PLOS ONEの取り組みについて考える

Fajzel et al. (2023). The global human day

地球上に住む約80億人の人間が1日をどのように過ごしているか?

世界銀行、ユニセフ、OECDなどの統計データを使って見積もりました。

Human Chronome Projectというプロジェクトの一つみたいです。

私とChatGPT先生の協同作業で結果を要約すると…。

睡眠と安静の時間は9.1 ± 0.4時間であり、1日の中で最も長い時間でした。

睡眠と安静以外の人間の生活、約15時間は次の3つのグループに要約できました。

一つ目は、外見を整える、身体の清潔さと健康を保つ、食事、学び、宗教活動などが含まれる活動で9.4時間に当たりました。そのうち、約6時間半が受動的・対話的・社会的な活動で、読書、テレビを見ること、ゲームをすること、散歩に行くこと、社交活動、何もせずに座っていることなどを含み、社会的な活動は平均して4.6 ± 0.3時間、起きている時間の約31%を占めていました。

二つ目は、自然環境からの材料収集やエネルギーの生産、食料の生産、インフラの整備、住居の清掃など外部環境に関する活動で、3.4時間を占めていました。

三つ目は、法律や政治システム、金融、警察、ショッピングなどに関する活動で2.1時間を占めていました。

仕事や家の中で行う報酬のない労働を含む経済活動は、1日あたり約2.6時間(158分)を占め、睡眠時間を除いた人生の6分の1でした。これは15歳から64歳までの人々における週41時間の労働時間に相当します。

世界の経済活動において、3分の1が食料の生産と収集(44 ± 3分)に関わるものでした。

また、4分の1(37 ± 2分)は小売業、卸売業、不動産、保険、金融、法律、政治などに関連していました。

製造業(車両、機械、電子機器、家庭用電化製品など、およびそれらの部品)が経済活動の7分の1を占めていました(22 ± 2分)。経済活動における残りの時間は、建築業、輸送業、食品加工、学校教育と研究などに割り当てられていました。

食料の生産と収集にかかる時間が低所得国では大きい(>1.0時間)が、高所得国では非常に小さい(<5分)ことが分かりました。

一方、食事の準備(0.9 ± 0.1時間)、人間の移動・輸送(0.9 ± 0.2時間)、衛生と身だしなみ(1.1 ± 0.2時間)、食事(1.6 ± 0.2時間)にかける時間は、国民一人当たりGDPの違いと関連がありませんでした。これらの所得・経済レベルに依存しない活動は、起きている時間の4.5 ± 0.4時間、30%を占めていました。

特に人間の移動・輸送に費やされる時間は国によらず比較的一定であり、人口レベルでは旅行時間に対して物質的な貧富がほとんど影響を与えないことが示されました。

睡眠時間が9時間以上とやたら長いのは子どもの睡眠時間や眠らずにただ安静にしている時間も含まれているからのようです。

睡眠時間とほぼ同じくらいの時間を自分の身だしなみや学びなど社会活動に使っているというのはちょっと意外でした。これも子どもから老人まで様々な年齢層をひとまとめにして評価しているからかな、と思いましたが、本文中に

“We assessed the full human lifespan by weighting population-specific time use estimates using age-structured demographic data.”

とあり、Methodsで年齢によるデータ不足や年齢によって行う活動の違いを考慮したと書かれているので、調整されているようです。

仕事をしている時間が1日のうち2.6時間とかなり短い印象ですが、休日や休憩もすべて含めて平均化するとこんなものなのでしょうか。労働人口では週41時間ということなので日本の平均労働時間とほぼ一緒ですね。

高所得国と低所得国とで分けて論じられているように、国によってどのような経済活動に時間が割かれているかだいぶ異なりますが、人間は経済活動時間の3分の1を食料生産に割いています。

食べなければ生きていけないので当然ですが、農業がいかに大切か分かります。

総じて、人間は睡眠と(労働以外の)社会活動に多くの時間を使っているようです。

当たり前といえば当たり前の結果ですが、”世界の今”を横断的に調べた点が面白いですね(論文は以下のリンクから読めます)。

The global human day

Tamura et al. (2023). Dietary carbohydrate and fat intakes and risk of mortality in the Japanese population: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study

