マインドフルネスの効果

現代社会を生き抜くために、マインドフルネスが有効であると言われて久しいですが、マインドフルネスが心だけでなく体に良い効果がないかはまじめに研究されています。

まず、ChatGPT先生にマインドフルネスの定義について聞いてみました。

マインドフルネス(mindfulness)は、仏教の教えや瞑想の実践に基づいているが、現代の心理学やストレス管理の分野でも注目されている概念です。マインドフルネスとは、意識的な注意のあり方や心の状態を表す言葉であり、現在の瞬間に対して開かれた、受け入れの姿勢を持つことを指します。

具体的には、マインドフルネスとは以下のような要素を含んでいます:

現在の瞬間への意識:マインドフルネスでは、現在の瞬間に集中し、過去や未来の思考にとらわれることなく、現在の経験に意識を向けます

非判断的な受容:マインドフルネスでは、心の中に湧き上がる感情や思考を受け入れる姿勢を持ちます。過去の経験や将来の期待に基づいて判断するのではなく、現在の状況を受け入れることが重要です。

非反応性:マインドフルネスでは、感情や思考に対して執着や反応を抑えることを目指します。思考が浮かび上がっても、それに固執せず、客観的な視点から観察することが求められます。

集中力と自己観察:マインドフルネスの実践では、瞑想や特定の活動に集中することによって、自己観察を深めます。自分の感覚や感情、思考を客観的に観察し、自己の内面の状態を理解することを目指します。

マインドフルネスは、ストレス軽減や感情の調整、集中力の向上、自己認識の促進など、さまざまな効果が期待されています。瞑想や特定の運動、日常生活の中での意識的な行動などを通じて、マインドフルネスを実践することができます。

ものすごく簡単に言うと、マインドフルネスとは現在の自分に集中していろいろな物事に囚われずありのままの自分を受け入れること、です。

瞑想と似通った点もあり、ストレスや不安障害・うつ病に対する効果が過去の研究で報告されています。

実は糖尿病にも良いようで、HbA1cを下げる効果が複数のシステマティックレビューで報告されています。

生物学的な作用として、インターロイキンなどの炎症を起こすサイトカインを減らす、自律神経バランスを整えて血糖コントロールを安定させる、ストレスに対する下垂体-副腎系の反応を調節する、などが考えられていて、今後のさらなる研究も期待されています。

メインは心理療法・認知行動療法としての作用ですので、マインドフルネスが病気を治すわけではありません

しかし、糖尿病などライフスタイルに関連した病気は自己管理が必要とされるので、マインドフルネスは治療に役立つのです。

瞑想でご紹介した腹式呼吸と合わせて、初めは自己流でもよいので、一日のうち数分間、現在の自分に集中して物事に囚われない時間を作ってみましょう。

私にとってそれは稽古の時間ですが、ある人にとっては料理の時間だったり読書の時間だったりするわけです。

本当のマインドフルネスは特別なセッティング(例えば、大人数でヨガをやるような広いスペースや自然豊かな森の中)を必要としません。

どんな環境であってもちょっとした時間でマインドフルネスは実践できます。ぜひ。

Pan et al. (2023). The Comparative Effectiveness and Safety of Insomnia Drugs: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of 153 Randomized Trials

夜ぐっすり眠れない人は多いですが、簡単に睡眠薬を飲むことはお勧めできません。

特に、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性が高く、翌日の眠気やふらつき、筋力低下や転倒、さらには認知機能の低下といった多くの副作用を起こすリスクがあるためできるだけ使用しないようにしています。

睡眠薬に関する153ものRCTをシステマティックレビュー・メタ解析した論文が発表されました。

プラセボと比べて睡眠時間を有意に改善したのは、非ベンゾジアゼピン系、抗うつ薬、オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ🄬/ベルソムラ🄬)でした。

