東京都市大学の先生が興味深い論文を発表されました。
過疎化と生物多様性の関係を調べた研究で、人間による都市化が自然環境を壊すという安直な想定を崩す結果が見られました。
この研究は、人口減少が進む日本の里山・農地・市街地周辺地域で生物多様性が自動的に回復するのかを検証した、全国規模の実証研究である。
著者らは2004〜2021年に全国158サイトを継続的に調査し、鳥・チョウ・ホタル・カエル卵塊464種と植物2,922種、計150万個体超のデータを人口・土地利用・気温と統合解析した。
1995〜2020年の人口動態は、減少41 %、増加27 %、横ばい32 %であった。
人口の増減を問わず多くの分類群で個体数の減少が続いていた。
鳥類では82サイト中29サイト(35 %)で個体数が減り、増加は12サイト(15 %)だけであった。ゲンジボタルは58 %のサイトで減少し、チョウや日本アカガエルも同様の傾向を示した。
人口減少地域では在来動植物の減少傾向が人口動態が安定している地域より急で、唯一、非在来植物だけが35 %のサイトで増加した。土地利用を見ると、人口が減っても73 %のサイトで都市域が拡大し、農地は48〜93 %で縮小、森林面積はほぼ横ばいだった。
著者らは日本を北東アジアで最初に人口減少へ転じた「デポピュレーション・ヴァンガード国」と位置づけ、水田系景観をもつ中国東北部や韓国でも同様の影響が懸念されると指摘する。
里地・里山は伝統的な農林管理という適度な人間の手による介入に依存してきたため、人口減少は管理放棄・農業集約化・都市用途への転換という3方向で生物種の住みかを縮小させ、生物多様性をさらに縮小させる。そのため「人が減れば自然が戻る」という受動的な野生の回復は機能せず、能動的な生息地管理と長期モニタリングを組み合わせた戦略が不可欠と考えられる。
結論として、「人口減少=生態系回復」という楽観論を退け、人口減少社会に適合した保全・再生政策の設計と、野生生物に優しい生業の維持が急務と言える。人口減少が進む世界85か国にとって、生物多様性を保つためには、そこに人口動態の変化を組み込む戦略が必要である。
(画像は論文のFigure 1です。全文はコチラから読めます)
地球上すべての地域に当てはまる結果ではありませんが、少なくとも日本においては、人間が減る地域は生物多様性も失われやすい、と言えるかもしれません。
人間も生態系の一員であり、自然を破壊することもあれば創造することもある。
昨今の地球温暖化の議論においても感じることですが、人間中心主義的な考え方はやや傲慢です。
人類が地球上で生き延びていくためには、自分たちのことをホリスティックに捉える視点が必要でしょう。
