FIREなんてしたくない

ここしばらく世の中ではFIRE:Financial Independence, Retire Earlyが話題です。

何らかの方法で経済的に自立し、早めに労働から解放される、という感じでしょうか。

十分にお金を稼いで老後の生活資金も心配なければ余剰資金を自分の好きなことや社会活動に使おうというアイディアはすごくいいと思うのですが、Retireする必要ある?とちょっと疑問です。

それまでの仕事(会社員など)をやめて自分のやりたいことをやるということですから、まったく働かなくなるわけではないと思いますが、その生き方は社会にフィットするのかなあというのが私の率直な感想です。

fill.mediaというウェブメディアがFIREについて分析していました。

FIREには4つのタイプ(ファット・リーン・バリスタ・コースト)があるらしく、自分のライフスタイルや生活水準・資金レベルに合ったタイプを見極めることが″正しい″FIREのために大切らしいです。

また、みんなが羨むようなFIRE達成は相当難しいらしく、ブームに踊らされないようにと釘をさしています。

私はFIREできるようなお金持ちではないですし、今後もFIREなんてできそうにないですが、たとえどんなに現金や資産があってもFIREしたくありません。

理由は2つあります。

1つ目の理由は、人間は生活に一定のリズムが必要だからです。

人間にはサーカディアンリズムという体内時計があります。朝太陽が昇れば起き、夜太陽が沈めば眠る。このリズムが崩れると健康を害します。

日中は会社に行って、夕方から夜に帰宅して寝る。この典型的なライフスタイルは実は生物学的に理にかなっています。

夜間に人工の光に照らされるような環境(夜勤など)はサーカディアンリズムを崩し、気分障害などの精神の病気が増えることが報告されています。また、因果関係は不明ですが、決まった仕事をしていない人は決まった仕事をしている人と比べ、自殺などの死亡率が高くなります。生活のリズムを失うと心がダメージを受けやすくなるのです。

もしも、自分が日中仕事しなくなったら、明日仕事に行かなくて良くなったら、このリズムを崩してしまうでしょう。社会的制約のない状況で自律的な生活は私には難しい。

2つ目の理由は、個人的な好みの問題かもしれませんが、自分と社会との関係を大事にしたいからです。

毎日決まった仕事(私の場合は外来診療)をすることで私は安心と充実感を得ることができます。

毎日決まった仕事をすることで社会とのつながりを実感し、自分の存在意義を確認している気がします。

FIREしたらこの感覚が失われるかもしれません(FIREしてないので分かりませんが)。

FIREは、果たして、<幸せ>なのでしょうか?

FIREを目指す人はFIRE後に<幸せ>が待っていると信じているはずです。でも、FIRE後のことはどうなるか分からない。FIREは<幸せ>になるための手段ですが、FIREすることが目的になってしまってはいないか。

社会が変われば生き方も変わります。

FIREして自分だけ「一抜けた」するのではなく、毎日決まった仕事をしながら、自分のやりたいこともできる社会になるようにがんばりたいですね。

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