COVID-19に関する”デマ”の拡散に医師が加担していたーという内容の論文です。
今回は論文の内容については簡潔に、COVID-19に関する情報の問題点について考えてみたいと思います。
SNS(Twitter、Facebook、Instagram、Parler、YouTube)、The New York Times、National Public Radioをソースに「誤情報」を発信した医師について解析された。
52人の米国医師が「誤情報」を発信しており、最も利用されたSNSはTwitter(現X)で、37人(71.2%)が投稿していた。フォロワー数の中央値は6万7,400人だった。
「誤情報」は次の4つであった。
- ワクチンは安全ではない。感染予防等に効果がない。
- 政府や製薬企業が嘘をついている。ウイルスの起源は自然発生ではない、などの陰謀論。
- イベルメクチンやヒドロキシクロロキンはCOVID-19の治療に有効である。
- マスクやソーシャルディスタンスはCOVID-19パンデミックに有効でない。
米国の医師がソーシャルメディアで広めた「誤情報」がCOVID-19パンデミック中に多くの人々に伝わり、”infodemic”に貢献してしまっていることが示唆された。
医師を含め医療従事者は社会的責任が大きく、人々の信頼を失わないようにするためにも高い倫理が求められている。
という内容です。
確かに、特にX上では、COVID-19に関しては様々な情報や憶測が飛び交っています。
私は、厚生労働省・政府および「権威のある」医師・研究者の情報と、一般的に”陰謀論”とされる情報と両方見てきましたが、この論文が主張するようにすべてを”デマ”や”陰謀論”と断定してしまって良いのかちょっと疑問に思っています。
まず、ワクチンの有効性についてですが、臨床試験では極めて大きな感染予防効果と重症化抑制効果がありました。
ワクチンが世に出たときはこれで集団免疫獲得も可能かも、と期待されましたが、リアルワールドでは臨床試験の結果ほどの効果はなく、ウイルスの変異スピードも速くて、数か月に1回ワクチンを打ち続けるというおかしな事態になってしまいました。
例えば、麻疹(はしか)のワクチンは1回の接種で終生免疫に近い効果があり、これぞワクチンという感じなのですが、残念ながら現在のコロナワクチンは効果の持続性に関してはポンコツと言わざるを得ません。mRNAワクチンはまだ技術改良が必要でしょう。
また、コロナウイルス感染症は致死率・重症化率ともにインフルエンザ並みになったため5類感染症指定に変わったわけで、絶対にワクチンを打ち続けて予防しなくてはならない感染症ではもはやありません(勧奨接種の対象者も高齢者と基礎疾患のある人のみです)。
それから、ワクチンの副作用についてもいろいろ言われています。
重篤な副作用も多く、残念ながらワクチンが原因で亡くなった方もいらっしゃいます。
臨床試験では問題となる副作用がなく市場に出たわけですが、そもそも臨床試験(ランダム化比較試験)は副作用を検出するのに適したデザインではありません。
副作用を十分に調べるためにはリアルワールドで時間をかけて観察研究を行う必要があります。
ある意味、思っていたより副作用が多いというのは当たり前の話で、少なくとも副作用という観点からするとこのワクチンをヒトに使ったのは早すぎたかもしれないと考えています(致死率・重症化率が高くクリティカルな感染症への対応であるならば仕方がない)。
世界中で何億人もの人々に接種しているので、副作用報告が増えるのも当然でしょう。
当初、政府やワクチン担当大臣が言っていたような、副作用の心配のない絶大な効果のあるワクチン、というわけではなかったのです。この点については反省すべきです。
次に、マスクやソーシャルディスタンス(ロックダウンなど)の有効性についてです。
これらについてはかなり多くの研究結果が発表されていて、肯定的な論文もあれば否定的な論文もあります。
また、感染症には有効だけど子どもの発育に悪いとか、マスクやソーシャルディスタンスによるストレスがメンタルに悪影響を及ぼすとか、視点を変えると違った結果も見えます。
研究のセッティングによって結果は変わるので、白か黒かのクリアな結論を出すのは難しいですが、X上の言論を見る限り、議論は網羅的ではなく自分の立場を補強するエビデンスを使ってお互いに主張し合っているようにしか見えません。
ソーシャルメディアの情報の中には”陰謀論”と呼ばれるもの科学的にあり得ないトンデモ情報があるのは確かです。
気を付けなくてはならないのは、情報の背後にイデオロギーや情報発信者の利益になるような何かが隠れていないかよく見ることです。イデオロギーのために自分の利益のために平気で嘘をつく人がいますから。
どんな情報も鵜吞みにせず、自分で調べて自分の頭で考えることが大切ですね(それで陰謀(権威側と”陰謀論”側、どっちが陰謀?)に巻き込まれてしまう?なら仕方がない)。
