糖質制限食の健康効果について侃侃諤諤の議論が始まり久しいですが、糖質制限した方が長生きするのかそれとも糖質制限しない方が長生きするのかはまだ明らかではありません。
糖尿病患者さんの治療において、血糖値を適正な値に下げ、合併症の進行を防ぎ、天寿を全うすることが大目標なので、血糖値を上げない糖質制限食の長生き効果はとても気になるところです。
過ぎたるは猶及ばざるが如し、と昔から言われるように、糖質制限もほどほどが良いのではないかというのが私の考えですが、糖質制限食と死亡の関係について一石を投じる研究が日本から発表されました。
以下にAbstractをChatGPT先生に訳してもらい私が修正したものを載せます。コメントはその下に書きます。
背景
過去のコホート研究では、食事中の炭水化物・脂質摂取量と死亡リスクとの関連について、相反する結果が見られる。
目的
炭水化物と脂質摂取量と死亡率との長期的な関連を調べた。
方法
このコホート研究では、34,893人の男性と46,440人の女性(年齢35〜69歳、平均BMIはそれぞれ23.7および22.2 kg/m2)が、2004年から2014年にかけて行われたベースラインの調査から2017年または2018年の終わりまで追跡された。炭水化物、脂質、および総エネルギー摂取量は、食事頻度調査票(FFQ)を使用して推定された。炭水化物と脂質のエネルギー摂取量に基づいて、死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が推定された。
結果
平均8.9年の追跡期間中に、2,783人(男性1,838人、女性945人)が死亡した。炭水化物によるエネルギー摂取の占める割合が50%から55%の男性と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が<40%の男性は全死亡のリスクが有意に高かった(HR:1.59、95%CI:1.19〜2.12、P-trend = 0.002)。追跡期間が5年以上の女性の中では、炭水化物摂取量が多い女性は全死亡のリスクが高かった。炭水化物によるエネルギー摂取が50%から<55%と比較して、炭水化物によるエネルギー摂取が≥65%の場合、HR(95%CI)は1.71(0.93〜3.13)であった(P-trend = 0.005)。脂質摂取量が高い男性はがんによる死亡のリスクが高かった。脂質によるエネルギー摂取が20%から<25%と比較すると、脂質によるエネルギー摂取が≥35%の場合、HR(95%CI)は1.79(1.11〜2.90)であり、(P-trend = 0.054および0.058)。脂質摂取量は女性において全死亡およびがん死亡のリスクと逆相関する傾向がみられた(P-trend = 0.054および0.058)。
結論
男性の低炭水化物摂取と女性の高炭水化物摂取は、死亡と関連することが示された。炭水化物摂取量が比較的高い日本の成人女性の間では、脂質摂取量が高いと死亡リスクが低い可能性がある。
著者らも研究の限界で述べているように、FFQでの食事調査はベースラインのみで追跡期間中には再評価されていません。例えば、途中で糖尿病など生活習慣病を発症したり、仕事が変わったり、家族が亡くなって食生活が変わることだってあるわけです。これは大きなlimitationでしょう。
また、FFQは妥当性の高い質問紙票とは言え、主観的データですしバイアスが入るのはどうしようもありません。人間の食事摂取を正しく評価するのは難しく、このような研究の本質的な問題ですが、AIなんかによって何とかならないでしょうか?
私が疑問に思ったのは、なぜ炭水化物と脂質だけ評価して三大栄養素のもう一つタンパク質は評価しなかったのか?という点ですね。
最近、高齢者はもっとタンパク質を摂った方が良いなどと議論されていますし、タンパク質摂取量も調べて三大栄養素バランスを見て検証するべきだと思います。
炭水化物摂取量と死亡との関係で男女差があるのは謎ですね…。
多くの被験者を比較的長い期間追跡して調べた興味深い研究だと思います。
日本の大切なデータとして紹介させていただきました。