今回はAbstractではなく、Discussionの冒頭にある結論部分を日本語訳します。※🄬は日本における先発医薬品の販売名です。

46,412人の参加者を登録した153の臨床試験を解析し、エビデンスの確実性が中くらいから高いものを報告した。

非ベンゾジアゼピン系薬が客観的な眠るまでの所要時間(=SOL)(エスゾピクロン(ルネスタ🄬)で-16.64分、ゾピクロン(アモバン🄬)で-16.26分)、主観的なSOL(ゾピクロンで-40.87分)、客観的な中途覚醒(=WASO)(ゾルピデム(マイスリー🄬)で-15.40分)、主観的なWASO(プロポフォール(ディプリバン🄬)で-50.35分)の短縮において最も効果的な薬物の一つであることが示された。

また、非ベンゾジアゼピン系薬は客観的な総睡眠時間(=TST)の延長(ゾルピデムで28.42分)、主観的なTSTの延長(プロポフォールで102.42分)、および睡眠の質の改善(エスゾピクロン)においても最も効果的であることが示された。

エビデンスの確実性はやや劣るが、抗うつ薬も客観的なTSTの増加(ドキセピン(日本では未発売)で23.97分、ミルタザピン(リフレックス🄬)で47.20分)、主観的なTSTの増加(パロキセチン(パキシル🄬)で170分)、および睡眠の質の改善(ミルタザピンとトリミプラミン(スルモンチール🄬))において有効で、主観的なWASOの短縮(ミルタザピンで-17.70分)とSOLの短縮(パロキセチンで-41.00分)も認められた。

一方、オレキシン受容体拮抗薬は客観的なWASOの短縮(スボレキサント(ベルソムラ🄬)で-25.17分)、客観的なTSTの延長(レムボレキサント(デエビゴ🄬)で58.15分)、および主観的なTSTの延長(スボレキサントで22.92分)と関連していました。

メラトニン受容体作動薬は主観的および客観的なSOLの短縮(ラメルテオン(ロゼレム🄬)で-12.88分)と関連していました。

ベンゾジアゼピン系薬の使用は主観的なSOLを短縮させなかった(4.46分)。

(略語が多く読みにくくてすみません)

非ベンゾジアゼピン系よりベンゾジアゼピン系の方が効果は強い印象があったのですが、このメタ解析の結果を見るとそうでもないようです。

そうすると、ベンゾジアゼピン系は患者さんにとって不利益が多く大して有効でもない睡眠薬という位置づけになります。

やはり、使うべきではない薬の一つですね。

Riddell et al. (2023). Is There an Optimal Time of Day for Exercise? A Commentary on When to Exercise for People Living With Type 1 or Type 2 Diabetes

今回は研究論文ではありませんが、糖尿病患者さんの運動のタイミングについてまとめられたものがあったので紹介したいと思います。

私の注目する「時間運動生理学」と深く関連する分野です。

1. 朝か夜か

““Chronotype” is a term used to describe individuals’ preference for being a “morning person” or an “evening person” with respect to sleep patterns, physical activity patterns, work preferences, eating patterns, and energy levels. In general, individuals who are early chronotypes tend to do more physical activity in the morning and have greater overall daily energy expenditure than those who are late chronotypes. Early chronotypes also have less risk for cardiometabolic disease over their lifetime. In type 2 diabetes, having a late chronotype is associated with greater caloric intake at dinner, later bedtimes, later wakeup times, and higher A1C levels.”

「クロノタイプ」は、睡眠や身体活動、働き方、食事時間などが「朝型」か「夜型」かといった個人の特性を表していますが、概して「朝型」の人は「夜型」の人より活発でエネルギー消費が多いようです。

また、2型糖尿病患者さんにおいて、「夜型」の人は夜食べ過ぎて寝るのが遅くなる傾向があり、血糖コントロールも悪いことが分かっています。

1型糖尿病患者さんにおいても、夜運動をすると寝ている間に低血糖を起こすリスクが上がるため、どちらかというと午前中の運動が良いのでは?と書かれていました。

2. 食前か食後か?

