ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide: NMN)をご存知でしょうか?
アンチエイジング効果のあるNMNに関するRCT(無作為化比較試験)です。1st authorと2nd authorの名前が日本人ですが、慶応義塾大学のYoshino先生がcorresponding authorのようです。
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げっ歯類では、肥満と加齢はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の生合成が減り、代謝機能を低下する。ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の利用可能性は、哺乳動物のNAD+生合成における律速因子である。
本研究では、更年期後の肥満または過体重の糖尿病予備群の女性を対象に、10週間の無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験を行い、NMN補充が代謝機能に与える影響を評価した。
インスリン刺激によるグルコースの利用状態は、高インスリン正常血糖クランプ法を使用して評価した。骨格筋におけるインスリン信号伝達(蛋白質キナーゼAKTおよびラパマイシン標的タンパク質のリン酸化)はNMN補充後に増加したが、プラセボに対しては変化しなかった。また、NMN補充は、血小板由来成長因子受容体βおよび筋肉のリモデリングに関連する他の遺伝子の発現を上昇させた。
これらの結果は、NMNが肥満または過体重の糖尿病予備群の女性において、筋肉のインスリン感受性、インスリン信号伝達、および筋肉のリモデリングを改善させることを示している。
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すでに、有象無象のサプリメントが販売されているNMNですが、人間にとって最適な用量や内服期間は不明です。
複数のRCTが行われていて、1日600mgの経口摂取がアンチエイジングに有効(プラセボに対して加齢に関する血液マーカーを上昇させない)とか1日250mgのNMN摂取を12週間続けると高齢者の下肢の運動機能(5回立ち座りテストで評価)が良くなるとか、エビデンスがあります。
昨今、注目されているアンチエイジングサプリであり、有効性もある程度立証されていますが、こんな注意喚起の記事も出ています。
「NMN、ブームへの警鐘」、今井眞一郎ワシントン大学卓越教授
点滴によるNMN投与は生命維持に欠かせないNADを逆に壊してしまう可能性があり、有効性と安全性が十分に検証されていないという記事です。PubMedで検索しても点滴投与で有効性・安全性を調べたRCTは1件もヒットしませんでした。
有象無象の、NMN点滴療法をうたう自費診療クリニックが乱立していますが、ご利用に際しては十分にお気をつけください。
(今回ご紹介した論文はコチラで全文読めます)
