考えられていて、今後のさらなる研究も期待されています。

メインは心理療法・認知行動療法としての作用ですので、マインドフルネスが病気を治すわけではありません

しかし、糖尿病などライフスタイルに関連した病気は自己管理が必要とされるので、マインドフルネスは治療に役立つのです。

瞑想でご紹介した腹式呼吸と合わせて、初めは自己流でもよいので、一日のうち数分間、現在の自分に集中して物事に囚われない時間を作ってみましょう。

私にとってそれは稽古の時間ですが、ある人にとっては料理の時間だったり読書の時間だったりするわけです。

本当のマインドフルネスは特別なセッティング(例えば、大人数でヨガをやるような広いスペースや自然豊かな森の中)を必要としません。

どんな環境であってもちょっとした時間でマインドフルネスは実践できます。ぜひ。

Pan et al. (2023). The Comparative Effectiveness and Safety of Insomnia Drugs: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of 153 Randomized Trials

夜ぐっすり眠れない人は多いですが、簡単に睡眠薬を飲むことはお勧めできません。

特に、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性が高く、翌日の眠気やふらつき、筋力低下や転倒、さらには認知機能の低下といった多くの副作用を起こすリスクがあるためできるだけ使用しないようにしています。

睡眠薬に関する153ものRCTをシステマティックレビュー・メタ解析した論文が発表されました。

プラセボと比べて睡眠時間を有意に改善したのは、非ベンゾジアゼピン系、抗うつ薬、オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ🄬/ベルソムラ🄬)でした。

今回はAbstractではなく、Discussionの冒頭にある結論部分を日本語訳します。※🄬は日本における先発医薬品の販売名です。

46,412人の参加者を登録した153の臨床試験を解析し、エビデンスの確実性が中くらいから高いものを報告した。

非ベンゾジアゼピン系薬が客観的な眠るまでの所要時間(=SOL)(エスゾピクロン(ルネスタ🄬)で-16.64分、ゾピクロン(アモバン🄬)で-16.26分)、主観的なSOL(ゾピクロンで-40.87分)、客観的な中途覚醒(=WASO)(ゾルピデム(マイスリー🄬)で-15.40分)、主観的なWASO(プロポフォール(ディプリバン🄬)で-50.35分)の短縮において最も効果的な薬物の一つであることが示された。

また、非ベンゾジアゼピン系薬は客観的な総睡眠時間(=TST)の延長(ゾルピデムで28.42分)、主観的なTSTの延長(プロポフォールで102.42分)、および睡眠の質の改善(エスゾピクロン)においても最も効果的であることが示された。

エビデンスの確実性はやや劣るが、抗うつ薬も客観的なTSTの増加(ドキセピン(日本では未発売)で23.97分、ミルタザピン(リフレックス🄬)で47.20分)、主観的なTSTの増加(パロキセチン(パキシル🄬)で170分)、および睡眠の質の改善(ミルタザピンとトリミプラミン(スルモンチール🄬))において有効で、主観的なWASOの短縮(ミルタザピンで-17.70分)とSOLの短縮(パロキセチンで-41.00分)も認められた。

一方、オレキシン受容体拮抗薬は客観的なWASOの短縮(スボレキサント(ベルソムラ🄬)で-25.17分)、客観的なTSTの延長(レムボレキサント(デエビゴ🄬)で58.15分)、および主観的なTSTの延長(スボレキサントで22.92分)と関連していました。

メラトニン受容体作動薬は主観的および客観的なSOLの短縮(ラメルテオン(ロゼレム🄬)で-12.88分)と関連していました。

ベンゾジアゼピン系薬の使用は主観的なSOLを短縮させなかった(4.46分)。

(略語が多く読みにくくてすみません)

非ベンゾジアゼピン系よりベンゾジアゼピン系の方が効果は強い印象があったのですが、このメタ解析の結果を見るとそうでもないようです。

そうすると、ベンゾジアゼピン系は患者さんにとって不利益が多く大して有効でもない睡眠薬という位置づけになります。

やはり、使うべきではない薬の一つですね。

Riddell et al. (2023). Is There an Optimal Time of Day for Exercise? A Commentary on When to Exercise for People Living With Type 1 or Type 2 Diabetes

今回は研究論文ではありませんが、糖尿病患者さんの運動のタイミングについてまとめられたものがあったので紹介したいと思います。

私の注目する「時間運動生理学」と深く関連する分野です。

1. 朝か夜か

““Chronotype” is a term used to describe individuals’ preference for being a “morning person” or an “evening person” with respect to sleep patterns, physical activity patterns, work preferences, eating patterns, and energy levels. In general, individuals who are early chronotypes tend to do more physical activity in the morning and have greater overall daily energy expenditure than those who are late chronotypes. Early chronotypes also have less risk for cardiometabolic disease over their lifetime. In type 2 diabetes, having a late chronotype is associated with greater caloric intake at dinner, later bedtimes, later wakeup times, and higher A1C levels.”

「クロノタイプ」は、睡眠や身体活動、働き方、食事時間などが「朝型」か「夜型」かといった個人の特性を表していますが、概して「朝型」の人は「夜型」の人より活発でエネルギー消費が多いようです。

また、2型糖尿病患者さんにおいて、「夜型」の人は夜食べ過ぎて寝るのが遅くなる傾向があり、血糖コントロールも悪いことが分かっています。

1型糖尿病患者さんにおいても、夜運動をすると寝ている間に低血糖を起こすリスクが上がるため、どちらかというと午前中の運動が良いのでは?と書かれていました。

2. 食前か食後か?