糖質制限食の健康効果について侃侃諤諤の議論が始まり久しいですが、糖質制限した方が長生きするのかそれとも糖質制限しない方が長生きするのかはまだ明らかではありません。

糖尿病患者さんの治療において、血糖値を適正な値に下げ、合併症の進行を防ぎ、天寿を全うすることが大目標なので、血糖値を上げない糖質制限食の長生き効果はとても気になるところです。

過ぎたるは猶及ばざるが如し、と昔から言われるように、糖質制限もほどほどが良いのではないかというのが私の考えですが、糖質制限食と死亡の関係について一石を投じる研究が日本から発表されました。

以下にAbstractをChatGPT先生に訳してもらい私が修正したものを載せます。コメントはその下に書きます。

背景
過去のコホート研究では、食事中の炭水化物・脂質摂取量と死亡リスクとの関連について、相反する結果が見られる。

目的
炭水化物と脂質摂取量と死亡率との長期的な関連を調べた。

方法
このコホート研究では、34,893人の男性と46,440人の女性(年齢35〜69歳、平均BMIはそれぞれ23.7および22.2 kg/m2)が、2004年から2014年にかけて行われたベースラインの調査から2017年または2018年の終わりまで追跡された。炭水化物、脂質、および総エネルギー摂取量は、食事頻度調査票(FFQ)を使用して推定された。炭水化物と脂質のエネルギー摂取量に基づいて、死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が推定された。

結果
平均8.9年の追跡期間中に、2,783人(男性1,838人、女性945人)が死亡した。炭水化物によるエネルギー摂取の占める割合が50%から55%の男性と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が<40%の男性は全死亡のリスクが有意に高かった(HR:1.59、95%CI:1.19〜2.12、P-trend = 0.002)。追跡期間が5年以上の女性の中では、炭水化物摂取量が多い女性は全死亡のリスクが高かった。炭水化物によるエネルギー摂取が50%から<55%と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が≥65%の場合、HR(95%CI)は1.71(0.93〜3.13)であった(P-trend = 0.005)。脂質摂取量が高い男性はがんによる死亡のリスクが高かった。脂質によるエネルギー摂取が20%から<25%と比較すると、脂質によるエネルギー摂取が≥35%の場合、HR(95%CI)は1.79(1.11〜2.90)であり、(P-trend = 0.054および0.058)。脂質摂取量は女性において全死亡およびがん死亡のリスクと逆相関する傾向がみられた(P-trend = 0.054および0.058)。

結論
男性の低炭水化物摂取と女性の高炭水化物摂取は、死亡と関連することが示された。炭水化物摂取量が比較的高い日本の成人女性の間では、脂質摂取量が高いと死亡リスクが低い可能性がある。

著者らも研究の限界で述べているように、FFQでの食事調査はベースラインのみで追跡期間中には再評価されていません。例えば、途中で糖尿病など生活習慣病を発症したり、仕事が変わったり、家族が亡くなって食生活が変わることだってあるわけです。これは大きなlimitationでしょう。

また、FFQは妥当性の高い質問紙票とは言え、主観的データですしバイアスが入るのはどうしようもありません。人間の食事摂取を正しく評価するのは難しく、このような研究の本質的な問題ですが、AIなんかによって何とかならないでしょうか?

私が疑問に思ったのは、なぜ炭水化物と脂質だけ評価して三大栄養素のもう一つタンパク質は評価しなかったのか?という点ですね。

最近、高齢者はもっとタンパク質を摂った方が良いなどと議論されていますし、タンパク質摂取量も調べて三大栄養素バランスを見て検証するべきだと思います。

炭水化物摂取量と死亡との関係で男女差があるのは謎ですね…。

多くの被験者を比較的長い期間追跡して調べた興味深い研究だと思います。

日本の大切なデータとして紹介させていただきました。

Thanarajah et al. (2023). Habitual daily intake of a sweet and fatty snack modulates reward processing in humans

