夜ぐっすり眠れない人は多いですが、簡単に睡眠薬を飲むことはお勧めできません。
特に、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性が高く、翌日の眠気やふらつき、筋力低下や転倒、さらには認知機能の低下といった多くの副作用を起こすリスクがあるためできるだけ使用しないようにしています。
睡眠薬に関する153ものRCTをシステマティックレビュー・メタ解析した論文が発表されました。
プラセボと比べて睡眠時間を有意に改善したのは、非ベンゾジアゼピン系、抗うつ薬、オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ🄬/ベルソムラ🄬)でした。
今回はAbstractではなく、Discussionの冒頭にある結論部分を日本語訳します。※🄬は日本における先発医薬品の販売名です。
46,412人の参加者を登録した153の臨床試験を解析し、エビデンスの確実性が中くらいから高いものを報告した。
非ベンゾジアゼピン系薬が客観的な眠るまでの所要時間(=SOL)(エスゾピクロン(ルネスタ🄬)で-16.64分、ゾピクロン(アモバン🄬)で-16.26分)、主観的なSOL(ゾピクロンで-40.87分)、客観的な中途覚醒(=WASO)(ゾルピデム(マイスリー🄬)で-15.40分)、主観的なWASO(プロポフォール(ディプリバン🄬)で-50.35分)の短縮において最も効果的な薬物の一つであることが示された。
また、非ベンゾジアゼピン系薬は客観的な総睡眠時間(=TST)の延長(ゾルピデムで28.42分)、主観的なTSTの延長(プロポフォールで102.42分)、および睡眠の質の改善(エスゾピクロン)においても最も効果的であることが示された。
エビデンスの確実性はやや劣るが、抗うつ薬も客観的なTSTの増加(ドキセピン(日本では未発売)で23.97分、ミルタザピン(リフレックス🄬)で47.20分)、主観的なTSTの増加(パロキセチン(パキシル🄬)で170分)、および睡眠の質の改善(ミルタザピンとトリミプラミン(スルモンチール🄬))において有効で、主観的なWASOの短縮(ミルタザピンで-17.70分)とSOLの短縮(パロキセチンで-41.00分)も認められた。
一方、オレキシン受容体拮抗薬は客観的なWASOの短縮(スボレキサント(ベルソムラ🄬)で-25.17分)、客観的なTSTの延長(レムボレキサント(デエビゴ🄬)で58.15分)、および主観的なTSTの延長(スボレキサントで22.92分)と関連していました。
メラトニン受容体作動薬は主観的および客観的なSOLの短縮(ラメルテオン(ロゼレム🄬)で-12.88分)と関連していました。
ベンゾジアゼピン系薬の使用は主観的なSOLを短縮させなかった(4.46分)。
(略語が多く読みにくくてすみません)
非ベンゾジアゼピン系よりベンゾジアゼピン系の方が効果は強い印象があったのですが、このメタ解析の結果を見るとそうでもないようです。
そうすると、ベンゾジアゼピン系は患者さんにとって不利益が多く大して有効でもない睡眠薬という位置づけになります。
やはり、使うべきではない薬の一つですね。
