老化センシティブスポットって何?
老化に免疫グロブリン(IgG)の蓄積が関与しているそうです。診療では血液検査でIgG濃度を測定したり、特定のウイルスのIgG抗体価を見ることはありますが、組織に蓄積するIgGについては考えたことがありませんでした。
何やらすごそうな研究なので、内容をご紹介します。
——————————————————————————–
人間の体の構造は複雑で、細胞同士が協調して全体として機能していますが、加齢が細胞の空間的な秩序を崩すと体の機能が低下します。このような老化の仕組みを明らかにするために、細胞一個一個の特性や遺伝子発現を解析する方法があります(シングルセル転写解析)。
この中でも空間的に解像度の高い転写解析は、細胞の位置情報と遺伝子発現データを両方得ることができるため、組織レベルで老化メカニズムの解明ができるのではないかと期待されています。
この研究では、マウスの加齢組織を対象に空間的転写解析を行い、「老化センシティブスポット(SSS)」を空間的に特定し、その周辺に免疫グロブリン(特にIgG)を発現する細胞が目立つことを発見しました。
9つの臓器(海馬、脊髄、心臓、肺、肝臓、小腸、脾臓、リンパ節、精巣)を若いマウスと年老いたマウスから採取し、形態の変化を比較したところ、年老いたマウスでは炎症や線維化が多くの組織で進行しており、微小血管の密度や神経新生の減少も見られました。
老化した組織における秩序の乱れを「構造エントロピー(OSE)」という指標で定量化すると、老化したマウスの組織でOSEが上昇し、特に海馬や脾臓、リンパ節、肝臓で顕著であることが分かりました。これらの高OSE領域では、免疫細胞の増加と細胞の特性・個性の喪失が見られました。
また、マウスの年齢が高くなるにつれOSEが増加し、細胞の特性・個性が低下する傾向が見られました。脳(海馬、脊髄灰白質)、心筋細胞、肝臓では各組織ごとに老化関連遺伝子の発現が変化していました。老化関連遺伝子は、慢性炎症、ミトコンドリア機能障害、栄養センシング(細胞が自分と周囲の栄養状態を感知して、代謝や成長、免疫、老化などの生理的プロセスを調整する仕組み)の乱れと関連していました。
SSSの中心部では炎症が高まり、その周囲にはATP(生体エネルギー)合成や細胞周期関連遺伝子の発現が減少する傾向が見られました。
さらに、マウスだけでなく人間のリンパ節、肝臓、脾臓、脳でもIgGの蓄積が認められ、IgGの蓄積が老化のマーカーである可能性が示されています。IgGは老化促進因子として働くのかもしれません。加齢に伴うIgGの蓄積がマクロファージやミクログリア(脳内の特殊なマクロファージ)を老化させ、慢性炎症を起こし組織を老化させるようです。
IgGの蓄積を防ぐことがアンチエイジングの治療法になるかもしれないと結論付けられています。
——————————————————————————–
IgGには4つのサブタイプがありますが、どれなんでしょうか?論文中には示されていませんでしたが、IgG4関連疾患というIgG4が全身の臓器に蓄積して組織を硬くする病気があることを考えるとIgG4なのでしょうか?
普段読まない論文ですが、空間的に遺伝子発現をマッピングする技術があることを初めて知りました。
(論文はコチラ)
