稽古法の考察②

武術・武道を学ぶ目的は、相手の攻撃から身を護るあるいは相手を倒す技術を身につけることなので、対人稽古が極めて重要です。

今のところ、人と人との技の応酬を再現できるバーチャル技術は存在しないため、フィジカルで鍛えなくてはなりません。

オンラインミーティングやYouTubeなどを利用したバーチャル稽古は可能ですが、対人技術を磨くにはその場の空気、相手と対峙したときの緊張感、相手の表情・息づかい、技を受けた時の痛み、技を出した際の力の作用・反作用など、膨大な情報をインプットし、解釈し、再び人に対してアウトプットすることが必要になります。

五感をフルに使うこの対人稽古はどのようにすれば効率良く効果的に行えるのでしょうか?

私の道場では、対人稽古(組手、心体育道では”捌き”と言います)を4つの段階に分けて行います。

  1. 基本組手:攻撃技と受け技・返し技をあらかじめ決め、号令に合わせて行う。
  2. 捌き(応用):攻撃技のみ指定し、受け技・返し技は自由に行う。攻撃する側は相手の捌き技に①抵抗せずやられる②少し抵抗するなど、相手の力に応じて技を受け、相手を引き立てる。
  3. 捌き(実践):攻撃技・受け技・返し技すべて自由に行う。
  4. 捌き(実戦):攻撃技・受け技・返し技すべて自由に行う。構えもとらず、自然体で行う。一対一だけではなく、一対複数も想定して行う。

競技試合を行う空手や柔道と異なるのは、必ず攻撃側と捌く側を決めて行う点です。

両者が攻撃し合うと力に頼りがちとなり、相手に勝つことが目的になってしまいます。心体育道では負けない技術を学ぶことが稽古の目的です。相手を制する(倒す)ことができなくても、例えば攻撃を上手に受けかわすことができれば、それで良いのです。

武術・武道における対人稽古は特殊な環境で行われるものですが(相手が何かしらの敵意をもって襲ってくるという状況)、この稽古法はビジネスにおいてコミュニケーションスキルを磨く過程とアナロジカルかもしれません。

例えば、

  1. 基本スキル:状況設定や話す内容をあらかじめ決めて行う。模擬面接、模擬会見など。
  2. 応用スキル:状況設定のみ指定し、会話は自由に行う。状況によるが、話をリードする側は相手の話に①賛成する②少し反対意見を述べるなど、相手のコミュニケーション力に応じて会話をし、相手を引き立てる。
  3. 実践スキル:状況設定や話す内容などすべて自由に行う。
  4. 実戦スキル:状況設定や話す内容などすべて自由に行う。自然体で行う。一対一だけではなく、一対複数も行う。

というような4つの段階が考えられるのではないでしょうか?

武術・武道における対人稽古や組手で学ぶスキルは、ビジネスにおける対人スキルに通じるものがありそうです。

行きたくなる住みたくなる国へ

我が国は世界第2位の経済大国であった時代もありましたが、その後凋落の一途をたどり、超・少子高齢化もあり、20-30年後には悲観的な未来が待ち受けているように思えます。

果たして日本はこのまま落ちぶれていくのか?

実際に数十年後を見てみなければ本当のところは分かりませんが、私はあまり悲観していません。

というのも、人口が減っても社会がそれに適応する、適応せざるを得ないからです。

現在の仕事の数・種類、必要な労働力、社会環境などを基に未来予測すると悲観的(というよりも絶望的)になりますが、これらのファクターは今後どんどん変わっていくものです。今流行りのAIが社会を変えていくでしょう。

むしろ、人口は減った方が未来の社会にとって都合が良いかもしれません。

日本の人口減少はもうどうしようもなく、無理に人口を増やす必要はないというのが私の考えです。人口を増やそうとする(作用)と必ずどこかに歪み(反作用)が生まれます。例えば、出産数を増やすため出産に必要な経費を税金で賄うことにしたがために、第2子、第3子を望む家庭の所得税や社会保険料が増えてしまい、今後の子どもたちの教育費や生活費のことを検討した結果、子作りを断念してしまう、とか…。

