無意識に動く

Stamatakis et al. (2023). Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity and Cancer Incidence Among Nonexercising Adults: The UK Biobank Accelerometry Study

詐欺か名誉か:Sigma Xi (The Scientific Research Honor Society)

Bonaccio et al. (2023). Ultraprocessed food consumption is associated with all-cause and cardiovascular mortality in participants with type 2 diabetes independent of diet quality: a prospective observational cohort study

PLOS ONEの取り組みについて考える

Liu et al. (2023). Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study

UK biobankという巨大なバイオバンクに登録されたデータを解析した研究です。

欧州の449,210人を解析対象に、片頭痛と食習慣の関係を調べています。

Mendel randomization analysisという、”対立形質が無作為に遺伝するという仮定に基づく分子疫学的解析法”を用いて、観察研究ですが因果関係を推測できる方法を使っています。

Mendel randomization analysisでは機能が分かっている遺伝子多型が特定の疾患や因子とどのように関係しているかを調べます。

Genetically predicted dietary habitsが変数になっているので、遺伝子解析で食習慣との関連が明らかとなっている遺伝子多型と片頭痛の関連を調べた、ということのようです。

・遺伝的に予測された片頭痛リスク低下と関連する食物は、コーヒー、チーズ、脂の多い魚、お酒(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー(シリアル食品)、全粒粉/全粒パンであった。

・オッズ比はそれぞれ、コーヒー:0.71、チーズ:0.78、脂の多い魚:0.73、赤ワイン:0.65、生野菜:0.72、ミューズリー:0.65、全粒粉/全粒パン:0.76であり、22%-35%のリスク低下が見られた。

・片頭痛リスク上昇と関連する食物は、白パン、コーンフレーク/フロスティ、鶏肉であった。

・白パン、全粒粉/全粒パン、ミューズリー、お酒(赤ワイン)、チーズ、脂の多い魚の摂取に関する遺伝子多型は、不眠症および/またはうつ病のリスク上昇と関連しており、これらの食習慣が片頭痛発症のメディエーターである可能性が示唆された(白パン以外は片頭痛発症リスク低下と関連しているのでどのようにメディエイトしているのか疑問?)。

・片頭痛の発症はアルコール摂取量の減少やお茶の摂取量の増加とも関連していた。

赤ワインやチョコレートやチーズは片頭痛を悪化させるというのが通説?(チラミンが血管を拡げて頭痛を誘発する)だったと思うのでこの結果は意外ですが、遺伝的に予測されるリスクとはまた別なのかもしれません。

興味深い内容だったのでご紹介しました。論文は下のリンクから全文読めます。

Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study

Fajzel et al. (2023). The global human day

地球上に住む約80億人の人間が1日をどのように過ごしているか?

世界銀行、ユニセフ、OECDなどの統計データを使って見積もりました。

Human Chronome Projectというプロジェクトの一つみたいです。

私とChatGPT先生の協同作業で結果を要約すると…。

睡眠と安静の時間は9.1 ± 0.4時間であり、1日の中で最も長い時間でした。

睡眠と安静以外の人間の生活、約15時間は次の3つのグループに要約できました。

一つ目は、外見を整える、身体の清潔さと健康を保つ、食事、学び、宗教活動などが含まれる活動で9.4時間に当たりました。そのうち、約6時間半が受動的・対話的・社会的な活動で、読書、テレビを見ること、ゲームをすること、散歩に行くこと、社交活動、何もせずに座っていることなどを含み、社会的な活動は平均して4.6 ± 0.3時間、起きている時間の約31%を占めていました。

二つ目は、自然環境からの材料収集やエネルギーの生産、食料の生産、インフラの整備、住居の清掃など外部環境に関する活動で、3.4時間を占めていました。

三つ目は、法律や政治システム、金融、警察、ショッピングなどに関する活動で2.1時間を占めていました。

仕事や家の中で行う報酬のない労働を含む経済活動は、1日あたり約2.6時間(158分)を占め、睡眠時間を除いた人生の6分の1でした。これは15歳から64歳までの人々における週41時間の労働時間に相当します。

世界の経済活動において、3分の1が食料の生産と収集(44 ± 3分)に関わるものでした。

また、4分の1(37 ± 2分)は小売業、卸売業、不動産、保険、金融、法律、政治などに関連していました。

製造業(車両、機械、電子機器、家庭用電化製品など、およびそれらの部品)が経済活動の7分の1を占めていました(22 ± 2分)。経済活動における残りの時間は、建築業、輸送業、食品加工、学校教育と研究などに割り当てられていました。