健康な人49名を対象とした無作為化比較試験です。

高糖質・高脂肪食を食べると、もっと高糖質・高脂肪食を食べたくなる一方、低糖質・低脂肪食を食べた人と比べて体重は変わらなかったという結果。

要旨:脂肪と糖分が多い西洋式の食生活は、過剰なカロリー摂取や体重増加を促進するが、その基本的なメカニズムは不明である。肥満と脳ドーパミン機能の変化の関連については多くの報告があるが、これらの変化が(1) 肥満にもともと存在し体重増加への感受性を高めるのか、(2) 肥満の副次的な結果であるのか、または、(3) 西洋式の食生活を続けることで直接引き起こされるのか、はっきり分かっていない。

このメカニズムを調べるため、正常体重の健康な被験者を対象に、通常の食生活に加えて、高糖質・高脂肪のスナックか低糖質・低脂肪のスナックを8週間食べてもらい、体重や低糖質・低脂肪あるいは高糖質・高脂肪の飲み物に対する欲求がどのように変化するか無作為化比較試験(NCT05574660)を実施した。

高脂肪・高糖質の食事は、低脂肪食品への欲求を減らし、食べ物の学習に関連する脳の反応を増加させた。これらの変化は体重や代謝パラメーターの変化とは独立していたため、高糖質・高脂肪の食事を繰り返し摂ることが食欲増進や体重増加のリスクを高める脳の反応に直接影響を与えることを示している。

ファストフードやソフトドリンクを摂るとまた摂りたくなるということです。

低糖質・低脂肪食を食べると高糖質・高脂肪食に対する食欲が減るわけではなさそうなので、健康に良い低糖質・低脂肪食を推奨するというよりも、いかに高糖質・高脂肪食を繰り返し食べないようにするかが重要のようです。

仮にすでに肥満の人や糖尿病患者さんが高糖質・高脂肪食を食べたら、どんどん太って病状が悪化しまうでしょう。

健康な人は代謝の働きが良いのですぐに太ることはなさそうですが、ファストフードやソフトドリンクはごくたまに、にした方が良さそうですね(きっとその方が美味しく感じます)。

研究の再現性

少し古い話ですが、Natureの調査によると50%以上の研究者が研究結果の再現性に危機感を抱いているということが分かりました。

インパクトの大きい研究結果は注目されやすいですが、目新しい研究の再現性は決して高くなく(概ね50%未満)、必ずしも普遍的な「真実」とは言えないようです。

人間が行う研究には様々なバイアスが入ってしまいます。

世に出て注目される研究は、ほとんどすべてが”ポジティブな”研究結果です。研究計画で定めたアウトカムに有意な結果が出なかった場合、多くの研究は論文として出版されることはありません(出版バイアス)。

本当は”ネガティブな”結果が真であるにもかかわらず、バイアスのかかった”ポジティブな”結果ばかりがエビデンスとして発表されてしまう、こともあるわけです。

上の図は有名なエビデンスレベルピラミッドですが(出典:日本先進医療臨床研究会のページhttps://jscsf.org/therapeutic-material)、一番エビデンスレベルが高いとされるシステマティックレビュー・メタアナリシスであっても、バイアスとは無縁ではありません。

最近ではこのエビデンスレベルピラミッドは古い概念となりつつありますが、バイアスの少ない研究が信頼性が高いということは間違いありません。

どうしたらバイアスがなく再現性の高い研究を行えるのでしょうか。

研究の質を高めるガイドラインはいくつかあり、論文を発表する際にそれに準拠していることが求められる学術誌もありますが、あくまでも自己申告であり客観的評価が難しい。

人間が行った実験・研究を人間が評価すること自体に限界があるのかもしれません。

Frontiersという出版社(一時期Beall’s Listに載りハゲタカ雑誌と揶揄されましたが、少なくとも現在はそれなりにきちんとした学術誌になっています)は投稿された論文の初期評価をAIが行っているようです。

剽窃・盗用がないか、英語は正しく使われているか、重複出版ではないか、倫理的に問題のある研究ではないか、など自動的に判定されますが、今後はこのようなAIによる研究の質の評価を積極的に行う必要があるでしょう。

一定の基準を満たさない研究は査読に回らないようにすれば、論文の質もある程度向上すると思います。

研究の再現性についてもAIが判定してくれたら良いのですが、そのためには人間が再現実験を複数回行い、そのデータをAIが学ぶ必要があります。

研究の再現性の問題はまだまだ研究者たちを悩ませることになりそうです。