すい臓がんは極めて予後の悪いがんですが、症状が現れにくく、残念ながら気づいたときにはもう手遅れ、ということがあります。
がんの治療は進歩しているとはいえ、発見が遅れると手の施しようがなくなります。やはり、「がんは予防する」という観点を持つことが重要だと思います。がん発症の最大のリスク因子は加齢・老化ですから。
病気を予防するためには食事や運動などのライフスタイルを整えることです。
すい臓がんは飲酒量が増えれば増えるほど発症しやすくなる、と分かっていてもお酒が好きな私は飲酒をやめられません…。では、一体どれくらい発症リスクが高くなるのか。食事とすい臓がんの発症リスクについて調べたアンブレラレビュー(複数のシステマティックレビューをまとめて解析する方法)があったのでご紹介します。
世界的にすい臓がんによる死亡者数は増加していて、2025年にはヨーロッパで3番目、2030年にはアメリカで2番目の主要な死因になると予測されているそうです。遺伝的要因は10%未満であり、90%以上は環境要因や生活習慣に関連しています。確立したリスク因子として、喫煙、肥満、糖尿病がありますが、食事の影響については明確な結論が出ていません。ということで、すい臓がんのリスクと食事の関係をについて、システマティックレビュー・メタアナリシスの統合解析で調べました。
PubMed、EMBASE、Web of Science、Scopus、Cochrane Database of Systematic Reviews、CINAHLといったデータベースに収載されている2022年6月3日までの研究を検索しました。ランダム化比較試験(RCT)と前向き観察研究のみを組み入れて、かなり緻密な方法で解析しています。
41件のメタアナリシス(全部で384の研究を含む)、59の食事因子とすい臓がんリスクの関連 を解析したところ、以下の5つの因子について統計学的に有意な関係が見られました。
- 果糖(フルクトース)摂取(RR: 1.22, 95% CI: 1.09–1.37, P = 0.0008)
- 果糖を摂りすぎるとリスクが22%増加。
- 赤肉摂取(RR: 1.14, 95% CI: 1.01–1.28, P = 0.03)
- 赤身の肉をたくさん食べる人はリスクが14%増加。
- 大量飲酒(RR: 1.15, 95% CI: 1.04–1.27, P = 0.005)
- 大量飲酒者のリスクは15%増加。
- ナッツ摂取(RR: 0.89, 95% CI: 0.82–0.97, P = 0.01)
- ナッツをたくさん食べるとリスクは11%低下。
- 地中海式食事(RR: 0.87, 95% CI: 0.80–0.96, P = 0.004)
- 地中海式の食事を摂っているとリスクは13%低下。
果糖摂取 のみが「示唆的証拠(suggestive evidence)」レベルであり、他の4つは「弱い証拠(weak evidence)」でした。つまり、飲酒はリスクがありそうだけどはっきりと断定はできない。
- 果糖摂取: インスリン抵抗性の増加や肥満を通じてすい臓がんリスクを高める可能性があります。
- 赤肉: 加熱調理による発がん物質の生成、ヘム鉄の酸化ストレス増加、インスリン抵抗性の悪化が原因と考えられます。
- 大量飲酒: アセトアルデヒドの発がん作用、慢性膵炎の誘発、酸化ストレスの増加などによるものと推測されます。
この結果を受けて、飲酒の影響が意外と小さいと感じるのは私だけでしょうか?(お酒を飲むときは必ず低糖質ナッツをつまみに食べるので、プラスマイナスリスク0でないだろうか…そんなわけないけど)
果物は体に良いと考えている方は、食べ過ぎるとすい臓がんの発症リスクが上がるという結果に驚かれるかもしれません。
飲酒は少量であっても体に悪いというのが最近のコンセンサスです。すい臓がん以外の複数のがんの発症リスクを上げますし、脳にもよくありません。
ですが、分かっていてもやめられないので悩ましいものです。