食料の生産と収集にかかる時間が低所得国では大きい(>1.0時間)が、高所得国では非常に小さい(<5分)ことが分かりました。

一方、食事の準備(0.9 ± 0.1時間)、人間の移動・輸送(0.9 ± 0.2時間)、衛生と身だしなみ(1.1 ± 0.2時間)、食事(1.6 ± 0.2時間)にかける時間は、国民一人当たりGDPの違いと関連がありませんでした。これらの所得・経済レベルに依存しない活動は、起きている時間の4.5 ± 0.4時間、30%を占めていました。

特に人間の移動・輸送に費やされる時間は国によらず比較的一定であり、人口レベルでは旅行時間に対して物質的な貧富がほとんど影響を与えないことが示されました。

睡眠時間が9時間以上とやたら長いのは子どもの睡眠時間や眠らずにただ安静にしている時間も含まれているからのようです。

睡眠時間とほぼ同じくらいの時間を自分の身だしなみや学びなど社会活動に使っているというのはちょっと意外でした。これも子どもから老人まで様々な年齢層をひとまとめにして評価しているからかな、と思いましたが、本文中に

“We assessed the full human lifespan by weighting population-specific time use estimates using age-structured demographic data.”

とあり、Methodsで年齢によるデータ不足や年齢によって行う活動の違いを考慮したと書かれているので、調整されているようです。

仕事をしている時間が1日のうち2.6時間とかなり短い印象ですが、休日や休憩もすべて含めて平均化するとこんなものなのでしょうか。労働人口では週41時間ということなので日本の平均労働時間とほぼ一緒ですね。

高所得国と低所得国とで分けて論じられているように、国によってどのような経済活動に時間が割かれているかだいぶ異なりますが、人間は経済活動時間の3分の1を食料生産に割いています。

食べなければ生きていけないので当然ですが、農業がいかに大切か分かります。

総じて、人間は睡眠と(労働以外の)社会活動に多くの時間を使っているようです。

当たり前といえば当たり前の結果ですが、”世界の今”を横断的に調べた点が面白いですね(論文は以下のリンクから読めます)。

The global human day

MPHについて・破3

Digital Publi Healthのfinal assignmentの結果が返って来ました。

Grade 76/100で何とか”Excellent”をゲットできました。

ざっくり言うと、かかりつけ医とリハビリの必要な患者さんをバーチャルリアリティで結び、仮想空間内で医療従事者と患者さんが一緒に運動療法を行う、という公衆衛生施策について論じました。

例のごとく、MBA/MPHのassignmentにおいては、現在世の中に存在しない新しい施策を論じなければならないのでテーマを何にしようか思案しましたが、今後市場規模が飛躍的に拡大するであろうバーチャルリアリティを介入方法に選んでみました。

もう少しcritical appraisalが欲しかったという評価でしたが、現時点で存在しないアプローチ(医療従事者と患者さんが同じ仮想空間に入る)なので具体的なcritical appraisalが難しかったというのが率直なところです。

ちなみに、PubMedで’virtual reality’で検索すると、20,000件以上の文献が出てきます。

2018年ころから飛躍的に文献数が増え、2022年は3,327篇の論文が発表されています。今年はさらに多くの研究結果が発表されることでしょう。

VRやAR(拡張現実)は”旬な分野”ですが、各分野において成功するかしないかは、いいものであることを実証するに尽きます。

医療の分野においては臨床で有効なのか費用対効果が妥当なのかエビデンスを示すことでしょうし、医療以外の商業的分野においてはマーケティングと顧客のリアクションが重要でしょう。本当にいいものなら売れます。

それからコストとプライシングのバランスも重要になってきます。

現時点ではエンターテインメントや教育分野以外での一般利用は進んでいないと思います。

仮想空間のリアリティ度もまだまだしょぼいですし。

どこまでリアルを追求するかバーチャルリアリティを応用する場によりけりですが、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・(味覚)以外に、全体的にリアルさを感じる何か、が必要でしょう。

医療分野では医学生の教育に加え遠隔医療や認知行動療法に応用されています。今後は手術やカンファレンスにおいて、仮想空間で立体画像や患者さんの情報をリアルタイムに共有するといった試みがなされそうです。

実はバーチャルリアリティの利用には身体の副作用が報告されています。

Digital Publich Healthのassignmentを書く過程でいくつか文献を読みましたが、完全没入型のバーチャルリアリティゲームには目の疲労・めまい・バランス感覚の不安定化などの副作用があります。

もともと身体の弱い高齢者などはバーチャルリアリティの利用にそれなりのリスクがあると思います。ヘッドセットを外した途端、転倒して骨折、なんてことも起こりうるわけです。

さらに長期的な副作用?は不明です。

まだまだ未成熟な技術ですが、それだけに、今後の発展が期待されますね。

Rosano et al. (2023). Increase in skeletal muscular adiposity and cognitive decline in a biracial cohort of older men and women.

