Sule et al. (2023). Communication of COVID-19 Misinformation on Social Media by Physicians in the US

  1. ワクチンは安全ではない。感染予防等に効果がない。
  2. 政府や製薬企業が嘘をついている。ウイルスの起源は自然発生ではない、などの陰謀論。
  3. イベルメクチンやヒドロキシクロロキンはCOVID-19の治療に有効である。
  4. マスクやソーシャルディスタンスはCOVID-19パンデミックに有効でない。

Cohen et al. (2023). Presence and Quantity of Botanical Ingredients With Purported Performance-Enhancing Properties in Sports Supplements

Stamatakis et al. (2023). Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity and Cancer Incidence Among Nonexercising Adults: The UK Biobank Accelerometry Study

Bonaccio et al. (2023). Ultraprocessed food consumption is associated with all-cause and cardiovascular mortality in participants with type 2 diabetes independent of diet quality: a prospective observational cohort study

PLOS ONEの取り組みについて考える

Liu et al. (2023). Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study

UK biobankという巨大なバイオバンクに登録されたデータを解析した研究です。

欧州の449,210人を解析対象に、片頭痛と食習慣の関係を調べています。

Mendel randomization analysisという、”対立形質が無作為に遺伝するという仮定に基づく分子疫学的解析法”を用いて、観察研究ですが因果関係を推測できる方法を使っています。

Mendel randomization analysisでは機能が分かっている遺伝子多型が特定の疾患や因子とどのように関係しているかを調べます。

Genetically predicted dietary habitsが変数になっているので、遺伝子解析で食習慣との関連が明らかとなっている遺伝子多型と片頭痛の関連を調べた、ということのようです。

・遺伝的に予測された片頭痛リスク低下と関連する食物は、コーヒー、チーズ、脂の多い魚、お酒(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー(シリアル食品)、全粒粉/全粒パンであった。

・オッズ比はそれぞれ、コーヒー:0.71、チーズ:0.78、脂の多い魚:0.73、赤ワイン:0.65、生野菜:0.72、ミューズリー:0.65、全粒粉/全粒パン:0.76であり、22%-35%のリスク低下が見られた。

・片頭痛リスク上昇と関連する食物は、白パン、コーンフレーク/フロスティ、鶏肉であった。

・白パン、全粒粉/全粒パン、ミューズリー、お酒(赤ワイン)、チーズ、脂の多い魚の摂取に関する遺伝子多型は、不眠症および/またはうつ病のリスク上昇と関連しており、これらの食習慣が片頭痛発症のメディエーターである可能性が示唆された(白パン以外は片頭痛発症リスク低下と関連しているのでどのようにメディエイトしているのか疑問?)。

・片頭痛の発症はアルコール摂取量の減少やお茶の摂取量の増加とも関連していた。

赤ワインやチョコレートやチーズは片頭痛を悪化させるというのが通説?(チラミンが血管を拡げて頭痛を誘発する)だったと思うのでこの結果は意外ですが、遺伝的に予測されるリスクとはまた別なのかもしれません。

興味深い内容だったのでご紹介しました。論文は下のリンクから全文読めます。

Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study

Fajzel et al. (2023). The global human day

地球上に住む約80億人の人間が1日をどのように過ごしているか?

世界銀行、ユニセフ、OECDなどの統計データを使って見積もりました。

Human Chronome Projectというプロジェクトの一つみたいです。

私とChatGPT先生の協同作業で結果を要約すると…。

睡眠と安静の時間は9.1 ± 0.4時間であり、1日の中で最も長い時間でした。

睡眠と安静以外の人間の生活、約15時間は次の3つのグループに要約できました。

一つ目は、外見を整える、身体の清潔さと健康を保つ、食事、学び、宗教活動などが含まれる活動で9.4時間に当たりました。そのうち、約6時間半が受動的・対話的・社会的な活動で、読書、テレビを見ること、ゲームをすること、散歩に行くこと、社交活動、何もせずに座っていることなどを含み、社会的な活動は平均して4.6 ± 0.3時間、起きている時間の約31%を占めていました。

