継続は力なり

継続は力なり。

学び、体作り、人間関係、あらゆることに共通する方法論と言って良いでしょう。

浄土宗をバックボーンに教育者として生きた住岡夜晃の言葉とされています。

世界的な名著である『7つの習慣』も、”習慣”と謳っており、続けることが大前提となっています。一朝一夕にして成功はあり得ないわけです。

生活習慣病の患者さんを診ていると、食事・運動療法の継続がいかに難しいことであるか痛感します。

薬を飲んで病気を治すような<外>の力ではなく、自分の習慣を<内>から変えていく治療法なので、基本的には患者さん次第です。

もちろん、私を含め医療従事者がやり方を説明し、計画を立て、定期的にチェックし、時に叱咤激励し、患者さんのお気持ちに共感しながら進めていくのですが、何十年もの間身に染み付いた習慣を変えるのは大変なことです。

午後3時のおやつや寝る前の果物・アイスクリーム、運動は大嫌いだし汗をかきたくない、仕事が終わったら家でゆっくりして美味しいものを食べて眠りたい…etc

美味しいものを求める脳内報酬系の力は凄まじく、なかなかブレーキが効きません。

食事・運動療法がうまくいかず、薬物療法が必要になり、薬がどんどん増えてしまう患者さんもいますが、ご自身の習慣を見直し、<内>から変わっていく患者さんもおられます。

継続できる人と継続できない人を分けるものは何でしょうか?

継続できる人はしっかり者で、継続できない人は怠け者だ、なんて短絡的な結論ではありません。

私は、<内=患者さんの心と体>と<外=家族、医療従事者、環境>の関わりこそが不可欠と考えています。

生活習慣の見直しを患者さんだけに任せると大抵うまくいきません。どこかで疲れてしまう。

まず、ご家族を巻き込みます。病気について理解してもらい、食事療法や運動療法に(ちょっとだけ)一緒に取り組んでもらいます。

医師や看護師は初めに生活習慣を変えるきっかけを作ります。ここで個々の患者さんに合ったエビデンスを使う。

外来ではできるだけダメ出しをしないようにします(ダメ出ししないといけない患者さんもいるのでケースバイケースですが)。傾聴して、病気が良い方に向かうように促すわけですが、誤解を恐れずに言えば、”指導”ではなく”誘導”に近いと思います。

患者さんの<内>が前向きになれば、自ら<外=環境>を変えようとされます。例えば、ジムに通うようになったり、お菓子を買わなくなったり。

この状態を継続させるためにはやはりまだ、<外>の力が重要です。

私が必ずお話しするのは、継続のために自分にご褒美をあげること。例えば、検査の結果が良かったら、その日は何でも好きなものを食べて、ゆっくりしていいのです。

患者さんが達成感や喜びを感じられたらうまく軌道に乗ります。たとえ途中で生活習慣が崩れてもご自身で調整されます。この時点で<外>は役割をほぼ終えます。

継続は力なり。

自分だけの問題だと考えている人が多いのではないでしょうか?

私が生活習慣病の患者さんを例にお伝えしたかったことは、何かを始め続けていくためには自分以外の力が大きく関係するということです。

そして、自分の<内>と<外>との相互作用によって<内>がバージョンアップし、継続することができるのだと思います。