一方、人口が最適化するまでは困難が続くでしょう。社会保障費は増え続け、国は貧しくなり、日々の生活に閉塞感を感じる人が増えると思います。

しかし、この閉塞感を打開するために求められるのは、無計画に移民を受け入れることでもなければ、不自然なほどSDGsに注力することでもないと思います。

残念ながら、移民やSDGsは日本固有の文化を破壊するリスクをも伴う、と考えます。Globalizationって耳当たりが良いけど、その中で固有の文化を守りかつ多様性を維持するのは大変です。

「そんなことはない。どんな人種・民族であってもみんな共生できる。」

という方もいらっしゃるでしょう。しかし、顔と名前が一致して本当に信頼できる人間関係を築けるのは150人です。人間は生き物の性として、自分の生存にとって有利かつ心地よい集団を作る傾向があります。集団が複数できれば集団と集団の間に軋轢や争いが生まれるでしょう。

移民を受け入れるなら受け入れる側にも覚悟が必要ですが、現時点において私たちにそうした覚悟があるでしょうか。人間の共感力が問題を解決してくれると良いのですが、現実はどうでしょうか。

少子高齢化という喫緊の課題を抱えているにもかかわらず、我が国の政府は「外」ばかり見ています。SDGsはきっと正しくて美しいものでしょう(ちょっと怪しいけど)。しかし、Global(いわゆる「先進国の価値観」)に合わせることばかり考えてお金を使うのではなく、今こそ「内」に目を向けて、これからの”国造り”を行うべきです。

人口減少社会において求められるのは人材の流動性ではないでしょうか。

日本が旅先として行きたくなる国となり、やがて住みたくなる国として世界の人々に選ばれれば、人材の流動性が高まり人口減少の負の影響を緩和してくれるはずです。

また、私たちも自らの国際的流動性を高めて日本の良さを伝え、教え、広めていきたいものです。

そのために必要なのは、きちんとした教育と学びです。

未来を担う子どもたちの教育と大人の学びに投資してもらいたい(いきたい)と思います。

稽古法の考察①

学習効果を高め、知識やスキルの柔軟な適応を可能にするのはdesirable difficultiesであると言われています(David Epstine著RANGEを参照)。

短期的に成果が得られる単純で表面的な学習よりも、初めから実際の応用を想定するような”困難な”学習の方が長期的には知識やスキルが定着し”望ましい”成果が得られる。

というものですが、これは武術の稽古法においても当てはまると考えられます。

例えば、一般的な空手の稽古において、初心者は足を動かさずにその場で突きや蹴りを何回も繰り返す練習を行います。基本となる単純な技を繰り返し、身体の使い方を覚えるわけです。

一方、私が稽古・指導する心体育道では、そのような練習は一切行いません。

初心者は4つの立ち方(後屈立ち・前屈立ち・三戦立ち・騎馬立ち)と12のステップ(足運び)を練習します。

これが初心者にとってなかなか難しいようで、覚えるのに苦労される道場生も多いですが、きちんと出来るようになれば型や組手に幅広く応用できるようになります。また、護身術において、相手、特に体の大きな相手とぶつかり合わないことがとても大切なポイントになるため、初めにステップを練習するということは理にかなっています。

稽古におけるdesirable difficultiesのひとつと考えられますが、立ち方とステップをマスターするのにはそれなりの時間がかかります。

単純な突き・蹴りを練習する方が楽しい、かもしれない(特に子供は)ので、心体育道を学ぶ者にとって最初で最大の”壁”となりますが、ここを乗り越えると稽古は断然楽しくなり技もどんどん上達します。

また、様々な型・技を習得した後に立ち方とステップが最も重要であることに気づき、最初の練習に立ち返ることになります。心体育道では最初に学ぶことが”奥義”なのです。

立ち方とステップがその後に習得する技でどのように使われどんな効果があるかを、実際に技を見せながら具体的に伝えるようにし、道場生の学習効果を高められるように指導しています。