二つ目は、自然環境からの材料収集やエネルギーの生産、食料の生産、インフラの整備、住居の清掃など外部環境に関する活動で、3.4時間を占めていました。

三つ目は、法律や政治システム、金融、警察、ショッピングなどに関する活動で2.1時間を占めていました。

仕事や家の中で行う報酬のない労働を含む経済活動は、1日あたり約2.6時間(158分)を占め、睡眠時間を除いた人生の6分の1でした。これは15歳から64歳までの人々における週41時間の労働時間に相当します。

世界の経済活動において、3分の1が食料の生産と収集(44 ± 3分)に関わるものでした。

また、4分の1(37 ± 2分)は小売業、卸売業、不動産、保険、金融、法律、政治などに関連していました。

製造業(車両、機械、電子機器、家庭用電化製品など、およびそれらの部品)が経済活動の7分の1を占めていました(22 ± 2分)。経済活動における残りの時間は、建築業、輸送業、食品加工、学校教育と研究などに割り当てられていました。

食料の生産と収集にかかる時間が低所得国では大きい(>1.0時間)が、高所得国では非常に小さい(<5分)ことが分かりました。

一方、食事の準備(0.9 ± 0.1時間)、人間の移動・輸送(0.9 ± 0.2時間)、衛生と身だしなみ(1.1 ± 0.2時間)、食事(1.6 ± 0.2時間)にかける時間は、国民一人当たりGDPの違いと関連がありませんでした。これらの所得・経済レベルに依存しない活動は、起きている時間の4.5 ± 0.4時間、30%を占めていました。

特に人間の移動・輸送に費やされる時間は国によらず比較的一定であり、人口レベルでは旅行時間に対して物質的な貧富がほとんど影響を与えないことが示されました。

睡眠時間が9時間以上とやたら長いのは子どもの睡眠時間や眠らずにただ安静にしている時間も含まれているからのようです。

睡眠時間とほぼ同じくらいの時間を自分の身だしなみや学びなど社会活動に使っているというのはちょっと意外でした。これも子どもから老人まで様々な年齢層をひとまとめにして評価しているからかな、と思いましたが、本文中に

“We assessed the full human lifespan by weighting population-specific time use estimates using age-structured demographic data.”

とあり、Methodsで年齢によるデータ不足や年齢によって行う活動の違いを考慮したと書かれているので、調整されているようです。

仕事をしている時間が1日のうち2.6時間とかなり短い印象ですが、休日や休憩もすべて含めて平均化するとこんなものなのでしょうか。労働人口では週41時間ということなので日本の平均労働時間とほぼ一緒ですね。

高所得国と低所得国とで分けて論じられているように、国によってどのような経済活動に時間が割かれているかだいぶ異なりますが、人間は経済活動時間の3分の1を食料生産に割いています。

食べなければ生きていけないので当然ですが、農業がいかに大切か分かります。

総じて、人間は睡眠と(労働以外の)社会活動に多くの時間を使っているようです。

当たり前といえば当たり前の結果ですが、”世界の今”を横断的に調べた点が面白いですね(論文は以下のリンクから読めます)。

The global human day

Rosano et al. (2023). Increase in skeletal muscular adiposity and cognitive decline in a biracial cohort of older men and women.

異所性脂肪という言葉を聞いたことがありますか?

