人間には五本の指があり、物を掴む・握る動作は生きていくうえで欠かせないものです。
直立二足歩行を獲得した過程で精緻な手の動作が進化したとされていますが、稽古を積む中で、この掴む動作の奥深さを感じています。
相手を逃がさないようにしっかり掴む場合、親指と残り四本の指を対向させぎゅっと力を入れると思います。この時、人差し指に一番力が入り最も重要な役割を持っているような気がしますが、実はそうではありません。
重要なの小指あるいは薬指(個人的には薬指が一番重要と考えています)です。
一般的に、小指は一番力の入らない弱い指だと考えられがちですが、インドの研究によると、親指を動かして物を掴むとき、他の指と比較して小指が親指と連動することが確認され、掴む動作において親指と小指の間には解剖学的に重要な関係が存在することが分かりました。
確かに、人差し指に力を入れるよりも小指あるいは薬指(個人的には薬指です!)を使って物を掴んだ方が、楽に持てる気がします。
武術・武道の種類にもよりますが、心体育道では相手をぎゅっと掴むことはしません。
親指もあまり意識せず、薬指で”引っかける”ような感じで相手の体の一部を「掴み」ます。
小指と薬指は他の指と比べて貧弱な指に見えますが、意外と力強い指です。
もう少し詳しく説明すると、薬指の指先ではなく付け根より少し先の部分を掴みたい場所にぴったりと当て、脇を締めて引くことにより相手をコントロールします。
実際に誰かの腕を掴んで違いを感じてみてください。
掴む動作は指や腕に力が入りすぎると不安定になります。
これはまた別の機会にお話ししようと思いますが、手で掴みますが相手を引いて動かす場合、足で引きます。
掴む動作は奥深く、五本の指の役割についてまだ分かっていないことが多そうです。武術・武道の稽古は自分の身体を”知る”ことです。すべてが分かることはないでしょう。これで終わりという到達点もありません。ただ、もっと知りたくて稽古を続けています。