“However, a recent systemic review suggests that postmeal mild to moderate activity may be the more favorable approach for limiting postprandial glucose excursions, at least in individuals with prediabetes or type 2 diabetes. Postmeal exercise has an acute glucose-lowering effect, as muscle contractions enhance skeletal muscle glucose uptake. Because of the acute nature of this mechanism, completing activity after each meal is likely more beneficial than only completing activity after one meal in people with prediabetes or type 2 diabetes.”

最近のシステマティックレビューによると、2型糖尿病患者さんは食後に、さらに食事を摂ったら毎回運動することで筋肉による糖取り込みが増え血糖値が下がることが分かっています。

グルコーススパイク―食後高血糖が隠れている前糖尿病段階の人ほど食後の運動効果が高いのかもしれません。

食事ごとにインスリン注射が必須の1型糖尿病患者さんの場合、高強度インターバルトレーニング(HIIT)や筋力トレーニング以外の有酸素運動であれば、食前に運動した方が運動後の低血糖リスクが減り良いのではないか?ということでした。

以下Summaryの日本語訳です。

日中の運動時間と糖尿病患者の健康状態や血糖値との関係に影響を与える潜在的なファクターの数の多さを考えると、現在の研究結果が常に一貫していないことは驚くことではありません。しかし、現在のエビデンスにはいくつか共通点があり、将来、研究の焦点となるべきものが示されています。

まず、運動は一般的に、いつ行われるかやその強度に関係なく、糖尿病患者の全体的な健康状態と血糖値を改善します。したがって、実践的な観点から見れば、糖尿病患者にとって最適な結論は、自分ができる運動ルーティンをつくることです。いつでも運動するのが最適であり、自分の生活リズムを考慮して、最適なの運動プログラムを作成することが重要です。

一部のエビデンスによれば、1型糖尿病の患者は、午前中に軽度から中強度のトレーニングを継続することで、健康になり低血糖症のリスクが下がる可能性があります。一方、午後に運動する1型糖尿病の患者は、有酸素運動(持久力トレーニング)よりもHIITや筋力トレーニングの方が血糖変動の管理により有益であるかもしれません。

もう一つの共通点は、食前の運動がインスリン感受性を向上させる一方、食後の運動が糖尿病予備群や2型糖尿病患者の血糖値を最も低下させるということです。食後の運動”exercise snack”または”burst”(つまり、各食後の短時間の運動や階段の上り下り)が、一日を通じて血糖値を管理するために効果的な方法となる可能性があります。

1型糖尿病の患者において、血糖値に影響を与えるファクターはやや複雑です。食後の有酸素運動は血糖値低下に有効ですが、低血糖のリスクが高まることを考慮する必要があります。したがって、有酸素運動の時間と強度は1型糖尿病の状態に合わせて調整されるべきです。低血糖発作が懸念される場合、食前の有酸素運動やHIIT、または食前・食後の筋力トレーニングが1型糖尿病の患者にとって有益かもしれません。運動のタイミングに関わらず、1型糖尿病の患者にはCGM(持続的な血糖モニタリング)と血糖トレンドに基づいた炭水化物の摂取が推奨されます。

糖尿病など病気をお持ちでない人の最適な運動のタイミングは分かりませんが、血糖値に関して言えば、一日の早い時間帯(午前中、遅くても夕食前まで)に運動をする方が良さそうです。

そして、夕食は少なめにすることです。

Boehme et al. (2023). The gut microbiota is an emerging target for improving brain health during ageing

腸内細菌叢のバランスは人間の身体に大きな影響を与えます。

糖尿病や肥満症などエネルギー代謝に関わる病気、免疫力、うつ病や不安神経症など精神の働き、さらには認知機能など、身体全体と深いかかわりを持っていることが分かってきました。

この総説は脳の老化と腸内細菌叢の関係についてまとめたものです。

腸内細菌叢はこの世に生まれてからダイナミックに変化し、免疫系の発達、離乳食の開始、青年期に生活習慣が確立することで、徐々に安定していきます。ここでも生活習慣が重要な役割を演じます。

老化は、腸内細菌叢の中心となる菌種の減少、個々の人間独自の腸内細菌の増加、多様性の変化、腸内細菌叢の機能の変化を起こしますが、健全な腸内細菌叢を保つことが脳の健康にとっても重要です。

以下、Abstractの日本語訳です。

腸内細菌叢は、加齢に伴う脳機能への影響や行動制御を含め、生涯を通じて宿主の健康と恒常性の維持に重要な役割を担っています。

神経変性疾患の発症など、年齢が同じくらいであるにもかかわらず、老化の速度に差があることが示されており、老化における健康状態の決定において環境因子が重要な役割を果たす可能性が示唆されています。

近年、腸内細菌叢が脳の老化症状を改善し、腸内細菌叢をターゲットに健康的な認知機能を促進する治療の可能性が示されてきています。

本総説では、腸内細菌叢が持つ加齢に伴う神経変性疾患(アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、多発性硬化症)への影響を含め、腸内細菌叢と脳の老化との関係に関する現在の知見をまとめます。さらに、腸内細菌叢を介した治療戦略について評価します。

Abstractを読んだだけでは何を言いたいのかよく分かりませんが…。

  1. 腸内細菌叢が”健康的”だと認知機能が改善し、脳の炎症が下がり、ミクログリア(脳の免疫細胞)の働きが良くなる。
  2. 人間には脳腸相関が存在し、腸内細菌叢が脳機能に影響を与える。
  3. “健康的な”腸内細菌叢を保つためには良きライフスタイル:運動、プロバイオティクス/プレバイオティクス、地中海食、絶食などを取り入れることが必要である。

こんな感じで覚えておいていただければよいかと思います。