Montes-Ibarra et al. (2023). Prevalence and clinical implications of abnormal body composition phenotypes in patients with COVID-19: a systematic review

体組成(筋肉・脂肪・水分量など)の異常とCOVID-19による死亡や入院との関連を調べた興味深い研究(システマティックレビュー)です。

フェーズアングルとは細胞膜の生理的な安定性を表す指標で、健康な人やアスリートでは高く、高齢者やがん患者などでは低くなります。

筋肉内の脂肪量が高く、フェーズアングルが低いほどCOVID-19による死亡が多いという結果でした。

背景:体組成の異常が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトカムに及ぼす影響はまだ明らかにされていない。

目的:COVID-19患者における体組成の異常と臨床アウトカム(死亡・入院)との関連についてのエビデンスをまとめること。

方法:2022年9月26日までに発表された体組成測定に関する観察研究を対象とした。骨格筋量、筋肉の密度(放射線検査またはエコー強度により測定)、脂肪組織(AT)、およびフェーズアングル(PhA)を測定したCOVID-19患者を対象に系統的な検索を実施した。研究の質はニューカッスル・オタワ尺度を用いて評価された。メタ分析を行わずに、体組成の異常の有無と臨床アウトカムとの関連をまとめた。

結果:12人から1,138人の被験者を含む62の研究(69.4%がバイアスリスクが低い研究)最大490,301人の結果を分析した。CT検査の結果を解析したところ、筋肉量低下の割合は約22-90%、筋肉の放射線密度の低下の割合は12-85%、内臓脂肪高値の割合は16-70%であった。生体電気インピーダンス分析(BIA)を用いた脂肪量高値の割合は51%、PhA低下の割合は22-88%であった。死亡率は、PhAと筋肉内脂肪、筋肉エコー強度、およびBIAによる脂肪量と正の相関があった。ICUへの入院は、内臓脂肪および総脂肪量と正の関連があった。病気の重症度と入院については、筋肉内脂肪と正の関連があった。他の体組成測定と入院の間には一貫性のある関連は見られなかった。

結論:COVID-19患者において体組成の異常が認められた。特定の体組成の異常と臨床的なアウトカムの間には相反する関係が見られたが、筋肉エコー強度(筋肉脂肪変性を反映する)の増加とPhAの低下は一貫して、死亡リスクと関連していた。同様に、高い筋肉内脂肪と内臓脂肪はそれぞれ死亡率とICU入院と関連していた。

Thanarajah et al. (2023). Habitual daily intake of a sweet and fatty snack modulates reward processing in humans

健康な人49名を対象とした無作為化比較試験です。

高糖質・高脂肪食を食べると、もっと高糖質・高脂肪食を食べたくなる一方、低糖質・低脂肪食を食べた人と比べて体重は変わらなかったという結果。

要旨:脂肪と糖分が多い西洋式の食生活は、過剰なカロリー摂取や体重増加を促進するが、その基本的なメカニズムは不明である。肥満と脳ドーパミン機能の変化の関連については多くの報告があるが、これらの変化が(1) 肥満にもともと存在し体重増加への感受性を高めるのか、(2) 肥満の副次的な結果であるのか、または、(3) 西洋式の食生活を続けることで直接引き起こされるのか、はっきり分かっていない。

このメカニズムを調べるため、正常体重の健康な被験者を対象に、通常の食生活に加えて、高糖質・高脂肪のスナックか低糖質・低脂肪のスナックを8週間食べてもらい、体重や低糖質・低脂肪あるいは高糖質・高脂肪の飲み物に対する欲求がどのように変化するか無作為化比較試験(NCT05574660)を実施した。