脂肪肝という言葉は耳にされたことがあると思います。肝臓や筋肉などに蓄積した脂肪のことを異所性脂肪といいます。

今回は筋肉の異所性脂肪が認知機能低下と関係しているという研究をご紹介します。

69歳から79歳の男女1634人を対象に行われた研究で、大腿部の筋肉間脂肪をCTで評価しました。認知機能は研究開始から1、3、5、8、10年目に評価されました。

大腿部の筋肉間脂肪面積は研究開始から6年目で4.85 cm2増加し、認知機能スコアは6年目から10年目までに3.20点下がっていました。この筋肉内の異常な脂肪蓄積は認知機能スコア3.60点の低下に相当していました。人種や性別による相互作用は見られませんでした。

筋肉内の脂肪組織の増加は、体全体の脂肪量や筋肉の質・量とは独立して認知機能の低下を予測できるようです。糖尿病や高血圧があってもこの関係は変わりませんでした。

高齢者全員にCT検査を行って筋肉内の脂肪量を評価するのは現実的ではありませんが、脂肪肝も含めて異所性脂肪と健康の関係は最近注目されている分野です。

内臓脂肪と同じように糖尿病、動脈硬化、心血管病(脳卒中や心臓病)のリスクであることが明らかになってきていて、体重やBMIだけでは分からないことが分かるようになってきました。

痩せている人でも隠れ脂肪肝が結構多いように感じます。

外見で分かるのは皮下脂肪ですが、皮下脂肪と内臓脂肪は別物で、それぞれ働きが異なります。

筋肉内に脂肪が蓄積すると筋肉の働き・質が悪くなります。

日ごろからよく体を動かして筋肉を使い、筋肉に脂肪がつかないようにしましょう。皮下脂肪は運動でなかなか減りませんが、内臓脂肪は運動で効果的に減らすことができます

この研究では太ももの筋肉を評価していましたが、足をよく使うことです。

やはり、スクワットと歩くことが王道なのです。


Bevel et al. (2023). Association of Food Deserts and Food Swamps With Obesity-Related Cancer Mortality in the US

米国では、野菜などの生鮮食品が入手困難な地域は“Food Desert”(食の砂漠)と呼ばれ、ファストフード店が多く生鮮食品を取り扱う店が少ない地域は“Food Swamp”(食の沼)と呼ばれているそうです。

そのような地域特性と肥満に関連したがんによる死亡との関係を調べた研究です。

肥満に関連したがんは、子宮内膜がん、食道腺がん、胃噴門部がん、肝臓がん、腎がん、多発性骨髄腫、髄膜腫、膵臓がん、大腸がん、胆嚢がん、乳がん、卵巣がん、甲状腺がんの13種類です。

Food Swampの指標として、食料品店や野菜などの直売所の数に対するファストフードやコンビニの店舗数の比率をスコア化し、Food SwampとFood Desertのスコアが高ければ(20.0~58.0)、その地域は健康的な食料品が少ないと判定されました。

以下、結果の要点です。

肥満関連のがん死亡率が高い地域は、死亡率が低い地域と比較して、貧困率が高く、肥満率が高く、糖尿病が多かった

Food DesertとFood Swampの両スコアが肥満に関連するがんの死亡率と正の相関関係があり、Food Swampスコアが高い地域では、肥満に関連するがんによる死亡のオッズが77%増加した

妥当でよく分かる結果ですが、注目すべきは貧困と健康的でない食生活の関係が示されている点(論文では黒人住民が多い点も言及されています)です。

肥満や糖尿病のリスクを上げる健康的でない食料品は、比較的安く簡単に手に入るものです(例えばカップラーメンや菓子パンなど)。

一方、健康的な食料品は概して高く、一部はプレミアムもついて、誰もが簡単に手に入れらるものではありません。

食事は健康の基本です。患者さんには体に良い食事を摂りましょうといつもお話し続けています。

しかし、貧困という大きな社会問題を何とかしなければ、食と健康の問題もまた解決されずに残り続けるわけです。

貧困問題はそう簡単には解決しません。

健康的な食料品の価格を下げる方が見込みがありそうですが、果たして実現可能でしょうか?

今後、食糧難の時代がやって来るとも言われていますが、その時、食生活が関連する病気は減るのでしょうか、それとも増えるのでしょうか?