“However, a recent systemic review suggests that postmeal mild to moderate activity may be the more favorable approach for limiting postprandial glucose excursions, at least in individuals with prediabetes or type 2 diabetes. Postmeal exercise has an acute glucose-lowering effect, as muscle contractions enhance skeletal muscle glucose uptake. Because of the acute nature of this mechanism, completing activity after each meal is likely more beneficial than only completing activity after one meal in people with prediabetes or type 2 diabetes.”

最近のシステマティックレビューによると、2型糖尿病患者さんは食後に、さらに食事を摂ったら毎回運動することで筋肉による糖取り込みが増え血糖値が下がることが分かっています。

グルコーススパイク―食後高血糖が隠れている前糖尿病段階の人ほど食後の運動効果が高いのかもしれません。

食事ごとにインスリン注射が必須の1型糖尿病患者さんの場合、高強度インターバルトレーニング(HIIT)や筋力トレーニング以外の有酸素運動であれば、食前に運動した方が運動後の低血糖リスクが減り良いのではないか?ということでした。

以下Summaryの日本語訳です。

日中の運動時間と糖尿病患者の健康状態や血糖値との関係に影響を与える潜在的なファクターの数の多さを考えると、現在の研究結果が常に一貫していないことは驚くことではありません。しかし、現在のエビデンスにはいくつか共通点があり、将来、研究の焦点となるべきものが示されています。

まず、運動は一般的に、いつ行われるかやその強度に関係なく、糖尿病患者の全体的な健康状態と血糖値を改善します。したがって、実践的な観点から見れば、糖尿病患者にとって最適な結論は、自分ができる運動ルーティンをつくることです。いつでも運動するのが最適であり、自分の生活リズムを考慮して、最適なの運動プログラムを作成することが重要です。

一部のエビデンスによれば、1型糖尿病の患者は、午前中に軽度から中強度のトレーニングを継続することで、健康になり低血糖症のリスクが下がる可能性があります。一方、午後に運動する1型糖尿病の患者は、有酸素運動(持久力トレーニング)よりもHIITや筋力トレーニングの方が血糖変動の管理により有益であるかもしれません。

もう一つの共通点は、食前の運動がインスリン感受性を向上させる一方、食後の運動が糖尿病予備群や2型糖尿病患者の血糖値を最も低下させるということです。食後の運動”exercise snack”または”burst”(つまり、各食後の短時間の運動や階段の上り下り)が、一日を通じて血糖値を管理するために効果的な方法となる可能性があります。

1型糖尿病の患者において、血糖値に影響を与えるファクターはやや複雑です。食後の有酸素運動は血糖値低下に有効ですが、低血糖のリスクが高まることを考慮する必要があります。したがって、有酸素運動の時間と強度は1型糖尿病の状態に合わせて調整されるべきです。低血糖発作が懸念される場合、食前の有酸素運動やHIIT、または食前・食後の筋力トレーニングが1型糖尿病の患者にとって有益かもしれません。運動のタイミングに関わらず、1型糖尿病の患者にはCGM(持続的な血糖モニタリング)と血糖トレンドに基づいた炭水化物の摂取が推奨されます。

糖尿病など病気をお持ちでない人の最適な運動のタイミングは分かりませんが、血糖値に関して言えば、一日の早い時間帯(午前中、遅くても夕食前まで)に運動をする方が良さそうです。

そして、夕食は少なめにすることです。

Boehme et al. (2023). The gut microbiota is an emerging target for improving brain health during ageing

腸内細菌叢のバランスは人間の身体に大きな影響を与えます。

糖尿病や肥満症などエネルギー代謝に関わる病気、免疫力、うつ病や不安神経症など精神の働き、さらには認知機能など、身体全体と深いかかわりを持っていることが分かってきました。

この総説は脳の老化と腸内細菌叢の関係についてまとめたものです。

腸内細菌叢はこの世に生まれてからダイナミックに変化し、免疫系の発達、離乳食の開始、青年期に生活習慣が確立することで、徐々に安定していきます。ここでも生活習慣が重要な役割を演じます。