異所性脂肪という言葉を聞いたことがありますか?

脂肪肝という言葉は耳にされたことがあると思います。肝臓や筋肉などに蓄積した脂肪のことを異所性脂肪といいます。

今回は筋肉の異所性脂肪が認知機能低下と関係しているという研究をご紹介します。

69歳から79歳の男女1634人を対象に行われた研究で、大腿部の筋肉間脂肪をCTで評価しました。認知機能は研究開始から1、3、5、8、10年目に評価されました。

大腿部の筋肉間脂肪面積は研究開始から6年目で4.85 cm2増加し、認知機能スコアは6年目から10年目までに3.20点下がっていました。この筋肉内の異常な脂肪蓄積は認知機能スコア3.60点の低下に相当していました。人種や性別による相互作用は見られませんでした。

筋肉内の脂肪組織の増加は、体全体の脂肪量や筋肉の質・量とは独立して認知機能の低下を予測できるようです。糖尿病や高血圧があってもこの関係は変わりませんでした。

高齢者全員にCT検査を行って筋肉内の脂肪量を評価するのは現実的ではありませんが、脂肪肝も含めて異所性脂肪と健康の関係は最近注目されている分野です。

内臓脂肪と同じように糖尿病、動脈硬化、心血管病(脳卒中や心臓病)のリスクであることが明らかになってきていて、体重やBMIだけでは分からないことが分かるようになってきました。

痩せている人でも隠れ脂肪肝が結構多いように感じます。

外見で分かるのは皮下脂肪ですが、皮下脂肪と内臓脂肪は別物で、それぞれ働きが異なります。

筋肉内に脂肪が蓄積すると筋肉の働き・質が悪くなります。

日ごろからよく体を動かして筋肉を使い、筋肉に脂肪がつかないようにしましょう。皮下脂肪は運動でなかなか減りませんが、内臓脂肪は運動で効果的に減らすことができます

この研究では太ももの筋肉を評価していましたが、足をよく使うことです。

やはり、スクワットと歩くことが王道なのです。


大学のサイバーセキュリティ

先日…University of Manchesterが大規模なサイバーアタックを受け、学生や大学職員の情報漏洩が起きたというとんでもない連絡が来ました。

まだ全容が明らかになっておらず、私の個人情報がどうなったか分かりません…。

「7テラバイト相当のあらゆる情報を盗んだ。大学関係者とこの件について議論したが、彼らは情報よりもお金が大切らしい。まもなくすべての情報が公にされることになるだろう。もしも大学関係者が適切な対応を取らなければ、学生たちの個人情報はブラックマーケットに売りさばかれるだろう」

という脅迫メールが大学院のメールアドレス宛に送られてきました。

一体どうなってるのでしょうか?

こんな経験は長い学生生活で始めてです。

BBCでもニュースになっているようです。

しっかりしてくれよ、University of Manchester。

大学からは結構頻繁に「この問題が一日でも早く解決するように全力を尽くしている、サポートの必要な学生は連絡をくれ」というメールが来ますが、早々に誰のどんな情報が盗まれたのかちゃんと調べてほしいものです。

大学が取った対応のひとつがExperianというデータ分析ツールの有料サービスを1年間使えるようにするというものでした。

As part of our cyber incident response, we are offering all taught students a free, 12-month subscription to Experian’s identity monitoring service.

このサービスでは私の個人情報は漏れていないという判定でしたが、不安は払しょくできません。

英国の国立大学のサイバーセキュリティレベルがどれくらいか全く分からないのですが、腐っても世界大学ランキング上位校なので、それなりのものが備えられていた、と信じたいところです。

日本ではお粗末なマイナンバーカードのセキュリティ問題が連日報道されていますが、つまり、完全無欠のサイバーセキュリティは不可能ということでしょう。

どのようなデジタルサービスを利用するにしてもサイバー攻撃によって個人情報が危険にさらされるリスクは織り込み済みと考えなくてはなりません。

利便性と安全性はトレードオフ関係なのか、両立できるのか

サービスを完全に信用せず、リスクを減らす努力を続ける、今のところこれしかない気がしますが、量子暗号とか実用化されたらサイバーセキュリティは劇的に良くなるのでしょうか。

技術的なことはほとんど理解できていないのですが、いたちごっこになる予感がします。