Tamura et al. (2023). Dietary carbohydrate and fat intakes and risk of mortality in the Japanese population: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study

糖質制限食の健康効果について侃侃諤諤の議論が始まり久しいですが、糖質制限した方が長生きするのかそれとも糖質制限しない方が長生きするのかはまだ明らかではありません。

糖尿病患者さんの治療において、血糖値を適正な値に下げ、合併症の進行を防ぎ、天寿を全うすることが大目標なので、血糖値を上げない糖質制限食の長生き効果はとても気になるところです。

過ぎたるは猶及ばざるが如し、と昔から言われるように、糖質制限もほどほどが良いのではないかというのが私の考えですが、糖質制限食と死亡の関係について一石を投じる研究が日本から発表されました。

以下にAbstractをChatGPT先生に訳してもらい私が修正したものを載せます。コメントはその下に書きます。

背景
過去のコホート研究では、食事中の炭水化物・脂質摂取量と死亡リスクとの関連について、相反する結果が見られる。

目的
炭水化物と脂質摂取量と死亡率との長期的な関連を調べた。

方法
このコホート研究では、34,893人の男性と46,440人の女性(年齢35〜69歳、平均BMIはそれぞれ23.7および22.2 kg/m2)が、2004年から2014年にかけて行われたベースラインの調査から2017年または2018年の終わりまで追跡された。炭水化物、脂質、および総エネルギー摂取量は、食事頻度調査票(FFQ)を使用して推定された。炭水化物と脂質のエネルギー摂取量に基づいて、死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が推定された。

結果
平均8.9年の追跡期間中に、2,783人(男性1,838人、女性945人)が死亡した。炭水化物によるエネルギー摂取の占める割合が50%から55%の男性と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が<40%の男性は全死亡のリスクが有意に高かった(HR:1.59、95%CI:1.19〜2.12、P-trend = 0.002)。追跡期間が5年以上の女性の中では、炭水化物摂取量が多い女性は全死亡のリスクが高かった。炭水化物によるエネルギー摂取が50%から<55%と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が≥65%の場合、HR(95%CI)は1.71(0.93〜3.13)であった(P-trend = 0.005)。脂質摂取量が高い男性はがんによる死亡のリスクが高かった。脂質によるエネルギー摂取が20%から<25%と比較すると、脂質によるエネルギー摂取が≥35%の場合、HR(95%CI)は1.79(1.11〜2.90)であり、(P-trend = 0.054および0.058)。脂質摂取量は女性において全死亡およびがん死亡のリスクと逆相関する傾向がみられた(P-trend = 0.054および0.058)。

結論
男性の低炭水化物摂取と女性の高炭水化物摂取は、死亡と関連することが示された。炭水化物摂取量が比較的高い日本の成人女性の間では、脂質摂取量が高いと死亡リスクが低い可能性がある。

著者らも研究の限界で述べているように、FFQでの食事調査はベースラインのみで追跡期間中には再評価されていません。例えば、途中で糖尿病など生活習慣病を発症したり、仕事が変わったり、家族が亡くなって食生活が変わることだってあるわけです。これは大きなlimitationでしょう。

また、FFQは妥当性の高い質問紙票とは言え、主観的データですしバイアスが入るのはどうしようもありません。人間の食事摂取を正しく評価するのは難しく、このような研究の本質的な問題ですが、AIなんかによって何とかならないでしょうか?

私が疑問に思ったのは、なぜ炭水化物と脂質だけ評価して三大栄養素のもう一つタンパク質は評価しなかったのか?という点ですね。

最近、高齢者はもっとタンパク質を摂った方が良いなどと議論されていますし、タンパク質摂取量も調べて三大栄養素バランスを見て検証するべきだと思います。

炭水化物摂取量と死亡との関係で男女差があるのは謎ですね…。

多くの被験者を比較的長い期間追跡して調べた興味深い研究だと思います。

日本の大切なデータとして紹介させていただきました。