老化は、腸内細菌叢の中心となる菌種の減少、個々の人間独自の腸内細菌の増加、多様性の変化、腸内細菌叢の機能の変化を起こしますが、健全な腸内細菌叢を保つことが脳の健康にとっても重要です。

以下、Abstractの日本語訳です。

腸内細菌叢は、加齢に伴う脳機能への影響や行動制御を含め、生涯を通じて宿主の健康と恒常性の維持に重要な役割を担っています。

神経変性疾患の発症など、年齢が同じくらいであるにもかかわらず、老化の速度に差があることが示されており、老化における健康状態の決定において環境因子が重要な役割を果たす可能性が示唆されています。

近年、腸内細菌叢が脳の老化症状を改善し、腸内細菌叢をターゲットに健康的な認知機能を促進する治療の可能性が示されてきています。

本総説では、腸内細菌叢が持つ加齢に伴う神経変性疾患(アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、多発性硬化症)への影響を含め、腸内細菌叢と脳の老化との関係に関する現在の知見をまとめます。さらに、腸内細菌叢を介した治療戦略について評価します。

Abstractを読んだだけでは何を言いたいのかよく分かりませんが…。

  1. 腸内細菌叢が”健康的”だと認知機能が改善し、脳の炎症が下がり、ミクログリア(脳の免疫細胞)の働きが良くなる。
  2. 人間には脳腸相関が存在し、腸内細菌叢が脳機能に影響を与える。
  3. “健康的な”腸内細菌叢を保つためには良きライフスタイル:運動、プロバイオティクス/プレバイオティクス、地中海食、絶食などを取り入れることが必要である。

こんな感じで覚えておいていただければよいかと思います。

Ma et al. (2023). Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes: prospective cohort study.

砂糖は皆さん大好きですが、摂りすぎると毒になります。

この論文は、砂糖入り飲料が2型糖尿病患者さんの死亡率上昇に関連するというコホート研究の結果を報告したものです。

砂糖入り飲料は糖尿病や肥満症以外にがんのリスクとも関連していますので、くれぐれも飲みすぎないようにしましょう。

砂糖が体に良くないことは皆さん分かっているのですが、なかなか制限は難しいですね。人工甘味料も無害ではありませんから、砂糖の摂取を減らすためには”甘いもの”が少ない/多くない環境を作るしかなさそうです。

一方、コーヒーや緑茶など苦いものは概して体に良いようです。

以下、Abstractの日本語訳です。

目的:成人の2型糖尿病患者における死亡率および心血管疾患(CVD)の転帰に関連する飲み物の摂取量を調査すること。

研究デザイン:前向きコホート研究。

セッティング:米国の医療従事者。

被験者:ベースライン時およびフォローアップ時に2型糖尿病と診断された男女15,486名(Nurses’ Health Study:1980-2018年、およびHealth Professionals Follow-Up Study:1986-2018年). 飲み物の消費量は食品頻度質問票を用いて評価し、2~4年ごとに更新した。

主要評価項目: 主要評価項目は全死因死亡率。副次的評価項目はCVD発症率と死亡率。

結果:平均18.5年の追跡期間中に、3,447人(22.3%)のCVD発症者と7,638人(49.3%)の死亡が記録された。多変量調整後、飲み物の摂取量が最も少ないカテゴリーと最も多いカテゴリーを比較すると、全死因死亡のハザード比は、砂糖入り飲料で1.20(95%信頼区間 1.04-1.37)、0.96(0.86-1.07)、人工甘味料入り飲料(ASB)0.98(0.90-1.06)、コーヒー 0.74(0.63-0.86)、お茶 0.79(0.71-0.89)、普通の水 0.77(0.70-0.85 )、低脂肪乳 0.88(0.80-0.96 )、完全脂肪乳 1.20(0.99-1.44 )であった。各飲み物とCVD発症率および死亡率の間には、同様の関連が認められた。特に、砂糖入り飲料の摂取は、CVDの発症リスク(ハザード比1.25, 1.03-1.51)およびCVD死亡率(1.29, 1.02-1.63)と関連していたが、コーヒーと低脂肪乳の摂取とCVD発症の間には有意な逆相関が見られた(コーヒーと低脂肪乳の摂取は心血管疾患のリスク低下と関連する)。さらに、糖尿病診断後にコーヒーの摂取量を変えなかった人と比較して、コーヒーの摂取量を増やした人では、全死因死亡率の低下が観察された。また、紅茶や低脂肪乳についても、全死因死亡率の低下が観察された。砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置き換えることは、全死因死亡率およびCVD死亡率の低下と有意に関連し、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、フルーツジュース、全脂肪乳をコーヒー、紅茶、または普通の水に置き換えることは、全死因死亡率の低下と関連していた。