高脂肪・高糖質の食事は、低脂肪食品への欲求を減らし、食べ物の学習に関連する脳の反応を増加させた。これらの変化は体重や代謝パラメーターの変化とは独立していたため、高糖質・高脂肪の食事を繰り返し摂ることが食欲増進や体重増加のリスクを高める脳の反応に直接影響を与えることを示している。

ファストフードやソフトドリンクを摂るとまた摂りたくなるということです。

低糖質・低脂肪食を食べると高糖質・高脂肪食に対する食欲が減るわけではなさそうなので、健康に良い低糖質・低脂肪食を推奨するというよりも、いかに高糖質・高脂肪食を繰り返し食べないようにするかが重要のようです。

仮にすでに肥満の人や糖尿病患者さんが高糖質・高脂肪食を食べたら、どんどん太って病状が悪化しまうでしょう。

健康な人は代謝の働きが良いのですぐに太ることはなさそうですが、ファストフードやソフトドリンクはごくたまに、にした方が良さそうですね(きっとその方が美味しく感じます)。

日本に本当のオンライン大学院はあるのか?

あるようですが、ほとんどが私立大学のコースで、英国のように一流(ランキングの高い、その是非には問題があるにしても)大学が、全世界の学生を対象に開講している大学院コースはなさそうです。

もちろん、大規模公開オンライン講座(MOOC=Massive Open Online Course)はたくさん開講されています。

東大・京大クラスの講義を無料で受講し学べるというのは、学びたいオトナたちにとって魅力的です。

ですが、それは大学院ではありません。

以前、形あるもので書いたように、学びは形として残すことが大切だと思います。

(学びの意義は学ぶ人の哲学に拠って立つものなので、形に残らない学び、実利を求める学びももちろんあります)

オンライン大学院はほとんどがIndependent studyですが、その課程において最も刺激的かつ重要なのは、指導教官といろいろとコミュニケーションをとりながら、時にダメ出しを受け時に褒められ、オリジナル性の高い研究をして論文としてまとめること、です。

なにも研究者たれ、というわけではありませんが、研究と論文執筆によってクリエイティビティが涵養されます。この経験が学びを深くし、その後の人生にポジティブな影響を与えるはずです。

東大・京大クラスが、仮に、学位・資格取得可能なオンライン大学院を開講したらニーズがあると思います。

米国や欧州のオンライン大学院のようにすべて英語で行う必要はありません。日本語>英語で世界が求める日本文化のオンライン大学院コースを作れば良いと思います。そもそも言語の問題に関しては早晩AIが解決してくれる気がします。

例えば、京都精華大学にはマンガ学部がありますが、有名大学にマンガ学・アニメ学修士課程を作り、オンラインで全世界の学生を募集すればそこそこ学生が集まるのではないでしょうか。

今や世界に広く受け入れられたと言って良い、日本発のマンガ・アニメ文化を若く有望な外国の方々に学んでいただき、学位・資格と就職の機会を与え、その後日本と出身国との間で流動的に活躍していただく―ことが、学びを通して日本の新しい未来を創るひとつの可能性になるのではないでしょうか。

日本の大学は学生が減り今後はどんどん閉鎖されていくでしょう。

先日、恵泉女学園大学が閉学するというニュースが流れましたが、このようなニュースが次々と報道される時代がやって来ると思われます。

大学は国内ではなく国外に学生を求め、学費を集めて財務状況を向上させるべきです(日本の国としてのブランド力はもう失われつつある)。

すでに、そのような取り組みは行われているはずですが、既存の学部・学科だけでは到底、海外の有名大学に太刀打ちできません。

日本の強みであるマンガ・アニメ文化を学ぶオンライン大学院をぜひ開設してほしい。世界で唯一無二の存在になれる。

オンライン大学院開設は成果が出るまで少し時間がかかるかもしれませんが、きっと未来への投資になるはずです。

学びとリスキリングは違う

リスキリングのことを「学び直し」と訳すことが多いですが、これは誤解を招く表現だと思います。

リスキリングはReskillingであり、skillは技術・技能のことです。

つまり、リスキリングとは、”社会人が新しい職業に就いたり(転職や副業)現在の職業における適応範囲を広げたりする際に必要な技術・技能を獲得すること”です(と私は考えています)。

