古くからケトン食—糖質量を抑えて体の中にケトン体を作る食事、例えば高度の糖質制限食やアトキンスダイエットなど―の健康効果は議論されてきました。
日本では小児のてんかんに対する食事療法としてケトン食が認められています。
最近では古川健司先生という方ががんの食事療法としてケトン食を研究されており、さらに議論を呼ぶ形となっていますが、ケトン体が心臓血管代謝系に本当に良い効果があるのか総説論文が出ていましたのでご紹介したいと思います。
アブストラクトの日本語訳です。
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β-ヒドロキシ酪酸(βOHB)は体内の主なケトンであり、代謝エネルギー源および重要なシグナル分子として認識されている。
ケトンの酸化は、長時間の絶食/飢餓中に脳で不可欠であるが、骨格筋や心臓などの他の臓器も代謝基質としてケトンを利用している。さらに、心臓および骨格筋細胞においてβOHBによる代謝とシグナル(情報)伝達を介して、ケトンは骨格筋の健康および心機能の向上に寄与する可能性がある。
潜在的に肥満、2型糖尿病、心血管疾患などがあると、ケトンをATP(体のエネルギー源)の生産や情報伝達分子として使用する際に変化が起こり、そのような変化が心臓代謝疾患に影響を与える可能性がある。
心臓代謝疾患において、血液中のケトンを上昇させるためにさまざまな変化が起こり、ケトン代謝またはケトンによる情報伝達のいずれかが改善される。これらの変化には、代謝の改善、体重減少、血糖コントロールの改善、心臓および血管機能の改善、炎症および酸化ストレスの低下など、幅広い利点がある。
本論文では、これらのエビデンスを提示し、ケトン療法が心臓および骨格筋に良い影響があり心臓代謝疾患の治療に使用できるアプローチである可能性を示す。
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ケトン食は万能ではありません。
体にとって必要なエネルギーを摂ろうとするとどうしても高脂肪食になってしまうため、高コレステロール血症やそれに伴う血管病を起こす可能性もあります。
ただ、代謝が良くなるのは確かなようですので、論文にもあるように肥満や糖尿病に対しては良い効果があると思われます。
しかし、学会等が推奨している食事療法ではありません。
ここからは個人的な意見となりますが、ケトン食が適用できない人、例えば先天的に脂肪酸の代謝機能に異常がある人を除けば、肥満や糖尿病患者さんに対してトライしてみていい治療法ではないでしょうか。
継続できるかが問題です。糖質量が極めて少なくなりますから、まあ美味しくないかもしれません…
がん細胞が正常細胞の何十倍ものブドウ糖を消費するということを考えると、がんに対する効果も期待されます。ただ、がんの種類にもよるのではないでしょうか。
残念ながら全文はフリーで読めませんが、論文はコチラです。