結論:各飲み物は、2型糖尿病患者における全死因死亡率およびCVDの転帰と様々な関連を示した。砂糖入り飲料の摂取量が多いほど、全死因死亡率およびCVD発症率・死亡率が高くなるのに対し、コーヒー、紅茶、水、低脂肪乳の摂取量は全死因死亡率と逆相関していた。これらの知見は、2型糖尿病患者におけるCVDと早期死亡のリスクを管理する上で、健康的な飲み物を選ぶことが重要であることを示唆している。

(えっと…普通の水、すごくないですか?)

観察研究なので因果関係を証明するものではありません。

ですが、砂糖入り飲料を適量のコーヒーやお茶に変えれば健康に長生きできるかもしれません。

Montes-Ibarra et al. (2023). Prevalence and clinical implications of abnormal body composition phenotypes in patients with COVID-19: a systematic review

体組成(筋肉・脂肪・水分量など)の異常とCOVID-19による死亡や入院との関連を調べた興味深い研究(システマティックレビュー)です。

フェーズアングルとは細胞膜の生理的な安定性を表す指標で、健康な人やアスリートでは高く、高齢者やがん患者などでは低くなります。

筋肉内の脂肪量が高く、フェーズアングルが低いほどCOVID-19による死亡が多いという結果でした。

背景:体組成の異常が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトカムに及ぼす影響はまだ明らかにされていない。

目的:COVID-19患者における体組成の異常と臨床アウトカム(死亡・入院)との関連についてのエビデンスをまとめること。

方法:2022年9月26日までに発表された体組成測定に関する観察研究を対象とした。骨格筋量、筋肉の密度(放射線検査またはエコー強度により測定)、脂肪組織(AT)、およびフェーズアングル(PhA)を測定したCOVID-19患者を対象に系統的な検索を実施した。研究の質はニューカッスル・オタワ尺度を用いて評価された。メタ分析を行わずに、体組成の異常の有無と臨床アウトカムとの関連をまとめた。

結果:12人から1,138人の被験者を含む62の研究(69.4%がバイアスリスクが低い研究)最大490,301人の結果を分析した。CT検査の結果を解析したところ、筋肉量低下の割合は約22-90%、筋肉の放射線密度の低下の割合は12-85%、内臓脂肪高値の割合は16-70%であった。生体電気インピーダンス分析(BIA)を用いた脂肪量高値の割合は51%、PhA低下の割合は22-88%であった。死亡率は、PhAと筋肉内脂肪、筋肉エコー強度、およびBIAによる脂肪量と正の相関があった。ICUへの入院は、内臓脂肪および総脂肪量と正の関連があった。病気の重症度と入院については、筋肉内脂肪と正の関連があった。他の体組成測定と入院の間には一貫性のある関連は見られなかった。

結論:COVID-19患者において体組成の異常が認められた。特定の体組成の異常と臨床的なアウトカムの間には相反する関係が見られたが、筋肉エコー強度(筋肉脂肪変性を反映する)の増加とPhAの低下は一貫して、死亡リスクと関連していた。同様に、高い筋肉内脂肪と内臓脂肪はそれぞれ死亡率とICU入院と関連していた。

Thanarajah et al. (2023). Habitual daily intake of a sweet and fatty snack modulates reward processing in humans

