Correa-Burrows et al. (2024). “Sleep patterns and risk of chronic disease as measured by long-term monitoring with commercial wearable devices in the All of Us Research Program”

睡眠トラッカーを毎晩着けている人、いますか?(私は睡眠トラッカーではないけど、ポケモンスリープを使っています)

当たり前のようにスマートウォッチで睡眠を記録する時代になりました。でもあのデータ、実際の病気の予防にどこまで役立つのだろうか。

Nature Medicineに発表されたCorrea-Burrowsらの研究は、6785人のウェアラブルデバイスによる客観的な睡眠データを中央値4.5年間追跡し、電子カルテと連携させた大規模研究です。

これまでの睡眠と健康に関する研究の多くは、「昨夜何時間寝ましたか?」という自己申告でーたに頼っていました。当然、記憶は曖昧ですし、バイアスのせいで実際より長く答えてしまう人もいます。

この研究が画期的なのは、商用のウェアラブルデバイスで実際に測定された客観的データを使っている点です。しかも4.5年という長期間。これはかなりの規模ですね。

研究では睡眠の様々な側面を詳細に分析しています。単純な睡眠時間だけでなく、睡眠ステージ(レム睡眠、深い睡眠など)、睡眠の規則性まで含めて検討しています。

そして電子カルテとのデータ照合により、肥満、心房細動(不整脈の一種)、うつ病などの慢性疾患の発症との関連を調べました。

睡眠パターンの乱れは確実に慢性疾患のリスクを高めていました。ただし、どの疾患にどの睡眠要素が最も影響するかは微妙に異なっていました。

外来で診療していると、「夜更かしが止められない」「眠りが浅い」「夜中に目が覚める」と訴える患者さんは本当に多いです。特に糖尿病や高血圧の方々には睡眠の質の悪さを感じている人が少なくないです。睡眠はライフスタイル医学の6つの柱の一つであり、食事や運動と同等に大切な健康ファクターです。

この研究の意義は、客観的データで睡眠と病気の関係を長期間追跡できたことにあります。これまで「睡眠は大事」と言われてきたが、それが数値として、しかも日常的に使われているデバイスのデータで証明されました。

一方、ウェアラブルデバイスを継続的に使う人々は、そもそも健康意識が高い集団ではないだろうか、という疑問がわきます。本当に睡眠習慣が乱れがちな人ほど、こうしたデバイスから縁遠い可能性があります。

また、睡眠の乱れが病気を引き起こすのか、それとも病気の前兆として睡眠が乱れるのか。この研究は相関関係は示していますが、因果関係は分かりません。

それでも、4.5年間という長期追跡によって得られた知見の価値は大きい。特に心房細動のような不整脈と睡眠パターンの関連は、日常診療でも注意深く観察したい点ですね。

私自身、睡眠時間の確保は大きな課題です。どちらかというとショートスリーパーなので、深く長く眠りたいという欲求が常にありまっす。この研究を読んで、睡眠の「量」だけでなく「質」や「規則性」にも目を向ける必要があると改めて感じました。

ウェアラブルデバイスが単なる歩数計から、実際の疾患予防ツールとして機能する可能性をこの研究は示しています。技術の進歩によって、予防医学の在り方も確実に変わりつつありますね。

ただし、デバイスのデータに頼りすぎるのも考えものです。数字に一喜一憂するより、「昨日はよく眠れたな」「今日は体調がいいな」という身体の声に耳を傾けることも忘れてはいけないでしょう。人間の直観はなかなか優れたものです。

睡眠は人生の約3分の1を占めます。その質が残りの3分の2の人生を大きく左右するとすれば、もっと睡眠を大切にするべきではないでしょうか。

(論文はこちらから読めます)