糖尿病、がん、心血管疾患などの非感染性疾患(NCDs)の予防と治療にはライフスタイルの改善が不可欠ですが、患者さんに行動変容を促し実際に生活を変えてもらうのは簡単ではありません。
また、対面の指導には時間とコストがかかるため、効率かつ効果的に行動変容を促す介入方法として最近ではDigital Health Interventions(DHIs)が活用されています。
DHIsはスマホアプリ、ウェブベースのプラットフォーム、テキストメッセージ、ウェアラブルデバイスなどを活用し、行動変容をサポートしますが、DHIsのどの要素が効果的なのか検証するため過去のシステマティックレビューを包括的にレビューした研究が発表されました。
まず、DHIが患者さんの治療において有効だった病気は、心血管疾患、2型糖尿病、がん、喘息でした。
DHIによって身体活動量が増え、座わりっぱなしの生活が減り、食生活が改善され、体重管理がうまくいき、きちんと薬を飲むようになり、タバコ・お酒が減りました。
めちゃくちゃ良さそうです。
例えば、2型糖尿病の治療において、DHIを使った介入群では対照群と比較してHbA1cが平均−0.38%下がり、心血管疾患の患者さんにおいては、DHIにより収縮期血圧が−3.78 mmHg、拡張期血圧が−1.57 mmHgさがりました。
具体的な数値を見ると少し残念な結果ですね…。
効果的に行動変容を促すためには次の8つのポイントが重要のようです。
・信頼できる情報源(Credible source)
医療従事者や専門家が介入に関わることで、情報の信頼性が高まり、行動変容の成功率が向上する。医師が関与するDHIでは、きちんと薬を飲む習慣や健康に良い習慣を継続する可能性が向上した。
・社会的支援(Social support)
家族、友人、オンラインコミュニティによるサポートが重要である。特に、肥満管理や禁煙支援プログラムにおいて、社会的サポートを組み込んだDHIの成功率が高かった。
・定期的な通知(Prompts and cues)
スマートフォンの通知やリマインダーが、運動や薬をしっかり飲む習慣の継続を成功させることが示された。
・段階的な目標設定(Graded tasks)
目標を段階的に設定し、小さな達成を積み重ねることでモチベーションを維持できる。特に運動介入において、「1日500歩増やす」などの具体的な目標が効果的であることが示された。
・自己モニタリング(Self-monitoring)
ウェアラブルデバイスやアプリを活用し、健康指標(歩数、血糖値、食事記録など)を記録することが、行動変容につながった。例えば、体重管理アプリを用いた研究では、自己モニタリングを行ったグループの方が体重が減った。
・フィードバックとモニタリング(Feedback and monitoring)
アプリやデバイスを通じて、進捗状況に応じたフィードバックを提供することが重要である。特に、血糖値のリアルタイムフィードバックを行うDHIでは、患者の自己管理能力が向上した。
・人間のコーチング(Human coaching)
AIベースのチャットボットよりも、実際の人間がコーチングを行うDHIの方が、行動変容の成功率が高いことが示された。特に、定期的なオンライン面談やテキストメッセージによるフォローアップが効果的であった。
・パーソナライズ(Tailoring or personalization)
個人の状況に応じたカスタマイズが効果を高める。例えば、糖尿病管理アプリでは、個人の血糖値や食事記録に基づいたアドバイスを提供することで、より血糖値が下がった。
特に目新しい結果はありませんが、デジタル技術であっても「人間」「コミュニティー」「個別化」といったアナログ要素のインパクトが大きいようです。
DHIは便利なツールですがDHIの効果を最大化するためには、患者さん、その家族や友人、担当する医療従事者がどれくらい積極的に治療に関わるかが鍵です。
(拙著“Patient Experience in Older Adults with Diabetes: A Narrative Review on Interventions to Improve Patient Experience and Research Gaps”も似た結論になりました)
患者さんのアウトカムを良くするためには結局コストがかかる部分が大切ということ。DHIsは時間的・経済的コストを抑えることを目的としたツールですので、コスト分析が必要ですがこの論文ではそこまでやっていません。DHIsがアナログ要素を補完するレベルにまで洗練されるかどうか。
デジタル時代の行動変容に関して興味深い論文として紹介いたしました。
(論文はこちら)