健康な人49名を対象とした無作為化比較試験です。

高糖質・高脂肪食を食べると、もっと高糖質・高脂肪食を食べたくなる一方、低糖質・低脂肪食を食べた人と比べて体重は変わらなかったという結果。

要旨:脂肪と糖分が多い西洋式の食生活は、過剰なカロリー摂取や体重増加を促進するが、その基本的なメカニズムは不明である。肥満と脳ドーパミン機能の変化の関連については多くの報告があるが、これらの変化が(1) 肥満にもともと存在し体重増加への感受性を高めるのか、(2) 肥満の副次的な結果であるのか、または、(3) 西洋式の食生活を続けることで直接引き起こされるのか、はっきり分かっていない。

このメカニズムを調べるため、正常体重の健康な被験者を対象に、通常の食生活に加えて、高糖質・高脂肪のスナックか低糖質・低脂肪のスナックを8週間食べてもらい、体重や低糖質・低脂肪あるいは高糖質・高脂肪の飲み物に対する欲求がどのように変化するか無作為化比較試験(NCT05574660)を実施した。

高脂肪・高糖質の食事は、低脂肪食品への欲求を減らし、食べ物の学習に関連する脳の反応を増加させた。これらの変化は体重や代謝パラメーターの変化とは独立していたため、高糖質・高脂肪の食事を繰り返し摂ることが食欲増進や体重増加のリスクを高める脳の反応に直接影響を与えることを示している。

ファストフードやソフトドリンクを摂るとまた摂りたくなるということです。

低糖質・低脂肪食を食べると高糖質・高脂肪食に対する食欲が減るわけではなさそうなので、健康に良い低糖質・低脂肪食を推奨するというよりも、いかに高糖質・高脂肪食を繰り返し食べないようにするかが重要のようです。

仮にすでに肥満の人や糖尿病患者さんが高糖質・高脂肪食を食べたら、どんどん太って病状が悪化しまうでしょう。

健康な人は代謝の働きが良いのですぐに太ることはなさそうですが、ファストフードやソフトドリンクはごくたまに、にした方が良さそうですね(きっとその方が美味しく感じます)。

Mekić et al. (2023). Younger facial looks are associate with a lower likelihood of several age-related morbidities in the middle-aged to elderly

顔の若さと加齢に関係する慢性疾患との関連を調べた面白い研究です。

オランダのコホート研究の被験者50-80代の男女2679名の横断分析で、顔写真から推測される年齢と実際の年齢の差と病気のリスクの関連性を調べました。

ちなみに、顔写真から年齢を推測したのは人間でAIではありません。AIにやってもらったらどんな結果になったか知りたいところです。

実際の年齢よりも5歳若く見えることは、骨粗鬆症(オッズ比0.76、95%信頼区間(CI)0.62-0.93)、慢性閉塞性肺疾患(オッズ比 0.85、95%CI 0.77-0.95)、白内障(オッズ比 0.84、95%CI 0.73-0.97)の発症リスク低下と関連しており、老人性難聴や認知機能障害も少なかったようです。

見た目が健康を決めるわけではありませんが、健康状態は顔の見た目や肌・髪の毛の状態に現れるのでしょう。人間は他人の顔を見て”健康的”=”若い”と認識するようにできているのかもしれません。

表情の問題もあるでしょう。

生き生きとした生活ができている人は健康状態が良く、顔の表情も明るくなり、若く見るのかもしれません。

Riddell et al. (2023). Examining the Acute Glycemic Effects of Different Types of Structured Exercise Sessions in Type 1 Diabetes in a Real-World Setting: The Type 1 Diabetes and Exercise Initiative (T1DEXI)

1型糖尿病患者さんの血糖コントロールにおける有酸素運動、インターバルトレーニング、筋力トレーニングの効果を調べたRCTです。

同様の研究と比べてn = 497とかなり被験者数の大きな研究です。

以下にAbstractを日本語訳します。

目的
1型糖尿病患者にとって、運動中および運動後の血糖コントロールは、依然として大きな課題である。運動に対する血糖応答は運動の種類(有酸素運動、インターバルトレーニング、筋力トレーニング)によって異なる可能性があり、運動の種類が運動後の血糖コントロールに及ぼす影響については依然として不明である。

