心体育道において、究極の目標は”「無意識」に相手の攻撃に的確に反応すること“です。
心体育道に限らず武術・武道において、技を無意識の反応(=反射)まで研ぎ澄ましていくことは共通の目標であると考えますが、実際には完全に無意識に動くことは不可能です。
人間の身を守る反射として代表的なものを挙げると、熱いものを触ったら手を引っ込める、目の前に何かが飛んで来たら目をつむるなど、いわゆる脊髄反射(逃避反射)と呼ばれるものです。
これらは脳を介さないため、速いのですが、武術・武道の身体操作は一瞬脳で考えるフェーズがあります。
相手の動き(距離・速さ・角度など)に合わせてどう反応するか一瞬考えるわけです。
このスピードを限りなく脊髄反射まで近づけるために、同じような動作を繰り返し繰り返し練習し(内的経験)、相手を変えていろいろな場合や環境を体験する(外的経験)必要があります。
一方、相手の攻撃を避けたり受けたりするための最適な身体操作が基本動作や型に含まれているので、反応に成功すれば高い確率で身を守ることができます。
この確率を高めていくのが稽古です。
(逆を言うと、脊髄反射のスピードが上限なので、それを超えるスピードには対応できないということになります。人間の能力を超えたスピードの攻撃に対して身を守るためにはシンプルにその場から逃げるしかありません)
武術・武道の鍛錬はビジネスとアナロジカルに捉えることができる、というのが私の持論ですが、”特に意識せずとも的確に動ける”というのはやはりビジネスマンの目指すところになると思われます。
基本動作や型を繰り返し練習し、身体操作を最適化する。
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組手の中で技を使い効果を検証する。失敗する。
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基本動作・型・組手の稽古を繰り返し、反応のスピードと精度を上げ、無意識に動くことを目指す。
武術・武道でいうところの基本動作や型はビジネスにおけるフレームワークに相当します。
PDCAとかバリューチェーンとかKaizenとか、あるいは各企業の伝統的なビジネスの進め方とか…なんでもいいんですけど、そうした何らかの「型」を使って経営を科学する。業務の効率化を図る。
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実際の業務に応用する。失敗する。
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分析と実践を繰り返し、顧客やカウンターパートとの取引・交渉に対する反応のスピードと精度を上げていく。
無意識に的確に反応するには、武術・武道であれビジネスであれ経験を積まなければなりません。
ここでは一人で行う型やフレームワークの練習を”内的経験”、相手に対する応用を”外的経験”としましたが、どちらも不可欠で、内的経験だけでは環境の変化に対応できず、外的経験だけでは自己流に終わり非効率です(一部の天才を除く)。
また、外的経験を積むことによって内的経験の”質が変わる”ということも起こり得ます。
一人で行う動作・業務の中に新しい”気づき”を得て、より効果的な型やフレームワークの使い方を理解したり、場合によっては新しい型やフレームワークを作ったりすることになるかもしれません。
無意識に近い状態で的確に動くことができるまで道のりは長く遠いのですが、日々の経験を積み重ねていく、これに尽きますね。
