Prokopidis et al. (2022). Impact of probiotics on muscle mass, muscle strength and lean mass: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

それでは、腸内細菌叢を改善させるために”善玉菌”を投与(プロバイオティクス)すると筋肉にどんな影響があるのか?

過去のヒトを対象とした無作為化比較試験のメタ解析論文です。Abstractを日本語訳してみました。

【要旨】プロバイオティクスはサルコペニアの進行を防ぐ可能性が示されてきたが、ヒトの筋肉量や筋力にどの程度影響があるかは不明である。この系統的レビューとメタ分析の目的は、ヒト成人の筋肉量、除脂肪量、筋力に対するプロバイオティクス補給の影響を調べることである。

PubMed、Scopus、Web of Science、Cochrane Libraryを使い、2022年6月までに出版された無作為化比較対照試験(RCT)の文献検索を行った。18歳以上の成人を対象とし、筋肉量、除脂肪量、全身の筋力(すべての筋力アウトカムの複合スコア)に対するプロバイオティクスの効果をプラセボと比較したRCTが適格とされた。群間差を評価するため、標準化平均差を利用したランダム効果逆変量モデルによるメタ解析を行った。

プロバイオティクスの筋肉量、除脂肪体重、および全身の筋力に対する効果を調査した24件の研究がメタ分析に含まれた。主な分析の結果、プラセボと比較してプロバイオティクス後に筋肉量が改善したことが明らかになった(SMD: 0.42, 95% CI: 0.10-0.74, I2 = 57%, P = 0.009)。しかし、除脂肪体重は変わらなかった(SMD: -0.03, 95% CI: -0.19 – 0.13, I2 = 0, P = 0.69)。興味深いことに、6つのRCTを分析したところ、全身の筋力の有意な増加も観察された(SMD: 0.69, 95% CI: 0.33-1.06, I2 = 64%, P = 0.0002)。

プロバイオティクスは、筋肉量と全身の筋力の両方を高めるが、除脂肪量に関して有益な効果を認めなかった。今後、異なる年齢層に共通した生理学的メカニズムを調査し、筋肉量と筋力の増加のために最適なプロバイオティクス菌株を明らかにすることが必要である。

I2>50%ということで、やや研究間の異質性(結果が一貫していない)が高かったようですが、プロバイオティクスで筋肉が増えるとは驚きです。

やはり短鎖脂肪酸が関係しているのでしょうか?

プロバイオティクスも機能性食品の一つですが、シンプルに腸の調子を整える効果以外に多様な健康効果が分かってきています。

“年を重ねても元気で長生き”の謎を解くカギの一つは、腸内細菌叢の多様性にありそうです。