研究デザインおよび方法
Type 1 Diabetes Exercise Initiative(T1DEXI)試験は、家での運動に関する実地調査である。被験者は、4週間にわたり6回の有酸素運動、インターバルトレーニング、筋力トレーニングのセッションを行った。運動量、食事量、インスリン投与量、インスリンポンプのデータ、心拍数、連続グルコースモニタリングのデータをスマートフォンアプリを使用して報告した。

結果
有酸素運動(n = 162)、インターバルトレーニング(n = 165)、または筋力トレーニング(n = 170)グループに割り付けられた1型糖尿病患者(平均年齢 37±14歳、平均HbA1c 6.6±0.8%)計497名の分析が行われた。運動中の血糖値の変化は,有酸素,インターバル,筋トレでそれぞれ-18±39,-14±32,-9±36 mg/dL(P<0.001 )で、インスリン治療の方法(ポンプや頻回注射)に関わらず同様であった。血糖値が70~180 mg/dLの範囲にある時間は、運動しない日と比較して、運動後の24時間において高かった(平均 76±20% vs. 70±23%,P<0.001)。

結論
1型糖尿病患者は、インスリン投与方法に関わらず、有酸素運動で最も血糖値が低下し、次いでインターバルトレーニング、筋力トレーニングの順に有効であった。1型糖尿病のコントロールが良好な患者においても、運動を行った日は血糖値が至適範囲内にある時間が有意に改善されたが、血糖値が範囲外となる時間はわずかに増加するかもしれない。

Feng et al. (2023). Associations of timing of physical activity with all-cause and cause-specific mortality in a prospective cohort study.

運動に関する興味深い研究が発表されました。

糖尿病の患者さんから、「運動はいつやれば一番効果的ですか?」としばしば質問されますが、はっきりとした回答はできていませんでした。

今後、この研究のような“時間運動生理学”(私の造語)の研究が進めば、患者さんの様々な特性(年齢・性別・体格・治療状況など)を加味したうえで、その人に最適な運動の時間をアドバイスできるかもしれません。

最近、健康を向上させるため、日常行動のタイミングの役割についての関心が高まっていますが、健康上の利益を最大化するための適切な運動のタイミングについてはあまり分かっていません。

筆者らは、UKバイオバンク参加者92,139人のデータ(活動量を測定する加速度計のデータ、全死亡率および特定の疾患による死亡率)を用いてコホート研究を行い、中央値7年にわたる追跡期間(638,825人年)において運動と健康上のアウトカムとの関係について調べました。

中程度から高強度の運動(MVPA=健康に良い効果があるとされる強度の運動)は、どの時間帯においても、全死亡、心血管疾患、がんによる死亡のリスクが低いことが示されました。さらに、朝だけ運動を行うグループ(5:00-11:00に毎日のMVPAの50%以上を行う)と比較して、昼から夕方に運動を行うグループ(11:00-17:00)と午前と午後両方に運動を行うグループは、全死亡と心血管疾患死亡のリスクが低くなりましたが、夕方から夜に運動を行うグループ(17:00-24:00)においてはそのような良い効果が見られませんでした。

この関係は、高齢者、男性、運動不足の参加者、または既存の心血管疾患のある参加者においてより顕著でした。本研究の結果は、運動を行うタイミングが公衆衛生上有益な効果をもたらす可能性を示しています。

主に朝に運動をするグループと比較した結果のようですが、端的にまとめると運動を行うタイミングは「昼~夕>朝>夜」の順に健康効果があるということでしょうか。

一つの観察研究に過ぎませんが、参考になるデータだと思います。

日中は仕事をしていて運動をできない患者さんも多いですが、仕事中に体を動かす習慣をつけること、そのような環境を企業・会社が提供することを期待しています。

みんなが健康になるためには社会の変化が不可欠です。