UK biobankという巨大なバイオバンクに登録されたデータを解析した研究です。
欧州の449,210人を解析対象に、片頭痛と食習慣の関係を調べています。
Mendel randomization analysisという、”対立形質が無作為に遺伝するという仮定に基づく分子疫学的解析法”を用いて、観察研究ですが因果関係を推測できる方法を使っています。
Mendel randomization analysisでは機能が分かっている遺伝子多型が特定の疾患や因子とどのように関係しているかを調べます。
Genetically predicted dietary habitsが変数になっているので、遺伝子解析で食習慣との関連が明らかとなっている遺伝子多型と片頭痛の関連を調べた、ということのようです。
・遺伝的に予測された片頭痛リスク低下と関連する食物は、コーヒー、チーズ、脂の多い魚、お酒(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー(シリアル食品)、全粒粉/全粒パンであった。
・オッズ比はそれぞれ、コーヒー:0.71、チーズ:0.78、脂の多い魚:0.73、赤ワイン:0.65、生野菜:0.72、ミューズリー:0.65、全粒粉/全粒パン:0.76であり、22%-35%のリスク低下が見られた。
・片頭痛リスク上昇と関連する食物は、白パン、コーンフレーク/フロスティ、鶏肉であった。
・白パン、全粒粉/全粒パン、ミューズリー、お酒(赤ワイン)、チーズ、脂の多い魚の摂取に関する遺伝子多型は、不眠症および/またはうつ病のリスク上昇と関連しており、これらの食習慣が片頭痛発症のメディエーターである可能性が示唆された(白パン以外は片頭痛発症リスク低下と関連しているのでどのようにメディエイトしているのか疑問?)。
・片頭痛の発症はアルコール摂取量の減少やお茶の摂取量の増加とも関連していた。
赤ワインやチョコレートやチーズは片頭痛を悪化させるというのが通説?(チラミンが血管を拡げて頭痛を誘発する)だったと思うのでこの結果は意外ですが、遺伝的に予測されるリスクとはまた別なのかもしれません。
・アルコール摂取→ストレス下げる→片頭痛リスクが下がる。
・チーズや生野菜にはビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、抗酸化作用のある成分、フラボノイド、カロテノイド、ミネラルが豊富に含まれている→炎症を下げる→片頭痛リスクが下がる。
という機序が想定されていますが、”片頭痛持ちは意図して赤ワインやチーズを避けるようにする“ことで逆の因果関係が見られただけ、ということも考えられそうです。
興味深い内容だったのでご紹介しました。論文は下のリンクから全文読めます。
Association between dietary habits and the risk of migraine: a Mendelian randomization study
