腸内細菌叢と認知機能障害の関連について調べたRCTです.
例によってAbstractの日本語訳です。
背景:加齢により、腸内細菌叢が変化し認知機能が低下する。サイコバイオティクスは、精神的健康に寄与し、老化した脳を保護することができる腸内細菌叢をターゲットとした介入方法である。
本研究では、軽度認知機能障害(MCI)の基準を満たした中高年者の腸内細菌叢と予測される腸内細菌の機能的経路を、健康な人と比較し、Lactobacillus rhamnosus GG(LGG)によるプロバイオティクスの影響を、プラセボ対照の二重盲検無作為化比較臨床試験で検討した。
地域在住の中年(52~59歳)および高齢者(60~75歳)計169人が3カ月間の介入を受け、プロバイオティクス群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。参加者は認知機能が正常なグループと軽度認知機能障害のあるグループに分けられ、ベースラインとプロバイオティクス後のサンプルが収集された。
結果:マイクロバイオーム解析により、Prevotella ruminicola、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides xylanisolvensがMCIと関連する菌群として同定された。MCIのある被験者では認知機能が正常の被験者と比較して、Prevotellaが有意に多く存在することが確認された(ALDEx2 P = 0.0017, ANCOM-BC P = 0.0004).MCI群におけるLGG補給に伴うPrevotellaおよびDehalobacterium属の減少は、認知機能スコアの改善と相関していた。
結論:中高年者における認知パフォーマンスと関連する腸内細菌群を特定した。この結果に再現性があれば、これらの細菌群はMCIの重要な初期指標として用いられるだろう。プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスによって腸内細菌叢を修正できる可能性があり、加齢による認知機能障害の進行を和らげることができるかもしれない。
いわゆる、”腸脳相関”に関するエビデンスです。
昨年「ヤクルト1000」が売れましたが、ストレスを減らし睡眠を改善させるという謳い文句も、この”腸脳相関”が根拠になっています。
人体はひとつの”生態系”であり、各器官・組織が相互に作用しバランスを取っているという考えは古くからありますが、最近になって科学的に証明されるようになりました。
腸内細菌の研究は今後も楽しみですね。
