帯状疱疹という病気をご存知でしょうか?
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染が原因で、神経の分布に沿って皮疹(ぶつぶつ)ができる病気ですが、しばしば痛みを伴い、ぶつぶつが治った後も神経痛を起こすことがあり厄介な病気です。
2020年1月にシングリックスという新しいワクチンが発売されました。第Ⅲ相臨床試験では50歳以上の帯状疱疹にかかったことのない人にワクチンを接種したところ、プラセボと比べて発症予防率97.2%という驚異的な結果でした[N Engl J Med. 2015;372(22):2087-2096.]。
でも、帯状疱疹は命に関わる病気じゃないから、20,000円のワクチンはちょっと高いなあと思っていたのですが、私の勉強不足でした。
ワクチンの有効性にばかり目がいっていたのですが、発売後の研究で帯状疱疹にかかった人は30日以内に脳卒中を発症するリスクが1.93倍になるということが報告されました(後ろ向き解析)[Clin Infect Dis. 2023;76(3):e1335-e1340.]。
帯状疱疹と脳卒中の関係性がよく分からなかったので調べてみると、以前からVZVの感染が脳の動脈に血管炎を起こすことが報告されていたようです[Curr Neurol Neurosci Rep. 2015;15(4):16.]。
そうなると帯状疱疹はちょっと痛いただのぶつぶつではなくなります。場合によっては怖い感染症になるのかもしれません。
帯状疱疹ワクチンを打った方がいいのか?とときどき聞かれますが、健康な人と比べるとすでに動脈硬化があって脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高い人は、打った方が良いと言えます。ちなみに、帯状疱疹にかかったことがある人がワクチンを打って再発を予防できるかどうかについては十分なデータがありません。
ワクチンを打ったら帯状疱疹を予防できて、脳卒中のリスクも下がるわけでは決してないのでご注意ください。
コロナワクチンは副作用の面でいろいろ物議をかもしたワクチンでしたが…予防を超えた観点から病気を眺めると、ワクチンに対する印象もちょっと変わりそうです。