一方、学びにはもちろん、skillに加えknowledgeやwisdomが含まれます。

国が推奨するリスキリングのような目先の利益に囚われるものではありません。

(超少子高齢化社会にあってリスキリングによって国民の生産性を上げたいという気持ちは分かりますが、手段が目的化しないように気をつけた方がいい)

人の一生涯というスパンで観たとき、リスキリングは比較的短期的なもので、学びは長期的なものと言うこともできるかもしれません。

リスキリング中に新たな気づきを得て、それが学びにつながることもあるでしょう。

ですが、やはり、学びとリスキリングは違うものです。

リスキリングを学び直しと呼ぶことは、大人の学びは実利に結びつけるべきかのような印象を抱かせます。

(食べて、収入を増やし、社会的ポジションを上げるためには、実利を求めるのは当然なのですが)

たとえ実利を生まなくても、大人の学びは楽しくその人の人生を豊かにしてくれます。

それぞれ目的と結果は異なるはずなので、きちんと分けて考えなければ、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになるかもしれません。

MBAについて・Q3

MBAのDissertationを論文として学術誌に投稿しましたが、その続報です。

最初に投稿したのが、Social Science & Medicineでした。あえなくreject。

元Supervisorに相談してビジネスorマーケティング分野の雑誌にしてみたらと言われ、果敢にもJournal of Business Researchに挑戦→reject。

International Journal of Health Economics and Managementにtransferされ、なかなかReviewが始まらず3か月くらい経ってreject。

Health Care Management & Scienceに再投稿したところ、Editor in Chiefから「あなたの論文はうちよりもHealth Serviceに関連する雑誌に出した方がいいよ。」と丁重にreject。

Transferオプションがあったので、The Patient: Patient-Centered Outcomes ResearchにTransfer→Editorial rejection。査読にすら入らないならTransferを勧めないで欲しいものです。

論文の内容が、ビジネス・マーケティング・マネジメント・ヘルスサービス分野にそれぞれ少しずつ関係しているある意味中途半端な内容のためか、難しいようです。

論文を美しいBritish Englishに仕立ててくれたSheffield Hallam Universityの先生にも進捗状況を説明し、アクセプトされるまで投稿し続ける道を進むことになりました。

現在、Sociology of Health & Illnessにて査読中です。

予想はしていましたが、時間がかかりそうです。

医学と社会学とで論文投稿の御作法も微妙に違うことに気づきました。

Reference listの形式はすべての学術分野・雑誌で統一してほしい…いや、するべきではないのか。

MBAで同級生の人脈は築けませんでしたが、Dissertationを論文にすることでアカデミックな二人と貴重な人間関係を築くことができました。

まず知ること

糖尿病患者さんとお話ししていて思うのが、患者さんは必ずしも糖尿病についてよくご存じでないということです。

血糖値を上げるのはほぼ糖質のみですが、特に高齢の患者さんに血糖値を上げる食べ物についてお聞きすると、

「油っぽいもの」「豪華な食事」

などといった答えがしばしば返ってきます。

血糖値を上げるのは「米、パン、いも、麺、果物、お菓子、甘い飲み物」であることを外来では必ずお話しするようにしているのですが、食事に対する誤った考えが固定化してしまい、なかなか理解が深まらない方がいらっしゃいます。

油は血糖値を上げないし、豪華な食事よりもコンビニで簡単に手に入るような炭水化物メインの食べ物が糖尿病を悪化させるのに。

「食べる量を減らしたのに全然血糖値が下がらないんですね。」と仰る患者さんによくよくお話を聞いてみると、肉や油ものを減らす一方、主食が少し増えていたということもあります。

食事”量”を適量にすることも大切なことですが、もっと食べ物の中身―栄養素のバランス(タンパク質、脂質、炭水化物)や”質”に目を向けてほしいです。

孫子の兵法書に、“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”という有名な言葉がありますが、糖尿病をやっつけるためにも極めて有用な言葉です。

糖尿病はどういう病気で何に弱いのか、そして自分の身体はどのような状態で強みと弱みはそれぞれ何なのか?

