Pilla et al. (2023). A National Physician Survey of Deintensifying Diabetes Medications for Older Adults With Type 2 Diabetes.

75歳以上の高齢患者さんが10種類以上のお薬を内服されていることがあります。

いわゆるポリファーマシーは極めて深刻な問題で、高齢者の健康被害の一因になっているのですが、状況はなかなか改善しません。

糖尿病薬に関しても例外ではなく、薬の飲みすぎによる低血糖発作が問題となっています。

糖尿病学術誌の王様、Diabetes Careに興味深い論文が掲載されていました。

この研究では、2型糖尿病の高齢者に対する低血糖を引き起こす薬の減量または切り替えに対する医師のアプローチを調べるために、アメリカの一般医学、老年医学、内分泌学の医師を対象に調査を実施しました。

医師たちは、健康状態によって異なるHbA1c値を持つ3つのシナリオ(HbA1c 6.3%, 7.3%, 7.7%)において、低血糖を引き起こす薬の変更について報告しました。

医師たちは、健康な患者に対して48%、複雑な健康状態の患者には4%、健康状態の悪い患者には20%の医師が低血糖を引き起こす薬の減量を行いました。全体として、17%の医師が患者の健康状態によらず薬を切り替えました。

この研究では、半数の医師が複雑なまたは健康状態の悪い高齢患者さんに対して、ガイドラインの推奨を下回る厳しいHbA1c目標を選択したことも示しました。つまり、”過剰医療”です。筆者らはガイドラインよりも低いHbA1c値を目標へとしないことで適切な減薬が出来るだろうと述べています。

私は基本的に”可能な限り薬を減らす”方針の医者ですが、他の医師からすでに複数の強力な薬を処方されて私の外来を受診される患者さんの調整には苦労します。

糖尿病など生活習慣病は一番最初に受診した医師の方針・指導がその後の治療経過を決定すると言っても過言ではありません。

食事と運動、自分らしく健康的なライフスタイルを築くことが治療の基本であり、最も効果的です。

すぐに薬を使うことなく患者さんとお話しながら、待つことも大切なのです。