これをまず知れば、糖尿病を攻略する良い戦略を、必ず立てることができます。

一対多数の講義形式ではあまり理解が深まりません。

病気に関する情報はネットに溢れていますが、ソーシャルメディア等で誤った情報を信じてしまうリスクもあります。

患者さんとお話ししながら、個々の患者さんに合った病気を攻略する戦略を立てるのは、私たち医師の役目です。

医師は正確な診断とエビデンスに基づいた治療を行うことが求められますが、必要な情報の正確さや量に関して、人間はAIに劣後します。

パターナリズムに陥らないように、患者さんと良いコミュニケーションをとることこそが、実はデジタル時代の医師の役割なのかもしれません。

手と道具(武器)の連動

心体育道では体術以外に「杖」と「SMARP(という鞭)」を用いた武器術があります。

(私が入門したころは「木刀」術もありましたが、その後稽古で行われなくなりました。)

廣原先生は「SMARP(鞭)の技は杖術が基になっている。」と仰られており、各武器術の間にも深い関係がありそうですが、ここでは手と道具(武器)の関係について考えてみたいと思います。

攻撃技である突きや打ちは腕を伸ばす動きになります。

おおよそ、上肢全体を伸ばすのが突きで、前腕のみ肘関節を伸ばすのが裏拳などの打ちになります。

この動きを杖(棒きれやほうきでもいい)に応用してみると何の違和感もなく見事にはまります。

道具(武器)の重みや厚みがあるので上手に使えるまで多少の練習は必要ですが、上肢全体を伸ばすと”槍のような突き”になり、肘関節を曲げて伸ばすと”あらゆる角度から繰り出せる打ち”になります。

杖術の場合、剣のように大きく振る動きもありますので、手の技と全く一緒ではありませんが、手を上手に使うことと道具(武器)を上手に使うことは一緒と感じます。

考えてみれば、これは人間の筋肉・骨格・関節の構造上、当然のことですが、何か道具を持って行う動作は初めは難しく感じられます。鉛筆で字を書く、ナイフやフォーク・箸を使って食べる、テニスのラケット、ゴルフのクラブ、野球のバット…etc繰り返すことによって動作が効率的で効果的になっていきます。

最初から効率的かつ効果的に身体操作ができる人のことを「天才」と呼ぶのでしょう。

武術において面白いのは、武器を使うことによって手のみの動きがより効率的かつ効果的になるところです。

武器の重みや厚みを制御するために神経機能や筋力が発達し、それが手のみの動きに反映されるのかもしれません。

また、武器を使うことによって新たな”気づき”も得られます。

例えば、相手との間合いの取り方について。

武器を持てば当然手のリーチが長くなるので、攻撃範囲は広くなります。間合いによって有効な技と有効でない技について考え、理解が深まります。

それから、受けと体捌きについて。

手の受けと武器を用いた受けにも共通点が多いですが、硬い杖や鋭い刃物を手で受けるのは極めて危険かつ困難です。

自分が怪我をしないように、いかに上手く受け流すことが必要か思い知らされます。

力と力が真っ向からぶつかると、物理的な力が強い方が勝つのは必定です。

力のベクトルを考えて受け方と受ける方向を(できるなら)瞬時に判断することが大切です。

武器が身体に直撃すれば大怪我は免れ得ません。下手をしたら命を落とします。

相手の攻撃からいかに逃げるか、体捌きが最も重要であることに気づきます。

普段の稽古の意識が変わり、さらに武術に熟達します。

心体育道では黒帯取得後に武器術を学びます。武器術を学ぶことによっていろいろと理解が深まり姿勢が変わり、武術に対する視野が広がるのではないでしょうか。